- 2022.04.28
デザイナーのための北欧のデザインカンファレンス「Design Matters」。その姉妹カンファレンスである「Design Matters Tokyo」の第2回が2022年5月14・15日に開催されます。
そこで今回はDesign Mattersの設立者であるMichaelとブランド・コミュニケーション責任者のGiorgiaにインタビューを行いました。
〜プロフィール〜
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Michael Christiansen (マイケル クリスチャンセン)
Design Mattersの共同設立者。2015年に共同設立して以来、Design Mattersをデンマーク国内&国外に広げるために活動を続けている。以前は、ColdFront(フロントエンドとインターフェースに焦点を当てたカンファレンス)の共同主催者で、DX業界で何年も働いていた。日頃から仕事の合間も「ケーキタイム」を設けており、可愛いコトン・ド・テュレアル犬を飼っている。
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Giorgia Lombardo (ジョージア ロンバード)
イタリア・ベニス出身。デザイン・マターズのブランド・コミュニケーションを統括。3年前に入社し、以来、Design Mattersのコンテンツとブランド戦略の形成に貢献。2022年からは、コペンハーゲンで開催されるDesign Mattersのプログラム企画とスピーカー選定も担当。日本学と人類学のバックグラウンドを持ち、デンマーク移住前は5カ国に住んでいた。現在、ブリティッシュショートヘアの猫に夢中。
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小林 拓也
法政大学キャリアデザイン学部卒業。UIデザイナーとしてキャリアをスタートし、ブランド開発や体験設計フェーズまで携わる。現在は、Monstarlabグループ海外拠点のプロジェクトへの参加など国内外の案件を推進。好きなことは、レコード収集、キャンプ、NBA、シーシャなど。
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Nondo Sikazwe (ノンド シカズウェ)
ザンビア出身。 南アフリカのウィッツ大学で建築を学び、隈研吾建築事務所でのインターンを通じて来日。千葉大学、スタンフォード大学でUXデザインを学んだ後、A.C.O.に入社。グローバルクリエイティブ部の一員としてさまざまな海外プロジェクトに取り組んでいる。
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Minsoo Chung (テイ ミンスウ)
京都芸術大学情報デザイン学科卒業。UIデザイン、グラフィック、Webなど、幅広い視覚表現を通して、人と人を繋ぐデザインに情熱を注ぐ。多様な文化や価値観が交わるからこそ生まれる新しい価値に興味を持っている。観葉植物と料理が好き。
Design Mattersの始まり。デンマークから世界へ。
小林: 今日は来ていただいてありがとうございます。まずはお二人のことを少しだけご紹介して頂けませんか。大学では何を勉強していたのか、デザイナーなのか、現在はどこを拠点にしているのか、などなど。
Giorgia: 私はイタリアのベネチア出身です。実は私は学生時代に日本文化を専攻してました。専門はコミュニケーションで、Design Mattersでも同様の役割を担っています。私はコミュニケーションの責任者で、後に紹介するMichaelと一緒にデンマークのコペンハーゲンを拠点に活動しています。
私自身はデザイナーではありませんが、これまでデザイナーと一緒に仕事をすることが多く、その過程で、デザインについて多くのことを学びました。
Michael: 私はデンマークの大学で歴史を勉強していたのですが、卒業を控えたとき、ちょうどインターネットが普及し始めたんです。
そこでインターネットを使った仕事ができないかと考え、Webデザイナー、Webデベロッパー、プロジェクトマネージャーとして働きました。90年代後半からは、Web開発の会社を何年か経営していました。そして、2012年からカンファレンスを主催するようになり、ある意味それがDesign Mattersの始まりです。
小林: はじめてカンファレンスを開催した時は、Design Mattersという名前ではなかったんですね。
Michael: 実は、私が最初に行ったカンファレンスはデジタルトランスフォーメーションに焦点を当てた会員制のイベントでした。そのときにDesign Mattersの共同設立者でUXデザイナーの方に出会いました。その方と私は、「UXのカンファレンスを開催する必要がある」と考えていたため、大規模な国際UXカンファレンスを2年間開催しました。しかし、このUXカンファレンスにはデジタルデザインにおけるクラフトマンシップの精神、つまりデジタルデザインの制作過程全体を伝えることが足りていませんでした。
