- 2021.04.30
※本記事はCJMのサンプルの内容が細かいため、CJMのサンプルを確認されたい方はPCなどの画面サイズの大きい端末で閲覧いただくことを推奨しています。
こんにちは、UXデザイナーの石原です。みなさんはプロジェクトの目的を達成する上で、チーム内の共通認識を持つためのツールとして作成しているものはありますか?A.C.O.では共通認識を持つことや目線合わせなど、複数の目的を達成するために状況に応じてペルソナやカスタマージャーニーマップ(以下CJM)、サービスブループリントなどを作成しています。今回はその中でも、目的によって内容が大きく変わることが多いと感じているツールの1つであるCJMについて、目的別の特徴を紹介します。
CJMを作る目的が違ったとしても、作成する上で共通していることがあります。それは顧客(想定顧客)のプロセスや行動を可視化することです。どんな目的だったとしても、顧客のプロセスや行動は可視化されていて、目的によって粒度や軸が異なっています。今回は目的によってCJMがどう変わるのかを整理し、代表的な3つの目的に分けて紹介していきます。
1.目的別のCJMと作成手順
CJMの目的は複数存在し、1つのCJMを作る上で複数の目的が達成されることはよく起こりえます。下記はその中の一例です。
CJMを作成することで達成できる目的
チームで作成することで達成できる目的
上記からわかるように、複数の目的を持っていたとしても、1つのCJMを作成することで、目的達成につなげることができます。CJMがさまざまな文脈で使われている理由は、複数の目的を同時に達成できるという部分にあるのではないかと考えています。
2.CJMの作成方法と基本的な作成6STEP
CJMの作成ステップは大きく6つに分けることができます。目的によってステップが増える場合もありますが、今回はどの目的でも共通している6つのステップを紹介していきます。
STEP1.顧客が誰なのかを定める(ペルソナの作成)。※ペルソナ等を作成して、顧客の共通認識を持ちましょう。共通認識を持つことで誰の行動かを明確にすることができます。 STEP2.行動範囲の設定→タイトルの設定
顧客のどんな体験を可視化するのかを決めましょう。サービス利用開始から設定するのではなく、利用前から範囲を設定することで、顧客の背景の行動を把握しやすいものができます。 STEP3.縦軸名と並び順の設定
縦軸にどんな内容を置くかを考えましょう。上にある軸には外的要因のとなる要素をおき、下にある軸には顧客の内的な要素を置くことで、課題を書き出しやすくなります。調査結果を反映する際は、場所などのサービスを利用する上で影響している要素を軸に設定することで、状況が理解しやすいマップに仕上がります。 STEP4.フェーズの設定
STEP2で定めた行動範囲をフェーズに分けます。時間経過やシーンが切り替わるタイミングを基準に分けることで、漏れなく行動を反映しやすくなります。 STEP5.縦軸名の上から順に、要素をプロットする
STEP3で定めた縦軸の要素を左から右へプロットしていきましょう。複数のメンバーがいる場合は思いつく箇所から同時にプロットしていくことで網羅しやすくなります。 STEP6.プロットしたものを俯瞰視し、上下左右の関係性を整理する
一通りプロットしたものを俯瞰的にみて、不足がないかや縦に見た際の関係を整理し、書き込んでみましょう。一眼で顧客の様子がわかる工夫をすることで立ち返った際に活用しやすくなります。
- ※ 基本的には1人のペルソナにつき1つのCJMを作成しますが、2つのペルソナ分をまとめて1つのCJMにする場合もあります。2つのペルソナが存在する際に、CJMを1つにした場合、要素が増えるため複雑に見え、分析しにくくなるなどのデメリットも存在します。またA.C.O.ではペルソナが複数存在する場合には、CJMではなくフローチャートなどを用いて可視化/整理することもあります。
目的が異なったとしても、顧客の行動を可視化することは共通しています。CJMを作成する際には最低限上記6つのステップに抜けがないか、ぜひ確認してみてください。
3.今回紹介する3つの目的
今回は、CJMの特徴を比較すべく「同僚から本をお勧めされてから本を読み始めるまでのCJM」を共通のテーマとして作成しました。以下3つの目的別CJMを紹介します。
①顧客の行動調査をし、調査結果を可視化し分析する際のCJM。(As-is CJM)
