- 2017.06.19
あなどるなかれ。Webサイトにおける写真たち
ACOのデザインの多くは写真をとても重要視して制作しています。 文字や数字に比べて情報の伝達はイメージ(写真や画像)のほうが早く、印象や記憶に残りやすいとよくいわれています。それだけにコンテンツ内で使われるの写真の役割をよく整理して、どんな役割を担えばいいか、どんな写真を選定すべきか、熟考しなければなりません。
制作側がたとえ飾りや背景の賑やかしという軽い意味で使ったとしても、その逆でも何にせよサイト内での写真の数が多ければ多いほど、面積が大きければ大きいほどそのサイトの「印象」に関わってくるという訳です。
あるもの・撮る・買う
さて、あなたがサイト内の写真を選ぶ担当だとして、自社で(もしくはクライアントが)既に持っている写真を使うか、撮影するか、購入するか、多くの場合そのどれかです。 具体的な情報を伝える場合は、実際の説明的な写真があると一目瞭然ですが、ピタリとくるものがあることは少なく、内容はあっていてもクオリティが低く使いづらいことは当たり前。
更には文字や言葉にならない「雰囲気」だとか「感情」「世界観」を伝える、という難題を担うことも多くあります。当然、最適な写真素材が用意されていることは少なく、新たに用意する必要があります。 となると、「撮影をするか」、「レンポジ(ストックフォト)と言われるサービスで写真を選んで購入するか」のどちらかです。 今回は後者の話です。
レンポジセレクトの差がサイトの質を左右する!
一言でレンポジ選びと言っても、奥が深い。というか難しい。A.C.O.のデザイナーたちはいつも苦しんでいます。 作業手順としてまず、最低条件をクリアするだけで、選択肢はかなり減ります。 その次にブランドのトーンとフィットしているか?の確認。この時点でほぼ無くなる。
できれば使い倒されたどこにでもあるものじゃなくてオリジナリティもほしい。「そんなの無いよね、撮影しようや」って言いたくなってきます。レンポジサービスはたくさんあるので、この作業を繰り返しているうちに日が暮れます。それでもいつかこの中のどれかだな…という数点が残ります。 見つけ方の明解な答えはないですが、「ホントよく見るよね、残念だね。気をつけたいね」のポイントはいくつかあるので、「企業サイトでよく使われるレンポジ(ストックフォト)」をテーマに事例を紹介します。
人物編
人間は人物の写真に目が勝手に注目するようです。人物カットは特別慎重に選びたいところです。目指すところは、いろいろありますが中でも自然な表情やシチュエーションは求められることが多く、リアリティのある実在する人物像を伝えたいものです。
カメラ目線で爽やかな笑顔の新入社員(もしくは就活中)ぽい若い女性二人
背景はオフィス(学校かも)とくに写り込んでいるものもない。リクルートスーツを着ていて持ち物や衣装にも変わったところがなく、パッと見て新卒→採用かな と想像できるので大きな条件は合っていそう。 セーフティーな考え方の担当からのNGはあまりないかもしれません。ですがそれ以外何も伝わりません。それどころか、頭に残ったその写真からはウソっぽい、そこにこだわりがない、そんな印象が伝わってきてしまいます。新入社員にあまり期待していないんだなぁと。 採用ページを見る人(ターゲット)は人生に関わる情報を求めています。そんな相手に何を見せるべきかは熟考したいものです。
何を指差しているのかポージング。と背景の桜
新卒の入社かな?と前出の写真同じく最初の看板の役割は果たしていそうです。が、やはりこちらも、ターゲットにとってみたらこんな不自然なポーズをしているモデルと自分を重ねるのは違和感がありそうです。
元気で明るく前向きな新入社員を求めているのは分かりますが、そのまま元気で明るい就活生の写真を使うのはそのエリアの活用法としてはもったいないです。 エントリーするのは学生です。彼らの気持ちになって、共感し、興味をそそるカットを用意するべきです。迷った時は学生の頃の気分に戻ってみて下さい。もっとニュアンスだったり細かい情報に敏感だったはずです。
自然・環境編
コーポレートサイトのCSRやサスティナビリティページのトップでよくデザイナーを悩ませます
でました…大事そうに持つ地球ガラス玉と木
