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徹底的な対話の先に「らしさ」を削り出す。IGPIが経営活動として取り組んだビジュアル・アイデンティティの刷新

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2023年8月よりグループ全体で新しいビジュアル・アイデンティティの展開を開始し、同時にWebサイトのリニューアルも行った株式会社経営共創基盤(以下、IGPI)。本プロジェクトを担当したモンスターラボの藤川とIGPI 木村様とで、新しいビジュアル・アイデンティティに至る過程を振り返る対談を行いました。

Guest

木村静

IGPI広報・ブランディング担当シニアスタッフ。大手損保会社にて法人営業を経験後、ITベンチャーにて広報機能の立ち上げ〜推進、マーケティング、業務推進等に従事。IGPI参画後は、コーポレート・ブランディングの戦略策定とその推進を主導。企業経営の複雑な課題をコミュニケーションの側面からアプローチし、企業変革手法としてのブランディングのあり方を探索しつづけている。

藤川裕介

株式会社モンスターラボ アートディレクター・デザイナー。大学・専門学校を卒業後、フリーランスデザイナーとしての活動を経て、2019年に株式会社A.C.Oに参画。2023年より株式会社モンスターラボ所属。アートディレクターとしてブランドコンセプトやクリエイティブの提案を主導。様々な企業のコーポレート・ブランディングを手掛けている。

さまざまな問題の根底にあった「共通言語の希薄化」

ーまずは、今回のプロジェクトが立ち上がった背景について教えてください。IGPI様の中では、どのような問題意識があったのでしょうか。

IGPI木村様 「IGPIを真にイケてる会社にトランスフォーメーションする」ことをミッションとして試行錯誤する中で、最も大きな問題として浮かび上がってきたのが「IGPIとは何か」という共通言語が曖昧になっていたことでした。創業から16年間組織が拡大しつづけてきたことで、一人ひとりの思う「IGPIとは何か」にばらつきが出てきていました。また、ずっと「知る人ぞ知る会社」というスタンスでいたこともあって、新しく入ってきたメンバーや外部からは特にそれが見えにくい状況がありました。

この問題を解決し、理想とする「ビジョンが明確で、隅々まで落とし込まれている状態」を実現するため、コミュニケーションのコアとなる部分をきちんと固めようと1年半ほど前に動きはじめました。

まず着手したのは「IGPIとは何か」の言語化です。将来的にデザインに落とし込むことを念頭に置いて、マネジメントメンバーの皆さんにIGPIをどういう会社にしていきたいか聞いたり、社員全員参加のワークショップを行ったりして、認識をすり合わせていきました。

そこで活動を終えることもできましたが、再確認した「経営と経済に新しい時代を切り拓く」というパーパスを実現するためには、同じような志を持った「真の経営人材」を常に惹きつけつづける組織になっていく必要があると考えると、あらゆる場面において「IGPIらしさ」が伝わるビジュアル・アイデンティティと発信できるコーポレートサイトが必要でした。そこが今回のプロジェクトの始まりです。

徹底的に対話し、言葉の認識を細部まですり合わせる

ーいくつかの会社さんとお話しされた上で、今回モンスターラボに依頼をいただいたそうですね。藤川さんはどのようなご提案を行ったのでしょうか。

モンスターラボ藤川 僕とデザイナーの小林の2人で、自分たちなりに「IGPIはこういう会社」という考えをまとめて、提案させていただきました。小林はもともとIGPIグループ会長の冨山 和彦さんの著書を読んでいたのですが、さらにYouTubeなどでIGPI様が発信されているコンテンツも読み込んで、2人で仮説を立ててまとめたものです。僕たちにできる最大限を提案に含めました。

IGPI木村様 お2人にお任せしたいと思ったのは、提案の内容から「IGPIを理解しよう」と真摯に向きあってくれていることが伝わってきたからです。提案を受ける前は「IGPIを理解してもらえるのか」「アウトプットにつながるのか」と不安もあったのですが、提案を聞いて「この2人とならいいアウトプットができるはず」と感じました。

ーお2人の想いが提案から伝わったのですね!プロジェクトがスタートしたあと、まずは何から着手されたのでしょうか。

モンスターラボ藤川 提案の際に発信内容などは読み込んだものの、さらに深く理解するために、まずは情報のインプット・整理を1ヶ月ほどかけて行っています。現在の事業内容や強み、会社のカルチャーに至るまでさまざまなことをお聞きしながら、その関係性を構造化することで、IGPI様が持っている魅力や特徴を徐々に明らかにしていきました。