2015年に、私たちは最初のDesign Mattersをデンマークで開催しました。そして、そのイベントから学んだことは、狙いどおり、UXカンファレンスのニーズがあるということでした。スピーカーはもちろん、参加者からも国際的な関心を集めていることが最初から感じられました。開催当初から国際的なイベントになったのです。
小林: このインタビューの前に、Design Mattersに関する記事を読みました。デンマーク国内だけに焦点を当てるのではなく、ヨーロッパ、アメリカや東京なども含めた国際社会を対象にしていますよね。
では、他の質問をしたいと思います。デンマークの人々にとって、このイベントはどのような意味を持ち、なぜそれほど重要なのでしょうか?あなたにとって、デンマークのデザイナーにとって、そしてデザイナーでない人にとっても。
Giorgia: Michaelが言ったように、当初は国際的なデザイナーをたくさん呼んで従来のようなカンファレンスを行う予定でした。ただそのとき、同時にこのイベントがデザイナーにとっても交流する良い機会であることに気づきました。
というのも、2019年のイベントはとても国際的で、46カ国から参加者がありました。デンマーク国内だけでなく、デンマーク国外からも参加者があり、ネットワークを広げる大きな機会になっています。私たちが気づいたことは、私たちのカンファレンスに何度も参加した後、スピーカーや参加者が新しいつながりを見つけ、それが次の仕事のきっかけになることがあるということです。これはとても素晴らしいことです。私たちは人と人をつなぐことができたんです。
Michael: もうひとつ学んだことは、デジタルデザインのデザイナーとして働くということは、国際的なデザイナーのコミュニティーに属するということです。実際、私たちは、とても広いつながりを持っていると思います。ですから、このような国際的な場で会話をすることは重要だと考えています。
このコロナ禍の2年間はオフラインでのイベント開催をすることはできましたが、パンデミック前の2019年には出席者の70%が海外からの参加者だったのに対し、デンマークからの参加者の割合が多くなっていました。そこで、2019年のイベント以降は世界中でイベントを開催しようと考えたのです。
その結果、私たちは最初の国外イベントを行う場所を東京に決めました。2020年のDesign Matters Tokyoです。
Nondo: なぜ東京を選んだのでしょうか?
Michael: それには2つの理由があります。
ひとつは、世界中のトレンドや国際的なスピーカーを探すため2019年に東京を訪れた中で、日本で私たちのような活動をすることに大きなニーズがあるということに気づいたからです。多くのデザイナーに会い、彼らと会話をする中で、私たちがやっていることを東京でやってもらえませんか?という声を多くいただきました。これが理由のひとつです。
もうひとつは、日本は世界でも有数のデザイン発信地だからです。これは、私だけでなく世界中の人が思っていることだと思います。そのため、世界中のデザイナーは日本に行って、日本の方々と話をしたり、会ったりしたいと思っているような気がしていました。
実際にその読みは当たっていました。通常、最初の20人のスピーカーを集めることがとても大変なのですが、東京開催はこれまでで一番スムーズでした。私がお願いした全員が、東京に興味を持ち参加への返答を即答してくれたんです。
Giorgia: 日本人が持つ北欧への憧れ、その逆もまた然りです。日本と北欧の2つのデザイン文化を繋げることが、双方のデザイナーを結びつけるのにとても良い方法であることがわかりました。
例えば、ミニマリズムのようなデザインに関しては多くの共通点があることを誰もが知っています。スカンジナビアン・デザインやジャパニーズ・デザインについて調べると、最初に出てくるのは家具ですが、デジタル時代にはどんな類似点や違いがあるのか、もっと調べてみたくなりました。これは、私たちが発見したかった、ある意味未知の世界なのです。
Michael: デンマークはデザインにおける認知度がとても高いですが、ほとんどの場合、家具のデザインなのです。そのため、実はデジタル分野のデザインを浸透させるという点に関しては苦戦しています。
同様に、日本もデジタルデザインを浸透させるために苦労しているのではないかと思います。このような共通点も私たちを繋げてくれました。
この点に関してもDesign Mattersを開催する価値がありました。2015年にDesign Mattersを始めたとき、多くのスピーカーをアメリカ、特にシリコンバレーから呼んで経験を共有してもらうことで国内のデジタルデザインに関する知見を深めていきました。
失敗を許容し、参加者の自由な会話が行き交うワークショップを作り出せるのはなぜか?
