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Staff Stories

掛け合わせで広がる可能性。デザイナーと社会が繋がる瞬間を求めて

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「Staff Stories」では、ACOのパートナーを紹介しています。今回登場するのは、アートディレクターの沖山直子。沖山はデザインチームのマネジメントを担うほか、2021年夏からは取締役に就任し活躍の幅を広げています。

沖山直子

Naoko Okiyama

グラフィックデザイン事務所を経て2008年よりA.C.O.に入社。アートディレクターとして、多くの企業ブランディングやアートディレクションに参画。デザインコンセプトのご提案からブランドの世界観作りを担当。2016年からは同社のデザインチームのマネジメントを担う。以来アートディレクターと部長を兼任。

幼少期から身近にあった「デザイン」

「グラフィックデザイナー」という言葉は、母に言われて知りました。写真集や絵を見ていて、ふと「ここに文字を載せたい」と言ったときにそういう仕事があると教わりました。写真の仕事をしていた両親のおかげでさまざまなアート作品に触れる機会が多く、それらを「こういう視点で見るとおもしろい」と演出するのが好きだったんです。組み合わせや、配置で、印象や意味が大きく変わってくる。そういった編集や翻訳的な実験が私のデザインのはじまりです。当時はそれが仕事だとは意識するわけもなく、単純に面白かっただけですけどね。

デザイン系の進路を進み、グラフィックデザインの個人事務所に入社しました。最初はとにかく考えが甘かったですね。かっこいいものを作る仕事だと期待してしまっていました、全然そんなことない。仕事のイロハもわからないから、先生(社長)にとにかく怒られながら覚えました。もらった文章をコピペしないで手打ちして間違えたり、今思いだすと恐ろしいエピソードばかり(笑)。

それでも仕事はどんどん楽しくなっていきました。頭がフル回転する気持ちよさというか。徐々にデザインに自分の意見を反映してもらえるようになって、自信もつきました。

著名な先生の事務所だったので、作家さんやカメラマンさんがいらっしゃる機会が多かったのも刺激になりました。また印刷会社の方や編集者さんなどのプロフェッショナルな仕事にも驚かされたりする中で、目も肥えていくし、皆がどんな想いで作っているかを知ることができたのは、豊かなインプットになりましたね。そういう方々ときちんと関係性をつくること、リスペクトを持つことが、いいものを作る上では重要。この時学んだことは、今も大切にしています。

想像と検証で、プロジェクトを加速させる“ジャンプ”をつくる

アートディレクターの仕事は、最初に出すものの「驚き」が大切で、提案のときは皆さんに“嬉しい驚き”を感じてもらえるようにするのが、とても重要だと思っています。依頼を頂く段階では、たいていまだ見えるものは何もなく、「こういうものを作ろうと思っているはず」という状態。ビジュアルになって、やっとお客さんは「手にできる」「目に見える」ようになるんです。その瞬間に皆が「売っていける!」って自信を持つことができれば、プロジェクトが加速度的に良いものになっていったり、メンバーのモチベーションがあがっていったり。それはプロジェクトのフェーズが変わる瞬間(UXディレクターの川北はそれを“デザインジャンプ”とよびますが)。その機会を作ることがアートディレクターには求められ、ミッションでもあります。その世界観に触れる人はどんな人たちなんだろう、その先どんなベネフィットが生まれるんだろう。そうやって、いろんな情報を並べてひたすら想像して、プロジェクトの可能性をひとつひとつ頭の中で検証していくんです。

オフィスの壁をつかったイメージボード。別の案件へのヒントになったり、通りすがりの人からの意見なども参考に。

よく「先読み」と言われますが、可能性ってたくさんあります。世界観にも答えはありません。なので、読んでいるわけではありません。どちらかというと絞り込んでいる感覚の方が強いです。条件をクリアするものの中で、どれが最もインパクトを持ってユーザーに届く表現になるか。画というよりストーリー、または映像的に眺めながら掛け合わせの可能性をたくさん想像して作っていきます。お客さんの話すキーワードやその時の表情、会社のビジョン、想いといった要素から、外してはいけないキーワードを繋いで、それ以外を振り分けていく。この時の頭の中は、ライターさんに近いかもしれません。文章に読後感があるように、ビジュアルでも「漂う独特の空気」が魅力的なものを作りたいと思っています。

一人ひとりの視点が、社会と繋がっていく瞬間が面白い

私は「デザインが好きな人」が好きです。なので当然、デザイナーやデザイナーを目指す人が好きなんですね。デザインを頑張っている人、デザインの能力が高い人を見ているのはとても刺激的です。デザイナーには「観察力」があり、それは色や形だけではなく、「人」や「社会」を見る力でもあります。世の中をオリジナリティのある視点で見ていたり、何か人と違うものを探そうとしていたり、そういう人に共感します。

自分が採用した若手のデザイナーが、面白い着眼点でもって思いがけない方向に進んだことで、持っているあらゆる要素がうまく繋がる瞬間。「君のその独自の視点が、こういう風に社会のニーズと合致して、こんな姿になってリリースされていくのか!」と見届けられた時、デザイナーの存在する意味を強く感じますね。

約3年前のデザインチームは今の半分以下。若手も成長しデザインをリードする人材に。

21年の夏にA.C.O.の取締役になったこともあり、こうした動きをもっと加速させて行きたいと考えています。想像もしていなかったものが生まれる掛け合わせ、そんな掛け合わせの可能性が増える仕組み作りのため、今まさに組織編成の変更に取り組んでいます。(2022より新たな組織編成でスタート予定)

マネジメント層がやるべきは、業務のサポートだけではなく、自分の経験を活かして先のキャリアを一緒に考えることだと思っています。この先どんな可能性があるのか、ヒントやアイデアを出しながら話すこと。そして会社は、その多くの選択肢に対応できる仕組みを作っておくことが大切なのではないかと思っています。もちろん、個人の成長と組織の成長はセットで考える必要はあります。組織の向かう方向性を踏まえつつ、一人ひとりが一番活きる形を一緒に考えること。それがデザイン組織で必要なマネジメントなんだと考えています。

そうやって個人と組織の可能性を考える時は、頭の中は右脳と左脳をいったりきたりしているのですが、これはデザインしているときと似た感覚があります。若い頃の大きな課題は、デザインを言語化することで、とにかく苦手だったんです。というのも「デザインはかっこよければいい」と盲目的に思っていたから。でもある時「かっこいいけど、なんでこれなんですか?」と言われたのが衝撃的で。「かっこいい」は最大の誉め言葉のはずなのに…と考えが少し変わったきっかけになりました。

その時求められていたのは、なぜこのデザインが良くて、ひとつひとつにどんな理由があるのか、それをお客さんが自分の上司にも説明できるように言葉にすることだったんです。以来、何か見るたびに「なんでこうなっているのか」をひたすら頭の中で言葉にするようになりました。今でもロジックありきで作ることはあまりなく、後からついてくることが多いのですが、「こうしたい」と思ったら、その後に「なんでそう思ったのか」を考えるようにしたんです。感覚的に作ったものをロジックで答え合わせをしていくことで、無駄にも気付きやすいし、価値もより際立つようになったと思います。

アートディレクターと管理職、デザインとマネジメントは、かなり似ている部分があると思います。素材を活かすこと、掛け合わせの妙。でも、記事のタイトルにするのはダサいかなって(笑)。そう言ってしまうのは都合が良いというか、そんなシンプルなことじゃないから。ただ、どちらも大変で面白いのは確かです。

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by Monstarlab Design Journal

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