- 2023.08.01
チームビルディングは、プロジェクトの成功に欠かせない大切な要素です。しかし、チームビルディングについての知識や経験が不足していると、チーム全体のコミュニケーションが停滞したり、自分やメンバーがストレスを感じてしまったりすることがあります。
本記事では、モンスターラボのPM(プロジェクトマネージャー)とUXデザイナーから得たノウハウをもとに、チームビルディングに関する具体的な方法や、なぜチームビルディングが必要なのか、そして注意すべきポイントについてお伝えします。
チームビルディングの具体的な方法
チームビルディングの大切さを知っていても、具体的なアクションとして何ができるのか、わからない事もあると思います。ここではいくつか気軽に実施できるワークショップをご紹介します。
チームメンバー同士が関心を持つきっかけを提供するだけでなく、プロジェクトを自分自身にとって更に価値のある経験やチャレンジとしてポジティブにフレーミング(捉え方や意味付け)することを目的としています。無料でダウンロードできるテンプレートもあるので、ぜひ活用してみてください!
1. キックオフミニワークショップ
実施タイミング:プロジェクト開始時
所要時間:約30分〜1時間
ファシリテーション難易度:低〜中
プロジェクトのキックオフの際に行う簡単なワークショップです。各自が自身のプロジェクトにおける役割、得意不得意などの基本情報をメンバーに共有します。
このワークショップを行うことで、チーム内の警戒心を下げ、心理的安全性を高めることができます。さらに、プロジェクトのフレーミングをすることで、裏テーマのような個人のチャレンジや目標を反映することができ、積極的な姿勢を促すことができます。また、他のメンバーの背景や価値観を理解することで、相手を尊重し、チーム内のトラブルを減らすことができます。
主なステップ
- 1.メンバー各自が入力してください・・・7-10分
- 2.メンバ各自が発表してください・・・1人1-3分
項目候補 ※必要に応じてアレンジしましょう
- プロジェクトの役割
- 得意なこと/好きなこと/苦手なこと
- チャレンジしたいこと
- 不安なこと
- 大切にする価値
- そのためにどのように仕事をするか
- 他の人からその人への一言
アレンジ – Soccer Formation
サッカーフォーメーションに例えて、メンバーのポジションや連携を考えるワークです。サッカー好きのメンバーが多くいるときにおすすめです。プロジェクトチームの役割分担や連携が円滑になり、効果的なコミュニケーションと協力体制の促進が期待できます。
アレンジ – Character MIX & MATCH
自分の似顔絵を作成するワークです。リラックスした場を作るときにおすすめです。自分の特徴を表現した似顔絵は記憶に残りやすく、チームメンバーの関係構築がスムーズに進めることができます。
2. チームビジョン作成
実施タイミング:プロジェクト初期
所要時間:約1時間〜2時間
ファシリテーション難易度:中
メンバー全員でチームビジョンを作成するワークショップです。チームビルディングにおいて、チームビジョンは大切な役割ですが、ビジョンを作成するだけではその効果を発揮することはできません。メンバー全員が作成プロセスに参加し、対話や議論することが必要です。ビジョンに向かって、一人ひとりが自ら考え共有することで、信頼関係が築かれるため、チームの積極性と生産性の向上が期待できます。
項目候補 ※必要に応じてアレンジしましょう
- ステートメントの確認
- 個人の想いを考える
- チーム目標を考える
- ビジョンを考える
3. チームのヘルスチェック
実施タイミング:プロジェクト初期〜中期
所要時間:約30分〜45分
ファシリテーション難易度:低〜中
プロジェクト初期から中期に、月に1回程度、メンバーのプロジェクトに対する評価を確認します。早い段階に課題や改善点を見つけることは、最終的な品質に大きく影響します。問題が少ない場合には、頻度を2ヶ月に1回にするなど調整して、継続的に実施することが大切です。
進捗とは別に、プロジェクト評価についてメンバーが対話することは、本質的な課題や改善点を見つける機会となります。