Nondo: Giorgiaさんからも話があったと思いますが、工芸品を作るようなクラフトマンシップを持って創作するという発想がベースになっていますよね。この交流が、東京でのイベントを面白く、ユニークなものにしているのだと思います。デザイナーはワークショップに参加することで対話し、考えを伝え合うことで自分のコンフォートゾーンから出ることができますよね。
Minsoo: お話を伺っていると、過去に海外でこのようなワークショップを開催された経験があるようですね。そこで気になったのですが、ワークショップに参加する人たちが快適に、そして主体的に参加できるように、プレゼンテーションやコミュニケーションのスタイルで工夫していることはありますか?
Michael: 良い質問ですね。ワークショップを行う理由はさまざまだと思うのですが、私たちがカンファレンスで行うワークショップはとても短いことが特徴です。これをインタラクティブ・セッションと呼ぶこともあります。デザインに関するトピックを決めて、他のデザイナーと交流しながら学んでいくためです。
Giorgia: もうひとつ、私たちが無意識にやっていることがあります。それは、全員がフラットな立場でワークショップに参加することです。「私は批判されているのだろうか?」「私は正しいことをしているのだろうか?間違っているのか?」などを気にせずに、テーマに対して実験的に挑戦できます。そのため、自分自身や他の参加者の失敗を許容し、同時に友人を作ることもできるのです。
Minsoo: そのようなお話が聞けてとてもうれしいです。2020年のDesign Mattersに参加したとき、私は大学生だったのですが、印象的だったのはデザイナーと学生の間に壁がなかったことです。それがこのイベントの大きなポイントだったと思いますし、スピーカー同士のつながりについてもそう感じました。
講演が終わった後に、スピーカーと話す時間があるのも印象的でした。彼らの背景や人柄に触れることができたり、参加者同士が気軽に話しかけられるのがDesign Mattersの一番の魅力だと思います。それからワークショップでは、英語を母国語としない人たちもたくさん参加していましたね。
小林: 5月のイベントには、私も含めて英語が第一言語ではないデザイナーが沢山参加されると思います。日本のデザイナーの多くは英語が苦手でも参加するでしょう。彼らは他のデザイナーと一緒にコミュニケーションをとり、アイデアを出し合いたいのだと思います。では、英語を母国語としない人たちがワークショップで共同作業をする際のコツはありますか?