何がダメというより使われすぎてもはやメタファでもない記号的なカット。オリジナリティーは全くありません。 今や企業にとって、社会にとって環境に対する意見や活動を伝えるのはあたりまえです。それ自体が伝えたい訳ではなく、大切なのは何を伝えたいのかです。見ている人は中身に興味が惹かれるのです。環境の「何なのか」に人は興味があるのです。
新芽、よく見ますね
確かに新しい芽が育っているというストーリーはポジティブなメッセージにつながりやすいですが、これも使い倒されているモチーフなので、新鮮さのない印象になりそうです。 モチーフがぴったりなのであれば、オリジナリティを出して、新しく芽吹いているのは何かを伝えたい。内容が良くても写真ひとつで「こだわりのない、やらなきゃいけない」だけのコンテンツに見えるかもしれないのです。
IT・テクノロジー編
インターネットサービスやセキュリティのコンテンツは、目に見えないものなのでイメージの視覚化が難しいものです。
パソコンとその周りで浮いてるアプリアイコン達
目に見えないものなので、写真×グラフィックアイコンなどを混ぜたカットは多く表現方法としてはありですが、内容をしっかり精査する必要があります。IT•テクノロジーを扱う場合、見る側はとても専門的な内容に詳しい方が多そうなので意外と取扱注意です。 中途半端に選ぶと、詳しくない人には難しそうに見え、知識のある人には言ってることと画がズレていて信用できないと思われるおそれがあります。
地球を使えばダイナミック?
インターネット=地球 このような天文的なスケールで壮大な表現もとてもよく見ます。 ダイナミックな写真と内容にギャップがあると感じるケースがよくあります。このダイナミックさに慣れすぎてもはやあまり期待できなくなってさえいます。 見流されないための工夫のひとつとして、インターネットやテクノロジー推しではなく、そのサービスのベネフィットに注目してみると他の表現も見つかるかもしれません。
ビジネス編
ビジネスシーンはコーポレートサイトや働き方の説明などするコンテンツで求められます。しっかりきれいにしていれば安心できる会社と見られる時代は終わった!
ビジネスっぽい感じの握手
交渉事やパートナーシップなどの象徴であり、顔を写さないので安易に選ばれがちな握手カット。特に日本人は握手が外国よりは縁遠いので違和感を感じさせ、悪目立ちしています。職場でこのシーンほとんど見ません。ただの植えつけられたイメージなだけで、「アイコン」の役割でしかありません。それだったら1/100の面積で足りてしまいます。
どこだかわからない高層ビル達
「アクセス」のページのヘッダーとかでよく見ます。どこだかわからないビル群は無難なカットの代表例。 同じデザインでも自社ビルなら意味があり、ビルへ訪れる際のビジュアルヒントになります。単なるイメージだと逆に「どこだ?」で、とても残念かもしれません。
「内容がまちがってない」というのはあくまで前提
上記に挙げた写真はそれ自体が悪いわけではなく、よくやりがちな使われ方が残念なサンプルとして挙げました。 さて、じゃあどんなのならいいの?…ですがそれは本当に毎回頭を抱えて考えます。 写真の可能性を背負って、コンテンツを深く理解する。再解釈を繰り返し、そのコンテンツがもつ他とは違うコンセプトやバリュー、オリジナリティ、もたらすものとは何か?を見直して、その厳しい条件を念仏を唱えるように探す孤独な作業です。
それでも出会いの瞬間は感動的です!キマった!と顔が緩むくらいです。ここまで興奮する必要はないですが、役割は何か?優先順位を整理することが出会いの近道です。
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by Naoko Okiyama
グラフィックデザイン事務所を経て2008年よりA.C.O.(現モンスターラボ)に入社。アートディレクターとして、多くの企業ブランディングやアートディレクションに参画。デザインコンセプトのご提案からブランドの世界観作りを担当。2016年からは同社のデザインチームのマネジメントを担う。
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