また、メンバーが感じていることを自ら言語化することは、ストレスの発散とモチベーションの回復にもつながります。
9つの評価項目:
- 1.心理的安全性
- 2.ビジョン
- 3.ミッション
- 4.自律性
- 5.リスク
- 6.ユーザー
- 7.ステークホルダー
- 8.継続的な改善
- 9.楽しさ
評価サイン:
- 青:うまく行っていて、言うことなし
- 黄:壁はあるが、乗り越えられる
- 赤:問題あり。チームに悪影響を与える可能性がある
※チームのヘルスチェックは、坂田 一倫さん(@mariosakata)が考案した方法です。利用方法については、弊社が独自のアレンジをしています。
4. プロジェクトの振り返り
実施タイミング:プロジェクト進行途中、完了時
所要時間:約30分〜1時間
ファシリテーション難易度:低〜中
振り返りは、チームビルディングにおいて非常に重要な要素です。プロジェクトの進行中もしくは完了時に達成した事や問題点、課題などを振り返ることで、個人とチームの成長や改善を促し、チームメンバー同士の相互理解を深めることができます。また、プロジェクトの価値や意味をリフレーミングすることに繋がります。
プロジェクトの振り返りには、KPT(Keep/Problem/Try)やYMT(やったこと/もっとやりたいこと/とどまるべきこと)といった多種多様なフレームワークが存在します。これらのフレームワークを活用することで、具体的な改善案を挙げたり、次のプロジェクトに向けてのアクションプランを対話することができます。 ここではKPTA(Keep/Problem/Try/Action)を活用した振り返り方法をご紹介します。
主なステップ
- 1.テーマを確認する
- 2.KeepとProblemを書く(5〜7分)
- 3.KeepとProblemを発表する(1人1分程度)
※クリティカルなProblemは、スタンプなどを付けて目立たせる - 4.TryとActionを書く(5〜7分)
- 5.TryとActionを発表する(1人1分程度)
- 6.すぐにできること、重要度が高いことはスタンプなどを付けて目立たせる
- 振り返りKPTA テンプレート – Miroverse
他にも様々なMiroのテンプレートが下記よりダウンロード出来ます。
ふりかえりテンプレート
5. ミーティングチェックイン ※雰囲気を切り替えたいときなど
実施タイミング:ミーティングの冒頭
所要時間:約5分〜10分
ファシリテーション難易度:小
ミーティングチェックインとは、ミーティングの冒頭で各メンバーが近況や今の気持ちなどを簡単に共有するものです。ちょっとした雑談をすることで、チームメンバーのミーティングを開始する気持ちを整えます。また、メンバーの距離感を縮め、互いの理解を深めることで、信頼関係の構築にも繋がります。
主な項目:
- テーマ設定なしの場合
- 近況や今の気持ちなど
- テーマ設定ありの場合
- 今、欲しいもの
- 好きな食べ物・料理
- テーマ設定あり
- 今、行きたいところ
- 今日(今週)は、どんな様子か
そもそも、なぜチームビルディングが必要なのか。
ここまでチームビルディングのためのいくつかのワークショップをご紹介しましたが、そもそもなぜチームビルディングが必要なのでしょうか。
多様性に対応するチームビルディング
長期的に同じメンバーでプロジェクトを進める場合、チームビルディングを改めて意識する必要性はないかもしれません。しかし、新たに発足されたチームで、参加メンバーが多様なバックグラウンドや考え方を持っている場合、言葉や表現のニュアンスが異なったりすると、簡単な意思疎通さえうまくいかないことがあります。
また、バックグラウンドによる考え方の違いにより、議論が止まってしまうこともあります。そのため、チーム発足後は、お互いの理解を深めたり目標を共有するためのチームビルディングが重要なのです。
心理的安全性の確保
Googleのプロジェクトアリストテレス(Project Aristotle)という研究プロジェクトをご存じでしょうか。このプロジェクトは、チームの生産性を高める要素を調査・分析したもので、2012 年から5年以上にわたって実施されました。この研究でも重要な要素と捉えられている心理的安全性の確保はチームビルディングにおけるすべての土台であり、最も重要と言えます。