Michael: ワークショップでは翻訳を手伝ってくれる人がいますが、基本的には全て英語で行うことに挑戦したいと思っています。なぜなら、世界中のデザイナーにとっての共通言語は英語だからです。もちろん、英語で会話をすることに抵抗を感じる方も多いと思います。でも、みんながそうなら、自分もそうするのではないかと思っています。2020年に東京で開催したDesign Mattersでは同様の挑戦をしたのですが、たとえ英語が流暢じゃなくても、問題なく英語で会話できる環境を作り出すことができました。
Giorgia: 過去のイベントでは、参加者がラップトップやタブレットを持ってワークショップに参加している姿をよく見かけました。ワークショップの間、それらのデバイスを使って絵を描くことが非常に歓迎されていました。
コミュニケーションさえ取れれば、必ずしも言語である必要はありません。最終的な成果よりも、過程の方が面白いんです。
Michael: Design Mattersの重要な点のひとつに、コミュニケーションの大切さがあると思います。会話や雑談の大切さは、私たちが主張してきたことです。
小林: そうですね、お二人の意見に賛成です。デザイナーとして、私たちは言語を視覚化する能力を持っているので、言語を使わなくてもコミュニケーションがとれてしまいますよね。だから、たとえ英語が話せなくても、Giorgiaが言うように視覚化するだけで、自分のアイデアを相手に示せるんです。
それと、私も英語を共通言語にしていくというMichaelの意見に賛成です。たとえば、Figmaがコミュニティをオープンしたように、英語で会話をしていく場所がオンライン上でも増えています。英語を話すことでそこに参加する人もいるのですが、やはり多くの日本人は言語の壁を感じて参加できていないと思います。Design Mattersは、そのような言語の壁を取り除き、私たち日本のデザイナーが国際的なコミュニティに参加するための良い機会になると思います。
Minsoo: 私自身が2020年に参加したときも、たくさんの視覚的表現がワークショップの中で使われていたことを思い出しました。さらに印象的だったのは、文字通り椅子に座ったまま何もしない人がいなかったことです。みんな動いていたんです。英語に自信がなくても、手を動かし、交流しようとしていて、積極的に参加してくれているように感じました。
お二人は、2020年のDesign Matters Tokyoを思い返したときに、何か予想外の結果はあったでしょうか?
Michael: イベントの後で話したことなのですが、多くの意味でこれまでで最高の観客だったのではないかと思います。みんなとても熱心で、今言っていただいたように、一生懸命参加してくださったからです。
みなさん、ワークショップに積極的に参加し、講演が始まると全員が着席して、準備をしてくれました。Design Matters Tokyoの参加者の熱心さは他には経験したことがなく、私たちにとっては本当に素晴らしいことでした。
もうひとつは、スピーカーが主催者である私たちとの出会いに大きな関心を寄せてくれたことです。そのため、実際に一緒に会話をすることに大きな感銘を受けましたし、とても気持ちの良いものでした。ですから、このような経験が再びできることは、本当に楽しみです。
参加者とスピーカーが交流する場をデザインする
Giorgia: 私たちがミートアップと呼んでいる企画にも良い反応がありました。ミートアップとは、メインの講演が始まる前のカジュアルな交流ができる時間です。Design Matters Tokyo 2022でもCheck-in &Welcomeという時間を設けています。これほどまでに関心を持たれるとは思っていなかったので驚きました。カンファレンス終了後もビールを片手に会話を続ける人たちが続々と集まってきました。この取り組みは本当に素晴らしいことだったなと思い返しています。
Michael: 今年はマスクを付けたままのイベント開催になるので、今まで通りのコミュニケーションが取れるか少し心配しています。少し実験的なことになりそうです。
小林: ミートアップの時間はすごく良いですね。スピーカーと参加者がお互いに交流することができる。とても素晴らしいことだと思います。
Giorgia: とてもカジュアルで落ち着いた雰囲気です。座ってビールを飲みながらおしゃべりすると、仕事だけでなく、お互いの人生をより深く知れるからとても面白いんです。
小林: そうですね。通常のカンファレンスでは、座っている参加者と壇上でプレゼンテーションしているスピーカーの距離が離れていますもんね。そのようなことが起こることはないのでしょうか?
Michael: 私たちのDNAの中で、カンファレンスがフラットであることが重要なポイントになっています。つまり、ある年では参加者になり、ある年ではスピーカーになることができるのです。カンファレンスは参加者にとってもエキサイティングなものでなければなりませんが、同時に、スピーカーが参加者になりたいと思うほどエキサイティングなものでなければならないのです。
もうひとつは、ただ単に有名なデザイナーだけではなく、実際に面白いことをやっているデザイナーに参加してもらうようにしています。
どのような基準でスピーカーを選んでいるのか?
小林: 毎年スピーカーが変わるのを見て、どのようにスピーカーを選んでいるのだろうかと不思議に思っていました…。友人の繋がりからお声がけしているのでしょうか?
