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A.C.O. ブランディング研究室

デザイナーが紹介する、A.C.O.のブランド開発プログラムとVI・UIデザインの事例

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はじめに

こんにちは、デザイナーの岩田です。

A.C.O.ではここ数年で、UI・UX改善を目的とするプロジェクトとは別に、ブランド開発プロジェクトが増えています。ブランド開発プロジェクトでは、ブランドの提供価値をクライアントと一緒に定義していくプログラムを実施します。それによって、顧客体験の向上だけでなくブランド価値を生み出し、高め、個性的なブランドイメージを作りだします。

プログラムをしっかりと行っていくと、顧客やブランドにとってだけでなく、デザインの現場にもいい影響があります。また、プログラムをUI・UXデザインに先行して実施することで、UI・UXデザインをクライアントとデザイナー双方が、納得感を持って進めることができるようになるのです。

たとえば、デザインの手戻りやプロジェクトチームの認識齟齬をなくすことができます。さらにデザイナーはそのあとの自分のデザインワークをイメージしながらクライアントとコミュニケーションを取ることができるため、デザイン的なアプローチまである程度会話しておくこともできます。

ブランド開発プログラムについては、以前公開したこちらの記事で詳しく紹介しています。

今回は上記の記事でも紹介した数あるワークの中から、「属性から価値を絞り込む」「ブランドパーソナリティ」という2つのワークについて、デザイナーの視点で事例も踏まえつつ紹介したいと思います。

ワーク1:属性から価値を絞り込む

属性から価値を絞り込む

どんなワークだったか

このワークはピラミッド型のフレームを使って、そのサービスにとって最も大切な価値(ベネフィット)を見つけるワークです。このワークで特徴的な点は「サービスに触れたときにユーザーに感じさせたい気持ち」という感情的属性が整理できるところです。

ここで言う感情とは「ちょっと嬉しい」とか「新鮮な驚き」といった、一見シンプルすぎて価値を見落としてしまいそうなものです。これらを書き出して共有すると、プロジェクトメンバー全員の共通言語として感情を共有できます。すると「ユーザーにどんな気持ちになって欲しいのか」というひとつの軸を共有でき、すべてのデザイン要素の目指すべきゴールになります。

実はこういった言葉は、ワークを行わなくてもデザイナー自身が心の中に持っていたり、デザイナー同士で話していたりします。そしてデザイナーはデザインコンセプトやプレゼンテーションの中にサービスにとっての価値を表す言葉を繰り返し使いながらチーム内でデザインの納得度を高めていきます。

ブランド開発プロジェクトを行うと、ワークの中でクライアントと整理した言葉をプレゼンテーションの場でも使うことができるので、プレゼンテーションを何回も繰り返さずとも、お互いに同じゴールを見据えながらデザインを評価できるようになります。

ワークから何が見えたか

私がこのワークを通して一番嬉しい驚きを感じたのは、参加メンバーがそれぞれポストイットに書いた内容を発表するとき、デザインに関わるエッセンスがたくさん含まれていたことです。

たとえば「うちのお客様は店舗でうろうろ商品を見比べる人が多いので、アプリでも同じ体験をさせたい」というように、現場の社員さんにしか分からないリアルな情報が出てきたり、「(この機能について、長く熱く話しているな)」と声や発言量から優先度合い・理由などを感じることもできます。また、企業らしさがサービスらしさに直結してくることが多いので、参加メンバーの方々の性格や共通点を観察することも大切なポイントです。

ワーク中はこういった言葉が社長・マーケティング担当・販売・営業・エンジニアなど、あらゆる立場の方からたくさん出てくるので、まさにヒントの宝庫のような時間です。それらをポストイットにメモしていくと、自然と「これこそコンセプトになりうる!」、という言葉に出会う瞬間があったりします。

どうデザインしたか

昨年ブランド開発をお手伝いさせていただいたGMOくまポン株式会社様のサービス「キレイパス」の事例を紹介します。キレイパスは、美容医療のチケットを購入でき、Webサイトとアプリから自分にあった施術を簡単に見つけることができます。事前の決済や予約日時の確認、来院当日の受付まで、スムーズな美容医療体験を提供しているサービスです。

キレイパスの案件では「属性から価値を絞り込む」ワークを経て、こんな価値を見出しました。

「パーソナライズされた情報提供は発見性が高く、 全体に気の利いたサービス設計によって、 自分がキレイになれるんじゃないかと思わせてくれる」

KIREIPASS brand guidelines

本案件ではブランド開発をもとに、サービスロゴのリニューアルとアプリデザインのリニューアルを行いました。

ロゴ

採用されたデザインのコンセプトはこちらでした。

「これからキレイになるための場所に行く、そんな女性たちに前向きな予感を与えるデザイン」

KIREIPASS Visual Identity

デザインムードボード

窓やガラスをモチーフにしたロゴマークは透明感があり、光のさしこむ明るい未来の象徴です。カラーはライトなブルー、グリーンでクリニックの清潔感があるパレットです。細い線にはゴールドを用い、上質な大人の女性らしいカラーリングを意識しました。マークにはキレイパスのKとPが隠れています。

「前向きな予感を与える」という言葉は「自分がキレイになれるんじゃないかと思わせてくれる」という価値のステートメントがあってこそ、出てきた表現だったように思います。

