- 2022.07.06
こんにちは、A.C.O. Journal編集部です。A.C.O.は2022年1月から会社の組織運営体制を大きく変更しました。ティール組織を目指し、ホラクラシーのフレームワークに沿った体制を採用しています。大きな変更点は部署がなくなったこと。それにより、各部署のマネージャーという役職もなくなっています。
今回は、A.C.O. Designers Podcastから、A.C.O.の組織運営体制の変更を主導したメンバーにどのように進めていったのか、裏話を聞いた回を記事としても紹介します。Podcastは以下からもお聞きいただけます。
登場人物
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小林 拓也
法政大学キャリアデザイン学部卒業。UIデザイナーとしてキャリアをスタートし、ブランド開発や体験設計フェーズまで携わる。現在は、Monstarlabグループ海外拠点のプロジェクトへの参加など国内外の案件を推進。好きなことは、レコード収集、キャンプ、NBA、シーシャなど。
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沖山 直子
グラフィックデザイン事務所を経て2008年よりA.C.O.に入社。アートディレクターとして、多くの企業ブランディングやアートディレクションに参画。デザインコンセプトのご提案からブランドの世界観作りを担当。2016年からは同社のデザインチームのマネジメントを担う。以来アートディレクターと部長を兼任。
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石井 宏樹
早稲田大学創造理工学研究科建築学修了。建築設計事務所にて意匠設計の経験を経て、現在に至る。デザイン担当。デザイン部所属。
小林:本日はA.C.O.の組織再編成を主導した取締役の沖山さん、デザイナーの石井さんに詳しく話を聞いていきたいと思います。よろしくお願いします!
沖山:取締役の沖山です。2021年の後半から、組織について一生懸命考えてきたことを今日お話しできればと思います。
石井:デザイナーの石井です。昨年度まではデザイン部のマネージャーも担当していました。僕も昨年度から沖山さんと一緒に、組織体制の見直しをしていました。
組織を再編成していく中で考えたこと
小林:では、2022年の年明けから組織の再編成をしたということですが、まずは簡単にどんな組織体制になったのか、どんな考え方を組み込んでいったのかを聞かせてください。
石井:自律分散型の組織を運用するための、ホラクラシーのフレームワークを取り入れました。ホラクラシー憲法というものがつくられているのですが、憲法によってかなり厳密に組織の運用ルールも決まっています。ホラクラシー憲法に書いてある内容を忠実に実行するとホラクラシー組織になる、というようなイメージですね。
組織体制の大きな変更点は部署とマネージャーの役職をなくしたことです。以前の体制だと、困ったらとりあえず自分の部署のマネージャーに相談する、というプロセスがベースでしたが、マネージャーという役職をなくすことによって、「じゃあこれは誰に相談すればいいの?」ということを組織体制とあわせてしっかり考えていこう、という取り組みをしていました。
沖山:自律分散型の組織で統率をとっていくので、マネージャーが上に立って進めるという運用ではなく、仕組みを使ってメンバー全員で運用していく形を目指していました。ホラクラシーの型のひとつでもありますね。
小林:A.C.O.では昔から「自分の足で立つ人を、つくる」という、個人としてどう活躍できるかという考え方をずっと大事にしていたという印象です。その考え方を踏襲しつつも新しい組織体制に変えていこうと思ったきっかけはどんなところにあったのでしょうか?