Giorgia: いろいろな方法で選んでいます。スポンサーシップを結んだ企業からスピーカーの方が来てくれる場合は、Michaelがスポンサーと話をし、どのような人がふさわしいか、どのようなテーマで登壇してもらうかなどを決めていきます。自分たちで募集する場合は、ある程度リサーチします。たとえば、カンファレンスのテーマに基づいて、「この分野のスペシャリスト、あるいはこのプロジェクトを手がけたことのあるUXデザイナーが必要だ」などと言って、とにかくたくさんリサーチするんです。
自分自身のネットワークを活用したり、友達に聞いたり、LinkedInやInstagramで調べたりします。そして「私たちのカンファレンスに参加しませんか」と声をかけます。
スピーカーが私たちのところに来ることもありますし、私たちがスピーカーのところに行くこともあります。
Michael: さらに複雑なのは、多様性を持たせるために男女比を半々にすることです。これには本当に苦労していて、ただ著名人を集めるだけだとアンバランスになってしまうので、常に意識しています。ただ、今年も例年と同じように、男女比はほぼ半々ですね。
Giorgia: それは本当に素敵なことです。最近は少しづつパンデミックの影響も緩和してきて、前より渡航もしやすくなりましたし。
Design Matters Tokyo 2022で注目すべきスピーカー
小林: では今年のスピーカーについてですが、2022年のDesign Matters Tokyoに参加するスピーカーリストの中から見どころのある人を紹介していただけませんか?
Michael: これはDesign Mattersのルールの1つなんですが、同じスピーカーに2度登壇してもらわないことにしているんです。本当に素晴らしい方々に講演をしてもらっていますが、彼らが会社を変えない限り、スピーカーとしては招待しないことにしています。
ですが、東京のような別の国でカンファレンスを開催する場合は一度登壇した人たちも再度登壇できるようにしています。東京で開催することで、偉大な人物を再び招待することができるのです。その場合、新しい場所で、新しいテーマで開催される新しいカンファレンスとなります。
今回の素晴らしいスピーカーの一人を紹介します。Twitterから参加するAnitaです。彼女はオンラインで登壇しましたが、これまでのDesign Mattersで行われたオンラインの講演の中で、おそらく最も素晴らしいものでした。私たちは彼女に、東京での講演に興味はないかと尋ねると彼女は快く承諾してくれました。そして、どのようなテーマで登壇したいか話し合い、彼女と一緒に「失敗について話そう」と決めたんです。
Michael: それから、DALTON MAAGのBiancaというデザイナーも参加する予定です。彼女は2019年に僕らのワークショップに参加してくれました。彼女は世界で最も優れた書体デザイナーの1人だと思います。東京でDesign Mattersを開催すると伝えると、彼女ももちろん「Yes」と答えてくれました。彼女は東京に行ったことがなく、日本のデザインコミュニティとつながることや、日本の漫画にもとても興味があるようで、今回のカンファレンスをとても楽しみにしています。そして彼女が来日することがすでに知れ渡っているようで、他にもいろいろなイベントに招待されているようです。別のイベントではライブドローイングをするそうです。
それからもう一人、KontrapunktoからPhilipが参加してくれます。デンマークの会社ですが東京支社もあり、日本で長い間、非常に興味深いプロジェクトを行っています。
これは、デンマークと日本のデザインを見ることができる最高のデザイン事例の一つだと思います。Philipは2020年にも参加してくれました。彼のチームもワークショップを行う予定です。ここで紹介したスピーカー以外にも、本当に沢山の面白いデザイナーが来ます。
〜Design Matters”22 Tokyo 登壇者プロフィール〜
Anita Patwardhan Butler
Design Director – Twitter
https://designmatters.jp/line-up/anita-patwardhan-butler/
Bianca Berning
Creative Director/Type Designer – Dalton Maag
https://designmatters.jp/line-up/bianca-berning-reiko-hirai/
Philip Linnemann
Creative Director – Kontrapunkt
https://designmatters.jp/line-up/philip-linnemann/
Design Mattersが大切にしている価値観とは
Minsoo: 今年のイベントに参加するのがさらに楽しみになりました!では、ここからは他の話題に移らせててください。2012年以来、世界中で50回以上もカンファレンスを運営していることを知りました。まず、これは本当なのでしょうか?