心理的安全性とは、対人関係においてリスクある行動を取ったときの結果に対する個人の認知の仕方、つまり、「無知、無能、ネガティブ、邪魔だと思われる可能性のある行動をしても、このチームなら大丈夫だ」と信じられるかどうかを意味します。
心理的安全性の高いチームのメンバーは、他のメンバーに対してリスクを取ることに不安を感じていません。自分の過ちを認めたり、質問をしたり、新しいアイデアを披露したりしても、誰も自分を馬鹿にしたり罰したりしないと信じられる余地があります。
(引用元: rework.withgoogle.com)
多くの人は、楽しく仕事をしつつ、お互いに成長できる環境で働きたいと考えます。しかし、良い雰囲気や調和は大事ですが、それを重んじすぎていると、意図せずに批判的なことを伝えづらい雰囲気が出来上がってしまうことがあります。
心理的安全性は、単にチームメンバーが友好的で快適な環境で働けることを意味するだけではありません。結束力が強すぎると異論を唱えることができなくなり、集団思考に陥る可能性があります。意見が対立したときには、どちらに正当性や責任があるかを判断するのではなく、異なる意見を通して、優れた考えを一緒に見つけ出そうとする意識がチーム力を高めていきます。
学習と成長を継続的に促進する「チーミング」
チームビルディングがチームの基礎を築くために行われる一連の活動であると考えられるのに対し、チーミングとはチームワークやコラボレーションを継続的に促進するプロセスのことを言います。
チーミングは、より継続的に学習と成長を目指すことを重視するためチーム全体の知識やスキルの向上により組織の競争力を維持することに加え、メンバー間で疑問を持ちながら本質を探求することで、イノベーションや問題解決能力を高めることに繋がると考えられます。
現在のプロジェクト開発では、複雑性、イノベーションの促進、効率と生産性の向上などが高いレベルで求められることが多く、チーム全体として、学習と成長を続けることが、成功に不可欠な要素となっています。このような状況において、チーミングが重要な役割を果たします。
チーミングの4つのステップ
チーミングでは、「学習しながら実行する」というPDCAのような考え方があり、診断、デザイン、行動、省察という4つのステップで構成されます。
4つのステップ
- 1.診断:課題や問題、チャレンジ材料などの状況を把握する。
- 2.デザイン:学習しながら実行するために必要な行動計画を考える。
- 3.アクション:行動計画に基づいて実行する。その経験を学習の機会として捉える。
- 4.省察:プロセスと結果について分析して、次のサイクルに向けて改善するための情報を得ます。
チームは、プロジェクトを実行しながら、同時に学習を取り入れていきます。プロジェクトより学習を優先させるのではなく、プロジェクトを進めながら、同時に学習を組み込むのです。
この考え方に基づき、チーム全体が目標を共有し、取り組みながら学び、改善していくことで、より効率的かつ高品質な成果物を生み出すことができます。失敗を恐れずに試行錯誤を繰り返し、新たな知識やスキルを獲得しながらプロジェクトを進めることが重要です。このような姿勢が、チーム全体の成長を促し、より高い成果を生み出すことに繋がります。
まとめ
今回は、チームビルディングの具体的な方法や心理的安全性の重要性、チーミングについてご紹介しました。より良いチーム作りのヒントになれば幸いです。
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by Masataka Muto
大学卒業後、SIerのデザイン部門でデザイナー兼マネージャーを務め、ECやニュースサイトの開発に携わる。その後、複数のデザイン会社、フリーランスとして活動し、2017年に株式会社A.C.O.に参加。現在は、アプリ開発、新規サービスなどのUXデザインとプロジェクトマネジメントを担当。
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