沖山:大きな理由は2つあります。まず1つは、私たちが提供しているデザインという商品に対して、お客様からのニーズが大きく変化している点です。
デザイナーにはUIデザインやUXデザインというラベルがついており、そこに技術の違いがあります。A.C.O.も、昨年までは部署制の中央集権的な組織運用をしていたので、技術を部署として分けて、そこからクライアントのプロジェクトにアサインしていく形を取るとどうしても複雑なニーズに答えづらくなり、デザイナーとしても成長しづらくなってしまうように思ったんです。
そのような思いもあり、部署で分けるのではなく、プロジェクトの中に最適な人を入れられるような状態にすることがお客様にとってもベストな形になりますし、A.C.O.のメンバーも成長を実感できると考えました。一番やりやすい形はずっと模索していましたね。
もう1つの理由は外部環境の大きな変化です。スピード感を持って、フレキシブルにメンバーが動ける形にしないとベストな形での組織運営が難しいと感じていました。
経験が少なくても優秀なメンバーが入社したとしても、情報がクリアになった状態で物事を判断して、スピード感を持って仕事を進めていってもらいたいという思いがありました。そのうえで部署や縦割りの組織は必ずしも必要ではないのではと考えるようになったんです。
そのためにまずは社内の透明性を上げるために、情報をクリアにしていきました。誰でも簡単に情報にアクセスできるような環境を整えていきたいと思ったんです。
長くなりましたが、これらの理由から、A.C.O.とホラクラシーは相性が良いと考えるようになりました。
小林:確かに、自分がプロジェクトに入るときもUIデザイナーという役割でアサインされていきますが、そもそもお客様はUIデザインを買いたいわけではなくて課題解決をしたいと思って依頼してくれているので、そこに対して部署や役職は関係ないですもんね。
社内でも、役割だけでくくってしまうとその人が本当は何ができるのかが意外とわからなかったりするのではと思います。
沖山:スキル面では同じように成長しているように見えても、メンバーのバックボーンや興味を持っている対象はそれぞれ違っていると思います。なので、個人に一番フィットしたプロジェクトを提案してアサインすることは重要なポイントだと思いますし、同時にお客様にとっても良いことで、相乗効果を生み出せると思うんですよね。
小林:確かに。その部分は自分も意識が変わったポイントでした。僕自身、UIデザイナーだけの役割を持ってプロジェクトを進めること自体が減ってきたと思っています。ファシリテーションをすることもあれば、デリバリーの部分を担当することもあるので、お客様にどんな課題があって、何を目指していて、どう解決していくのかを話しながら、その中で役割がついてくるように思います。
僕だけではなく、プロジェクトに入ってからは「ここだけを担当する人」という意識は自然と薄れていくメンバーが多いんじゃないかと聞いていても感じました。
透明性を目指した組織設計
沖山:「透明性を上げて情報にアクセスしやすくする」という課題に対しては、石井さんがかなり環境づくりを頑張っていた印象です。
石井:はい、透明性や情報共有については意識していたポイントです。ホラクラシーに限らず、自律分散型の組織を成立させるための条件は現場のメンバーが自分で意思決定ができることだと思います。ホラクラシーでは、意思決定をするために現場のメンバーが感じる課題に「ひずみ」という言葉を使っているのですが、そもそもひずみに気づくためには自分がやっている業務以外の周りの情報も自然に入ってこないといけません。ひずみに気がつかないと、組織ごとブラックボックス化してしまいます。なので、透明性を前提にしないと、自律分散型の組織は成立しないと思っています。
あとは承認フローをできる限り減らしていくこともポイントに置いていました。承認フローを減らし、そのかわりに社内で全ての情報が公開されているという環境をつくれば、そもそも悪さやずるをする人はいないんじゃないかなって。誰が何をしたかがわかる仕組みになっていれば、わざわざみんながわかっているところで悪いことをする人なんていませんよね。結局バレたときに損をするだけなので。
小林:透明性という観点では、A.C.O.は本当に、水で言うと飲めるんじゃないかというくらいに(笑)透き通っていると思います。たとえばNotionを使ってナレッジにアクセスができたり、Slackのweekly-shareというチャンネルでメンバーの最近の仕事の内容やプライベートの興味関心についてを共有する場があったり。もともと仕組みがないと組織再編成に踏み切ること自体難しかったんじゃないかなと思います。
そういった仕組みがあるとほかのメンバーの得意分野や興味関心も知れますし、良い循環となって結果的に透明性を後押ししているように感じました。
沖山:そういった部分はここ2年間の働き方の変化も大きいですね。A.C.O.では2020年の新型コロナウイルスの流行以降、リモートワークでの働き方がメインとなっています。オフィスに出社して仕事していたときとの大きな違いとして、周りのメンバーがどんな仕事をしているのかや、ちょっとした確認もしづらくなっている中で、タスクやミーティングで予定は埋まっていく。わからないことがあると取り残されて、仕事が止まってしまうというリスクがあるんですよね。そういった意味でも、情報にアクセスしやすい環境づくりは必ずやらなければならないことだったと思います。
小林:確かに、大きく変わりましたね。働き方が変わったことで、経営会議で決まったことを毎月共有してもらえる場があったり、会社からの報告や共有事項は毎週月曜朝のミーティングで知れたり、リモートワークでの働き方がメインになってからも、そういった会社の動きはとても良いなと感じています。
組織再編成で大変だったこと
小林:僕は組織が変わっていく姿を見ていた側なので、ここまでいいことばかり言ってしまっているのですが、おふたりは実行する側として、かなり大変だったかと思います。具体的に、大変だったエピソードも聞かせてもらえますか?
沖山:今まで各部署のマネージャーに集約されていた情報をどうやって仕組み化して、分散させていくかというところは設計の際に苦労したところです。
縦型組織に部署があって、そこにマネージャーがいて、その人たちに情報を集約していくのは組織としては楽なんですよね。マネージャーがハブになって、組織全体に広げていくことができたんですが、部署をなくしてマネージャーの役職もなくなると、そもそもその進め方はできなくなってしまいます。
マネージャーの業務はキャリア相談から体調の相談、勤怠管理、リソース管理、プライベートの話まで多岐にわたっていました。なので、その部分を組織としても分散させていくのは大変でした。
小林:今までマネージャーに甘えてしまってました…(笑)ほかにはどうでしょうか?