Michael: そうですね。Design Mattersも今年で8回目です。最初のカンファレンスは2015年に開催され、それから毎年開催していました。その後、2020年には東京でも開催しました。
2021年にも開催される予定だったのですが、複雑な状況からキャンセルせざるを得ませんでした。今年はどうやら実現しそうです。それから、もっと小さい規模のポップアップイベントをやろうという密かな計画もあります。そうすれば世界中を飛び回る必要はなくなります。また、将来的にはアメリカでも何かやりたいと考えています。オフラインのカンファレンス以外には、オンラインイベントも開催しています。短時間のイベントですが、今年ははじめてオンラインのみのカンファレンスも開催しました。
Giorgia: そのカンファレンスでは「行動デザインをSDGsの17の目標にどのように活用できるか」というテーマで開催しました。
これは、私たちが将来的にもっと深く追求したい方向性です。気候変動の観点から、多くの人々を遠い場所に移動させて二酸化炭素を排出することはしたくないのです。少なくとも、同じ大陸・同じ国であれば、その場所に留まることができます。
また、学生向けのイベントも行っています。カンファレンスのメインイベント前日には、デンマーク人学生や留学生を対象としたイベントを開催し、学生向けに同じような講演を開催しています。
もちろん学生の経験値や需要は、シニアデザイナーと同じではありません。なので、私たちが学生たちにヒントやアドバイスを提供しています。もしかしたら将来、彼らが働く会社と彼らがつながるかもしれないですしね。
Minsoo: お二人がDesign Mattersの活動をもっと拡大し、このイベントを世界中に広げていくために、心に留めているコアバリューはありますか?
Michael: 私たちが主張すべき核となる価値観がいくつかあると思います。それは、Design Mattersは参加者が一体となるカンファレンスだということです。全員が同じ講演を聴き、ワークショップへ向けて同じタイミングで少し休憩をします。もちろん、自分自身のタイミングでそれらの参加をコントロールすることはできますが、基本的には全員が同じ空間で同じ空気を体感するプログラムにしています。それには2日間という期間が必要で、この一体感を味わってもらうためにちょっとした楽しいパーティーのような雰囲気を演出したり、全プログラムの後に参加者が交流できるような時間を設けています。
Giorgia: 私たちの価値観のひとつは、とても友好的でカジュアルな、お祭りのような雰囲気を保つことかもしれません。そうすることで、参加者は「非常にシリアスなことをしに来ているわけではない」と気付きます。スーツを着ている人は見かけません。リラックスしながら沢山経験できる場を提供したいんです。Michaelが言ったように、たくさんのパーティーやパフォーマンスがあり、楽しいはずなんです。
Michael: もうひとつは、やはりデザイナーに焦点を当てていることだと思います。プロダクトやマーケティングが主な内容であってはならないのです。
いずれはデジタルデザインだけではなく、さまざまなタイプのデザインを扱うことになるでしょう。物理的なデザイン、あるいは記号やサインなどの言語学に関連した産業も考えられます。建築も視野に入るかもしれません。他の領域のデザイナーの話を聞くことで、インスピレーションが得られるかもしれません。
Minsoo: 今お答えいただいたように、お二人はカンファレンスをフレンドリーかつ楽しい場として続けたいと考えていますよね。ですが、パンデミックの状況下で、東京のイベントをオフラインで開催することは非常に難しい決断だったのではないでしょうか。対面のコミュニケーションにこだわる理由はありますか?
