- 2022.01.05
近年、デジタル庁発足に伴い日本国内でもDX(デジタルトランスフォーメーション)への注目が高まっています。新型コロナウイルス感染拡大がDXを後押しする大きなきっかけとなったことは言うまでもありません。
また、DXを実現するための手段としてのUI/UXへの注目も今まで以上に高まりつつあります。平井卓也デジタル行革担当大臣も、政府のDXを実現する一つの手段としてUI/UXの重要性を強調しています。
本記事では、UXの視点からオーストラリアのデジタル政府の取り組みを紹介します。
前回の記事は以下よりご覧ください:
UI/UXの観点から見る海外行政リサーチ③: 満足度の高いデンマークの市民向けポータルサイトとは
提供しているデジタルサービス
オーストラリアは、2年に一度国連によって発表される「世界電子政府ランキング」で、2014~2018年には2位、2020年は5位にランクインしています。ちなみに、日本は14位にランクインしています。電子政府ランキングは、オンラインサービスや人的資本、通信インフラの3つの個別指標をもとに算出されています。
オーストラリアでは、さまざまなデジタル行政サービスが提供されています。「Digital Identity」は、電子署名を行うサービスです。スマートフォンを利用して、簡単にオンライン上で本人確認を行うことができます。
「Digital Marketplace」は、公共部門の組織がデジタルサービスのための人材や技術を探すためのオンラインプラットフォームです。公共部門の組織が技術や人材を募集するだけでなく、売り手として民間企業も技術やサービスをアピールすることができます。2016年のサービス開始以降、8600を超える案件がDigital Marketplaceを通じて発生しています。
そのほかにも、ワンストップ行政サービスであるmyGovなどもあり、行政サービスのデジタル化が進んでいるといえます。今回は、オーストラリア政府のUXを重視した開発ポリシーやガイドラインを紹介します。
UXを重視したオーストラリア政府の方針
オーストラリア政府のデジタル化は、Digital Transformation Agency(以下DTA)が担っています。DTAは首相府管轄で、ユーザーリサーチャーやデザイナー、情報設計の専門家など民間企業出身のメンバーも多く在籍しています。DTAは、ユーザー視点の開発ポリシーを積極的に取り入れており、国民にも理解できるような形で公開しています。
Service Design Process
「Service Design Process」は、DTAが公開しているサービスデザインの開発プロセスです。UXやユーザー中心主義をキーワードに、素早くサービスを実現できることを重要視していることがわかります。アジャイル型の開発を取り入れ、スタートアップのような機動力を持つことを目指しています。
DTAは、サービス開発のプロセスを「Discovery」、「ALPHA」、「BETA」、「LIVE」の4つに分けています。
- Discovery: ユーザのニーズや問題、政策の意図や技術の制約を理解する
- Alpha: ユーザーリサーチやプロトタイプを用いて、仮説検証を行う。さまざまな視点から多くのアイデアを出すことが重要
- Beta: プロトタイプの絞り込み。ユーザーのフィードバックを受けながら改善を繰り返す
- LIVE: 運営と改善を常に繰り返し、常にアップデートを行う
DTAのウェブサイトでは、それぞれのフェーズでやるべきこと、アドバイスなど開発プロセスに関わることが詳細に書かれています。気になる方は是非、確認してみてください。
Digital Service Standard
「Digital Service Standard」では公共サービスをデザインする際に大切にしたい13の項目を公開しています。Digital Service Standardは、開発プロセスというよりはデジタルサービスを作る際に大切にしたい観点を示しています。
- 1Understand user needs(ユーザーニーズへの理解)
- 2Have a multidisciplinary team(学際的なチーム構成)
- 3Agile and user-centred process(アジャイルやユーザー中心主義を重視したプロセス)
- 4Understand tools and systems(ツールやシステムへの理解)
- 5Make it secure(安全性への理解)
- 6Consistent and responsive design(一貫したレスポンシブなデザイン)
- 7Use open standards and common platforms(オープン標準や共通プラットフォームの利用)
- 8Make source code open(ソースコードの公開)
- 9Make it accessible(アクセサビリティの確保)
- 10Test the service(テストの実施)
- 11Measure performance(効果測定)
- 12Don’t forget the non-digital experience(デジタルでない体験の活用)
- 13Encourage everyone to use the digital service(デジタルサービスの推進)
上記の項目は全て、ユーザーの観点に基づいたもので、いかにオーストラリア政府がUXを大事にしているかがわかります。それぞれの項目についての説明はここでは省きますが、なぜ重要なのか、どのように達成できるのについてもDTAのウェブサイトで詳細に説明されています。
まとめ
今回は、オーストラリア政府のデジタル行政に対する開発プロセスやポリシーを紹介しました。ここまで丁寧に開発プロセスやポリシーを公開している国はあまりないのではないかと思います。また、政府機関だけでなく、ビジネスにおいても役に立つ情報ではないでしょうか。本記事がなにかの参考になればと思います。
引き続き、A.C.O. Journalではさまざまな情報を発信していきますのでお楽しみに!
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by Monstarlab Design Journal
Monstarlab Design Journal 編集部です。 モンスターラボデザインチームのデザインナレッジとカルチャーを発信していきます。
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Overview
×- 社名
- 株式会社A.C.O.
- 設立
- 2000年12月
- 資本金
- 10,000,000円
- 代表者
- 代表取締役 長田 寛司
- 所在地
- 〒150-0012 東京都渋谷区広尾1-1-39恵比寿プライムスクエアタワー6F