- 2020.10.16
こんにちは、プロジェクト・ディレクション部マネージャーの武藤です。プロジェクトマネージャー(以下PM)に求められるスキルは、デザインやシステム開発など、所属している会社の事業内容によって変わってくるため、スキルセットが定まらない面があります。しかし、根本的な基礎スキルや考え方はかなり似ているのではないでしょうか?
PMとしてキャリアを考えている場合は、まず、基礎部分を身につけていくことが必要になります。プロジェクトマネジメントの基礎は、仕事そのものに対する考え方として共通する部分も多く、身につけておくことで様々な業界や領域で活用できるでしょう。
そんなプロジェクトマネジメントの基礎知識のひとつとして、「QCD」という言葉があります。よく聞く言葉ではあると思いますが、内容がいまいち理解しきれないという人も多いのではないでしょうか。今回はこの「QCD」という、PMにとって欠かせない知識についてご紹介していきたいと思います。
1. QCDとは?
1.1. プロジェクトマネジメントの重要な三要素「QCD」
「QCD」とは、Quality(クオリティ:品質)・Cost(コスト:費用)・Delivery(デリバリー:納期)の頭文字を重要度の高いものから並べたものです。品質 > 費用 > 納期というように、品質が最優先と考えられています。
もともとは製造業の生産管理において重要とされる三要素のことですが、現在ではさまざまな業界に普及しています。もちろん、プロジェクトマネジメントにおいても、極めて重要な三要素と考えられています。
なぜ、この三要素が大事かというと、顧客が求める品質を提供して、はじめて顧客満足を得ることができるからです。品質に問題がある場合、顧客に迷惑をかけ信用も下がってしまいます。一方品質が高くても、費用が高すぎると売値が高く顧客が買ってくれません。原価が高く会社として利益が出しづらいという問題が発生し、どちらにしても長期的な事業継続が難しくなります。そして、納期が守られなければ、当然会社としての信用を失うことになります。
1.2. プロジェクトの成功とは?
QCDの達成=プロジェクトの成功と言え、PMのゴール(使命)とも言えます。プロジェクトの成功とはざっくり言うと、「求める要件どおりに/予算内で/納期を守ること」となりますが、近年ではより大規模かつ複雑化していて、その成功は簡単なことではありません。このQCDに加えて、相手の期待を上回るものや、付加価値を提供できれば、顧客にとって、会社や自分にとっても成功以上の価値を生むことができるでしょう。
1.3. 「より早く、より安く、より良い(うまい)」は危険
実際の現場では、競合他社との比較などにより、「より早く、より安く、より良い(うまい)」という某牛丼屋のコピーのようなことを求められる場合が、ときどきあります。ですが、市場が求めるバランスからすると必然とも言えます。常に改善や努力をする姿勢は必要ですが、安易に要求を受け入れてしまうとプロジェクトが破綻するリスクも高まってしまいます。 最終的に満足してもらえるように、慎重な検討と粘り強い交渉が必要です。
2. QCD(品質・費用・納期)の理解
2.1. Quality(クオリティ:品質) – クオリティファースト
Quality(クオリティ:品質)は、QCDの中で最も重要とされる要素です。クオリティファースト(品質本位、品質第一)という言葉があるように、優先して達成されるべき目標になります。 要求された品質を満たすためには、必要なプロセスを設計して、実行することが必要になります。また、局所的であったり、必要以上の品質を狙うと、総合的なQCDのバランスを崩してしまうことがあります。結果として顧客満足の低下に繋がるため、注意が必要です。
2.2. Cost(コスト:費用)- 初期段階の丁寧な確認
Cost(コスト:費用)の計画が甘いと、計画していた仕様からの変更が発生し、途中で追加費用が必要になるなどして、こちらも当然ながら顧客満足の低下に繋がります。大規模プロジェクトでは、関係者も多く期間も長いことから、とても複雑になため、慎重なコスト計画と管理が必要になります。プロジェクト初期段階でのヒアリングや要件を丁寧に確認することで、コスト影響の大きい、追加要望や修正要望の発生リスクを抑えることができます。
2.3. Delivery(デリバリー:納期)- リカバリー調整
プロジェクト開始時から納品までの工程をWBSを通じて慎重に管理することが重要です。工程が前倒しで進む分には問題はありませんが、遅れた場合には後工程のリカバリー調整が必要になってきます。また、遅れる傾向が強い要素のため、適切なバッファを見込む必要があります。
品質を上げたり費用を下げると、納期が遅れるといった関係にあります。厳しい納期を求められるプロジェクトでは、品質保持のためにコスト増加の交渉が必要になります。
納期を優先にする場合に品質と費用に影響が出るという認識を、あらかじめ関係者間で共有することで、円滑に調整しやすくなります。
3. QCDの相互関係とQCDS
3.1. QCDのトレードオフ関係
Quality(クオリティ:品質)は最も重要な要素ですが、費用・納期とのバランスを上手くとることではじめてプロジェクトが成立します。何かの優先度を上げれば、他の要素に影響が出るため、「トレードオフ」の関係にあると言われます。品質を念頭に置きつつ、費用と納期のバランスに注意することが必要になります。
- ・品質を上げるためには、費用を上げ、納期を遅らせる必要がある。
- ・費用を削減するためには、品質を下げ、納期を遅らせる必要がある。
- ・納期を早めるには、品質を下げ、費用を上げる必要がある。
- ※事業内容や案件によって、バランスが変わります。
3.2. QCD+Scope(スコープ:範囲)
現在のプロジェクトマネジメントではQCDの三要素にSを追加した四要素「QCDS」というものがあります。Sはスコープ、サポート、サービス、セーフティーなどがあり、業界や業種により異なってくるのですが、プロジェクトマネジメントにおいてはScope(スコープ:範囲)として用いられます。
順番は4番目ですが、スコープは四要素の中でも最も綿密に計画が必要な要素とも考えられます。実際、PMBOKの10の知識エリアでは統合マネジメントの次にスコープがあることから、その重要性が示されています。
3.3. S+C+D = Q(総合的・中心的な存在)
別の見方では、品質は総合的・中心的な存在であり、スコープ、費用、納期を適切に管理することで品質が達成できると考えることもできます。
4. QCDは円滑なプロジェクトマネジメントに欠かせない
QCDを適切に管理することは、円滑なプロジェクトマネジメントを実行する上で欠かせません。しかしながら、QCDはあくまでもノウハウのひとつです。そのため、実際には想定していた以上に複雑な状況が多い現場では、考えていたようには対応できないことも多いと思います。プロジェクトマネジメントには多くの経験と高いコミュニケーション能力が必要になりますが、QCDというノウハウを軸に考えることで、比較的短期間で円滑なプロジェクトマネジメントを実践していくことができると思います。PMとしてのレベルアップのために、QCDは常に意識するようにしましょう。
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by Masataka Muto
大学卒業後、SIerのデザイン部門でデザイナー兼マネージャーを務め、ECやニュースサイトの開発に携わる。その後、複数のデザイン会社、フリーランスとして活動し、2017年に株式会社A.C.O.に参加。現在は、アプリ開発、新規サービスなどのUXデザインとプロジェクトマネジメントを担当。
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