Giorgia: 対面でのコミュニケーションを重視している大きな理由の一つは、相手の表情や感情を読み取れるからです。画面越しだと、いろいろな障害があります。例えば接続がうまくいかないとか、顔が固まってしまって相手に自分の気持ちを正確に伝えられなかったり。コミュニケーションに大勢が関わっていて、チャットしか使えないこともありますよね。
対面の場合は、多くの人が同時に話すことも簡単にできます。目の前の人と話したり、振り返って横の人と話すことが簡単に、そして即座にできてしまいます。それは、当たり前ですが、非常に価値があることだと思います。前回のDesign Matters Tokyoでは、日本の慣習に従って参加者の皆さんが名刺の交換をしていたのがとても興味深かったです。
Design Mattersが向かう未来
Nondo: 先ほど、SDGsにおけるデザインの社会的インパクトに取り組んでいるとおっしゃっていました。SDGsの中でデザインが影響を与えられる分野はたくさんありますが、どのように特定のSDGsをゴールとして決めているのか教えてください。
Giorgia: 私たちのネットワークにいるデザイナーが普段話していることや、過去に話していたことを調べることで、取り組むべきゴールを容易に考えることができました。
「この人はこういうことをやっていて、こういう目標を達成するためにこういうことをしているんだ」と、その人たちがやっていることを調べ始めたんです。そして、そのつながりが既にあることに気づきました。これまであまり意識していなかったため口に出すことはありませんでしたが、これを実際の組織文化の一部にしようということになったのです。
また、マニフェストも作成しました。このマニフェストは私たちのアイデンティティの一部であり、現在の活動を継続しさらに広げていくために必要な考え方です。
中身について少し話すとすれば、私たちは学生だけでなく、さまざまな背景を持つ人々を巻き込もうと思っています。例えば、LGBTQやハンディキャップを持つ人、少数民族の人たちなどです。そういった人たちは東京行きの無料チケットを入手できます。ですから、私たちはスピーカーや講演などできる限り多くの方法で人々を巻き込み、マニフェストに準じて働こうと努力しています。
Design Matters Manifesto : https://designmatters.io/manifesto/
Michael: 私たちが歩んできた道もまた、当初からそうでした。私たちの焦点は、いつも魅力を感じ、毎日使っているアプリやWebサイトから学ぶことでした。そして年月が経つにつれて、もしかしたら何か他のことが起こっているのかもしれないと思い、少しづつ焦点を変え続けてきました。
その兆しは必ずしも良いものではないのかもしれません。もしかしたら、邪悪なものかもしれません。それらの良し悪しを判断するために、過去に登壇していただいたスピーカーを招いて、毎年コミティ・ミーティングと呼ばれる委員会を開いています。その中では、それぞれのデザイナーが社会やデザインに現在どのようなことを考えているか?ということを話し合います。
例えば、2017年にFacebookでのフェイクニュースの問題が話題になったときは、世界中の多くのデザイナーが、「俺たちは何をやっているんだ?」という感じでした。このときも、このコミティを通して何か良いこと・解決策となる一手を打てないか?ということを話し合ったんです。
そして、今日、サステナビリティに関する包括的な議論(特に気候変動に対する取り組みに関する議論)はとても重要な議題になっています。この問題に関して、私たちは常に意識し会話を続けていく必要があります。
Giorgia: そうですね。そしてDesign Mattersが常にこの会話を続けることができるコミティでありたいと思います。そのために、さまざまな場所でカンファレンスを開催していきます。
Nondo: A.C.O.チームを代表して、MichaelとGiorgiaに感謝したいと思います。Design Mattersとは何か、そして5月14日から15日にかけて開催されるDesign Matters Tokyo 2022の見どころについてお聞きすることができました。
割引チケット購入のご案内
「Design Matters’22 Tokyo」は2022年5月14、15日に開催されます。
この記事を読んでくださった方には、お得なチケット割引もあるのでぜひ参加してみてください。下記のURLからご購入が可能です。
https://ti.to/design-matters/tokyo-22/discount/ACO/
Design Matters”22 Tokyoに関して
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by Monstarlab Design Journal
Monstarlab Design Journal 編集部です。 モンスターラボデザインチームのデザインナレッジとカルチャーを発信していきます。
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