沖山:評価制度についても、検討にかなり時間を要しました。評価も今まではマネージャーに情報を集約していたので、そのマネージャーがいなくなったときに評価が成立するのか、というのは大きな課題でしたね。評価はメンバーの給与にも直接紐づいていくので、組織再編成そのものより検討に時間がかかったところかなと思います。
石井:長時間議論して、「これで行きましょう!」って決まったかと思ったら次の週に「やっぱり違いました…」と言うような、無限ループでしたね(笑)
沖山:いまだに疑って見直して検証して…というサイクルを続けていますよね。
小林:先ほども話題に上がりましたが、外部環境の変化が激しいマーケットにいるので、完璧に完成させるのは難しいですよね。
沖山:組織は時代やニーズに合わせて変えていく必要があるんだなということは、今回強く感じました。A.C.O.の代表である倉島にも「時代やメンバーの変化によってこの仕組み自体をまた見直す必要がいずれ出てくるよ。これがずっと続く前提では考えないほうがいいよね」と言われていました。その言葉に逆に勇気をもらったというか、「変えてもまた見直せばいい」と考えながら設計していきましたね。
部署がなくなり、「サークル」へ
小林:部署がなくなって、「サークル」という考え方になっていったかと思います。このあたりはいかがでしょうか?
石井:サークルとは、ホラクラシー憲法で決まっているチームのような、役割の集まりを示します。役割の最小単位は「ロール」と呼んでいて、ロールが集まったり離れたりを繰り返して、変化していくようなイメージです。決まっている部署ではなく、都度サークルのあり方を変えていけるような考え方がホラクラシーの仕組みです。ただ、まっさらな状態ではじめるわけにもいかなかったので、最初は僕と沖山さんが中心となり、必要であろうサークルをリストアップしていきました。それでも「このサークル、やっぱりこうしました」という報告をサークルから受けることもありましたよね。
沖山:自分たちが想定していたものと全く違う形でサークルがつくり直される姿を見ていると、まさに自立して、判断して、ベースの形をそれぞれで探っていってくれているなと思って、感動しました。
小林:なるほど。サークルにルールはあるのでしょうか?個人が複数参加していいなど、どういったものがありますか?
石井:ホラクラシーの考え方は、人ありきではなく「役割を誰がやるのか」、という考え方からはじまります。なので、1人がひとつのロールしか持っていないようなことはほとんどないと思います。サークルも掛け持ちして複数サークルに参加する形が基本になっていますね。
ホラクラシーに関する本を読んでいても、「1年後に変化のないサークルはほとんどない」と書かれていて、自然と変わっていくものなんだなと思っています。
小林:今後、いろいろなサークルが生まれていくのも楽しみですし、今あるサークルが変化してどうなっていくのかも楽しみですね。
沖山:サークルですごく良いと思っているのは、メンバーの役割が明確なので、考えるまでもなく責任範囲がわかりやすいところです。たとえば、会議の中でもファシリテーション担当、議事録担当、次回の会議設定の担当などが明確なんですよね。あとから見たときに「あれなんだっけ?」がかなり減りますし、大きく改善したところかなと思います。
石井:ホラクラシーの会議フォーマットはすごくうまくできていて、実行してみてとてもやりやすいと感じています。
小林:最初は少し型式的で慣れなかったのですが、慣れてくると想像していたよりも堅いものではなくて、今ではやりやすいと感じるようになりました。
沖山:決まっているアジェンダから脱線していくと戻されるような仕組みになっていると思います。議題に対してスムーズに進行ができる点は素晴らしいですよね。
小林:ありがとうございます。今回は組織再編成の裏話をおうかがいしたかと思いますが、今後に向けてそれぞれ一言お願いします。
沖山:今回の組織再編成では、A.C.O.の Playbook「Be Brave 変化を楽しむ勇気をもつ」というキーワードをすごく大事にしながら進めました。なので、今後も必要に応じて調整しながら、有期的ではない、そのときに一番最適な形に進化していければなと思っています。
石井:新体制が始まって間もないので、本格的にできていないことはまだまだたくさんあります。今後推進していく中で、もっと面白くなっていくと思っているので、まだまだこれからですね!
小林:ありがとうございました!
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by Monstarlab Design Journal
Monstarlab Design Journal 編集部です。 モンスターラボデザインチームのデザインナレッジとカルチャーを発信していきます。
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