またワークの中で出てきたキーワードの「クリニック」「信頼」「爽快」「前向き」「イケてる」「気が利いている」「チャレンジしたい」「変われる」なども、デザインのムードボードを作るときにとても参考になりました。

ワーク2:ブランドパーソナリティ

ブランドパーソナリティ

どんなワークだったか

このワークは、「サービス・ブランドがもし人だとしたら、どんな人だろう?」という問いに対して、ブランドの思考性や行動、振る舞い、持ち味などについて話し合います。それにより、ブランドが発信するすべての要素が統一された一貫したトーンになることを目指します。

このワークの特徴は、クライアントはデザインを作るわけではないけれど、実は参加者全員がデザイナーとかなり近い感覚で考えを発表するところです。

普段デザイナーが行なっているトーン&マナー(以下、トンマナ)のパターン提案では、トンマナを人にたとえて要素を紹介することで、誰にでもわかるように伝え方を工夫することがあります。たとえば「このデザインは指揮官のようなパーソナリティを持っていて、ユーザーに提案するようなコミュニケーションをとり、頼もしい印象を与えます。ブルーを基調としたカラーパレットは、信頼・先進性といったイメージを与えます」という具合です。

このワークではそういった人格のイメージを「性別」「性質」「職業」「色」などの項目に分けて、メンバー全員が投票し、その理由の発表を行います。全員の意見がまったく同じにはなりにくく、参加メンバーがそれぞれの立場からサービスをどのように捉えているかを知ることができます。

また、感覚的で楽しいワークなので、和やかな雰囲気で意見交換ができることもこのワークの特徴です。

ワークから何が見えたか

このワークでは票の多い項目が一目瞭然になることで、チームのイメージが重なるポイントがわかります。また、発表者の話を聞いてメンバーが賛同すれば優先度はさらに上がり、デザイン的な世界観の決定に大きく影響します。

デザイナーがこのワークを通して発見できることは、カラーパレット・コピーワーク・デザイン的な装飾などの方向性です。それらをまとめると、トンマナと呼ばれるサービスの世界観の枠組みのようなものが完成します。

どうデザインしたか

先ほどのキレイパスの案件では「ブランドパーソナリティ」のワークを経て、こんなパーソナリティを作りました。

「美容家のように幅広い専門性や高い知識を持ち、
同じ目標に向かって向上心をもって、専門的に先導し、
インストラクターのように情報を与えてくれる、
おしゃれで洗練されている女性的なパーソナリティを持った、
共に歩んでくれるパートナー」

KIREIPASS brand guidelines

さきほど紹介した、最終的に採用されたデザインはブランドパーソナリティに基づく3つのデザインの方向性の中から選ばれたものです。その3つはこちらです。

A.自立した大人のための、自分らしい女性の美しさ。周りからどう思われるかよりも、理想の自分を実現していくことを叶えるキレイパス。

ムードボードA

B.「私らしいキレイ」に出会える。私のための美しさ、人それぞれの美しさがある。

ムードボードB

C.これからキレイになるための場所に行く、そんな女性たちに前向きな予感を与えるデザイン

ムードボードC

3案とも、同じ提供価値に向かって作られたデザインなのですが、「キレイ」の捉え方が違っています。Aは女性でいることを喜べるような、キレイ=自己実現を叶える女性をイメージしたデザインです。Bはキレイは一つではないという、多様性を意識した、アート性の高いデザインです。そしてCはキレイ=クリニックに行くことに期待感を持つような、クリーンで明るいデザインです。

実は、キレイパスのブランド開発ワークショップに参加した男性陣は、女性向けのサービスということで「大人っぽいピンク」のイメージを最初から強く持っていたそうです。ですが、ブランドパーソナリティのワークでは「ホワイト」「ミルクティベージュ」「淡いブルー」なども可能性が見えていました。また、「類似の美容系アプリと差別化したい」「スタイリッシュ」などの希望は、必ずしも「大人っぽいピンク」がマッチするとも限りませんでした。この視点はデザイナーだけではなく、クライアントが決断するときのヒントにもなったのではないかと思っています。

おわりに

ブランド開発プロジェクトはワークショップの拘束時間が長く、集中力もエネルギーも必要ですが、乗り越えればデザイナーもクライアントも、そのあとのコミュニケーション、デザインに対する評価、目線合わせなどのプロセスが格段に早く・深くなること間違いなしです。

作ったブランドイメージは今回紹介したようなVIやアプリのデザイン、広報、パッケージ、WEBサイトなど、様々な媒体で展開が可能です。あらゆるタッチポイントで一貫したブランドの姿を見せられることは顧客の信頼を大いに獲得できると思いますし、そういったデザインに参画できることはデザイナーとしても大変嬉しいことです。

またブランド開発を経たデザインのお仕事があれば、紹介したいと思います。

このプログラムにご興味のある企業のご担当者の方は、ぜひ一度お問い合わせください。

➡︎企業のブランド開発を支援するプログラム『BX Camp』詳細はこちら

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by Saki Iwata

武蔵野美術大学基礎デザイン学科卒業。制作会社にてランディングサイトやコーポレートサイトなどのデザインを経て現在に至る。デザイン担当。デザイン部所属。

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