- 2022.06.20
はじめに
こんにちは。UXデザイナーの田中です。A.C.O.のクライアントの業界は多岐に渡りますが、近年業界を問わず、限られた情報の中で仮説を立てなければならないケースや、明確な課題がない中でアイデアを出さなければならないケースが増えてきました。そこで、デザイナーが各々の視点を活かして情報を集め、仮説を立てる力を鍛えていくにはどうするべきか、また、自ら課題を設定してアイデアを出していくにはどうするべきか、施策の検討を進めています。
今回はその取り組みの最初の一歩として社内で行った「観察ワークショップ」について紹介します。
観察ワークショップの概要
物事の状態や変化を客観的に注意深く見ること。
「観察」は辞書では上記のように解説されています。ですが、今回のワークショップでは観察者の「主観」こそが仮説を立てるための重要なポイントではないかととらえています。デザイナーが身の回りの何に、どのように触発されているのかをワークを通して紐解いていくことで、主観を意識する場を作ります。
今回の観察ワークショップの目的と背景は以下の通りです。
目的
A.C.O.のデザイナーが各々の視点を活かし、新たな気づきを得る可能性を広げる。
背景
VUCAと呼ばれる時代の中で、デザイナーが身の回りの情報からスピーディーに仮説を立てることが求められている。
ポイントは大きく3つです。
観察ワークショップのプロセス
ここからはワークショップの具体的なプロセスについて紹介していきます。全体のテーマは「今いる街の好きを増やそう」と設定しました。「好き」という概念の中には、参加者それぞれの異なる主観が現れやすいと考えたからです。ワークショップ設計と運営はUXデザイナーの布施、小野、田中の3名で行い、A.C.O.のデザイナー5名に参加してもらいました。
work0:「好き」を収集する
まず、ワークショップ開始前の事前ワークとして、「今いる街の好き」を収集してもらいました。参加メンバーには事前に30分程度でそれぞれが今住んでいる街を散策してもらい、写真とメモを集めてもらいました。
work1:各収集物に対して、「好き」と感じた理由を書く
それぞれ持ち寄った街の好きなものに対して、「見たもの」と「好きだと感じた理由」を言葉にしてもらいました。何に、どう好きだと感じたのかを書き出すことで、参加者それぞれが見ていたものを整理していきます。「好きと感じた理由」は様子だけではなく、想起された感情や思考を丁寧に書き出すことをポイントとしました。
work2:理由を分類して、自分の「好き」の要素を探る
次に、work1で書き出した理由をグルーピングし、「好き」に含まれている要素を探っていきました。小さいグループから大きいグループを作っていくと、自分の好きの根底には何があったのか、何を好きの判断軸としていたのかが徐々に見えてきます。
work3:他の参加者と共有する
続いて、それぞれ整理する中で浮かび上がってきた要素や分類する中での気づきなどを5分ずつ発表してもらいました。聞く側は自分と似ているところ、異なるところはどこなのかに注目します。同じようなものを挙げていても抱く感情が違ったり、その背景にあるそれぞれの経験などが話す過程で見えてきます。
work4:「好き」と感じる理由を見直し、より「好き」につながるものを探る
発表を通じた他の参加メンバーとの共有を踏まえ、もう一度、work2で出した大きな要素を軸として収集物と理由から見直していきます。大要素が自分の見方の根底にあると自覚した上で改めて理由を出し、work2同様、分類してみます。ここで新たな要素が出てきてもOKです。このプロセスを通して、より「好き」につながるものは何なのか、自分の中での納得感を高めていきます。
work5:テーマに対して問いを立てる
最後に、work4までの分析結果と今回のワークショップテーマである「今いる街の好きを増やそう」を結びつけて、問いを立ててもらいました。ここでの「問い」とは、テーマに対しての解の方向性を定めていくようなものです。問いによって、アイデアを出していくためには何をもっと知る必要があるか、観察の次のステップを明らかにしようとしました。 今回のワークショップでは、問いの主題となる「好きにつながるもの」をどう抽出するのかといったプロセスや、問いの型はどんなものがあるかといったインプットが不足しており、参加者を苦戦させてしまった点が運営側の反省点です。
観察ワークショップの結果
「観察力」というものを定量的に計測することは難しいですが、参加者それぞれの視点での観察から、各々の視点に対する気づきを得てもらうことができました。work3の他の参加者と共有するワークでは、話すことで、モヤっとしていた自分の観察結果がはっきりとしてきたり、疑問を投げ合うことでお互いの深掘りができたりという様子が見られました。
今回は整理したり共有したりしやすいようにと、観察したものを言語化するプロセスを設けましたが、言葉では言い表せない非言語的な情報を削ぎ落としてしまっていることも忘れてはいけません。この辺りをどう取り扱っていくかも今後考えていきたいポイントです。
実際に参加した方々からは、こんな声を頂きました。
“自分の好きが記憶と紐づいていることに多くの気づきがありました。体験していない知識としての記憶よりも体験している記憶の方がより好きを強く感じました。”
“普段の日常からいつもと違う、非日常的な要素を見つけ出すのが好きなんだ!という発見がありました!”
参加者それぞれ注目するポイントや掘り下げる解像度が異なり、多様な解釈が広がっていったのが面白かったです。私自身も自分の見方をより意識するようになりました。いろんなテーマで、いろんな方と試してみたいです。
一緒に運営を行った2人からもコメントをもらいました。
布施さん-
客観が重要視される観察を、あえて主観を軸に考え直してみる作業はとても新鮮でした。「好き」の起点を探すというテーマも興味深く、ワークショップの枠を超えて今後も考えながらデザインをしていきたいと思いました。
小野さん-
運営を通じて、デザイナーが取り組んでいるさまざまなデザインや思考を洗練させていくには、私たちが普段どのように世界を捉えて理解しているのか知ることが重要ではないかと思いました。観察はまわり巡ってデザインに繋がっていくと思うので、日常生活でも続けていきたいですね。
おわりに
今回はA.C.O.の観察ワークショップの第1弾をご紹介しました。まだまだ未熟なプロセスではありますが、このような観察の経験を積んでいくと、自分の視点というのが段々とはっきりしてくるのではないでしょうか。そしてそこから、自分の見方を変えてみたり、自分にはなかった他者の視点を取り入れたりすることで「観察力」が磨かれていくのではないかと思います。
今回の反省を活かして今後もアップデートを重ね、発信していきたいと思いますので、お楽しみに。よろしければみなさんも、ぜひ身の回りのものを観察して自分の視点を探ってみてください。
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by Kyoka Tanaka
京都工芸繊維大学デザイン経営工学課程卒業。同大学院デザイン学専攻修了。2021年4月にUXデザイナーとして新卒入社。ニックネームはきょん。
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