②複数のメンバーが持つ知識を元に、顧客の行動やタッチポイントを明らかにする際のCJM。(感情や行動の接点を重視)
③データを根拠に、顧客の学習レベルを可視化し検討する際のCJM。(認知〜行動の変化にフォーカス)
※今回紹介するCJMは比較しやすいよう意図的に作成している部分があるため、実際の調査結果とは異なる箇所もあります。
①顧客の行動調査し、調査結果を可視化し分析する際のCJM(As-isCJM)
既存のサービスに対して作成する場合には、「サービスを知るところから利用後まで」をフェーズごとに設定しプロットしていきます。新規サービスの場合には想定している顧客のプロセスや行動などをプロットします。新規サービス開発の場合には既存の顧客がおらず、想定顧客の行動をマッピングすることから「エクスペリエンスマップ」と呼ぶこともあります。
特徴
1.顧客の行動を集約し、共通する部分を中心にプロットするため、顧客の行動がモデル化(共通の行動を集約して反映)した状態になっている。
2.STEP2で設定する縦軸がフェーズ、環境、行動、思考、感情、課題など顧客の行動に基づいた要素を分解した内容になっているため、行動に至った理由を検討しやすい。
3.サービス内に限らず共通していた行動が詳細に記載されている。
4.感情曲線や課題の量や質でどこが大きな課題になっているかが明確になりやすい。
②複数のメンバーが持つ知識を元に、顧客の行動やタッチポイントを明らかにする際のCJM(感情や行動の接点重視)
プロジェクトの各メンバーが、顧客や各ステークホルダーから聞いたことや、自分の体験、本で得た情報を反映します。
特徴
1.各メンバーの考えを反映するため、行動が分岐したり抽象的になりやすく、エクストリームな行動や課題なのかどうかが判断しにくい。
※ペルソナ作成時に配慮しやすくすることもできる。
2.STEP2で設定する縦軸がフェーズ、行動、場所、課題など全体の流れと環境を中心に理解しやすい内容になっている。
3.既存のプロダクトがある場合、取得している定量的なデータをロジックに活用しやすい。
例) Slackから流入した後に購入されている層が一定数いる など。
4.想定している行動を書き出すことで、調査前の仮説設定に活用できる。
5.俯瞰的にいろいろな人のアクションを描き出せる(ユースケースを洗い出せる)。
③データを根拠に、顧客の学習レベルを可視化し検討する際のCJM(認知〜行動の変化にフォーカス)
調査結果を可視化することで、繰り返し利用してもらうためのハードルを明確にし、初回利用から継続利用してもらうのための施策を考えるために作成します。学習レベルの変化を俯瞰的に考察することができ、利用回数のレンジごとに分けてCJMを作成する場合もあります。
特徴
1.調査結果として顧客の行動と取得しているデータを起点に、顧客の成長レベルによる行動の変化を整理している。
2.学習レベルによって変化する行動の慣れがわかる特徴的な行動や感情が記載されている。
3.サービスに課金がある場合、課金の理由を予測しやすくなる。
4.現状の課題だけでなく、理想的な利用をしているロイヤル顧客の行動と初回利用した顧客や2回目以降に利用した顧客の行動を比較した際の課題も書き出している。
5.コンバージョンポイント(CP)を基準にサービス上に分析用のタグを埋め込む箇所を検討できる。
4.まとめ
それぞれの目的ごとのCJMの特徴と作成してわかったことを簡単に整理しました。整理してみると、目的が異なるだけでCJMそのものの特徴も大きく異なることが一眼でわかります。どの手法においても言えることですが、目的を明確にしてから作成することは非常に重要です。
1.顧客の行動調査し、調査結果を可視化し分析する際のCJM(As-isCJM)。
特徴
作成してわかったこと
2.複数のメンバーが持つ知識を元に、顧客の行動やタッチポイントを明らかにする際のCJM(感情や行動の接点重視)。
特徴
作成してわかったこと
3.データを根拠に、顧客の学習レベルを可視化し検討する際のCJM(認知〜行動の変化にフォーカス)。
特徴
作成してわかったこと
5.おわりに
ぜひ、CJMを作る機会があればまずは目的を明確にし、作り分けてみてください。一つでも多く、世の中に良いプロダクトを届けていきましょう!最後まで読んでいただきありがとうございました!
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