そのインプットをふまえて、「12のアーキタイプ(※)」を用いてブランド・パーソナリティを定めました。

※12のアーキタイプ:心理学者カール・グスタフ・ユングが提唱。人間に共通する心の動き方のパターンを定めたもので、12の元型で分類されている。

IGPI木村様 「12のアーキタイプ」の中からIGPIらしさとしてご提案いただいたのは「賢者(Sage)」「探求者(Explorer)」「反抗者(Rebel)」の3つ。最終的にそれぞれに「卓越した洞察力と見識を駆使して、果敢な決断を自ら行う」「広い視野と高い視座を以て探索し、発見と開拓を先導する」「常識に縛られない視点で本質に向き合い、粘り強く、変革を進める」という言葉が添えられ、私たちのパーソナリティを定義いただきました。

ーデザインに落とし込む前に、まずは言葉で詳細な定義を行ったのですね。

モンスターラボ藤川 言葉はデザインの一部であり、切り分けられるものではありません。また日本語は抽象度が高いため、対話を重ねて認識をすり合わせていくことが重要です。単語レベルで一つひとつピントを合わせ、そこにビジュアルイメージもセットですり合わせていくことで、お互いの認識を合わせていきました。

「とりあえずつくってください」と提案を求められた場合は、この作業を対話なしで一人で行うわけですが、やはりそれでは芯を捉えきれず、納得感が薄いものになってしまうことも。対話を重ね、双方の認識が揃った状態で具体的な形を削り出していくことが重要なんです。

IGPI木村様 ブランド・パーソナリティは外に発信するようなものではないので、意味があるのか疑問に思われる方もいるかもしれませんが、私たちはここに一番時間をかけました。実際、定義された言葉は、経営者やアドバイザリーなどさまざまな顔を持ち、厳しさも優しさも持ち合わせた私たちIGPIらしさを感じる非常に印象的なもので、だからこそ最終的なアウトプットを受け取ったときにも納得感があったのだと思います。

お2人とも常に私たちの意見に耳を傾けてくださるので、気を使うことなく違和感があれば伝えるようにしていました。IGPIの中で共通見解がない場面もあり、ヒアリング自体がすり合わせるきっかけにもなっていたと思います。

モンスターラボ藤川 「言いにくいな」「めんどうかな」と思っても、違和感を放置することは最終アウトプットに大きく響いてしまいます。だから僕たちもずっと「気づいたことがあればなんでも言ってください」とお伝えしていましたし、僕たち自身も腹落ちしていないことがあれば正直に伝えるようにしていました。IGPI様が常に「一緒につくっていこう」というスタンスでいてくださったのは、とてもありがたかったですね。

新しいビジュアル・アイデンティティににじみ出る、創業以来の想い

ーブランド・パーソナリティが固まり、ビジュアル・アイデンティティに落とし込んでいくプロセスについても教えてください。

モンスターラボ藤川 ビジュアル・アイデンティティとして、「Form & Formless」というブランド・コアの定義とロゴのリファイン、そして「IGPI Galaxy」と呼んでいるグラフィックエレメントをご提案しました。

今回のプロジェクトは、IGPI様がこれまでの延長線上でさらに進化していくためのもの。社員の皆様ももともとのロゴに愛着を持っていましたし、積み上げてきたものをあらためて今のタイミングで形にするとどうなるか、ということで、ロゴはリファインという形になりました。

デザインする際に意識したのは、最先端という見え方ではなく、まるで心身を削って生みだされるような、どこか手触り感のある、職人がつくった陶芸作品のようなイメージです。もともとのロゴのデザインや配色をベースとしつつ、シンプルで力強く、それでいて人それぞれに解釈の余地があるようなものを目指しました。

IGPIの皆様と会話を重ねる中で強く感じたのは、「変わらない信念を持ちつつ、見え方ややり方を変えることにも躊躇はない」とでもいうような、相反して見える2つの性質を常に持っているということです。IGPI Galaxyはもともとのロゴの形状から削り出した形をベースに展開していったのですが、そこには「自分たちが持つものから削り出しながら、常に新しくつくりかえていく」というIGPI様の姿を投影しています。

ー言葉からデザインへ落とし込んでいく過程について、木村様はどのように感じましたか。

IGPI木村様 今回のプロジェクトを経て、「デザインって思っていたよりもロジカルなものなんだ」と感じました。もちろんIGPI Galaxyへとクリエイティブジャンプする瞬間はありますが、アウトプットもちゃんとロジカルに説明できるんだなと。

モンスターラボ藤川 「なぜこのモチーフか」「なぜこの色か」など、デザインはロジカルに説明できる必要があります。ただ僕の理想としては、何も言わずに見せた段階で「いいな」と感じてもらいたい。説明はできても「説得」を必要とするものではないので、それが必要な場合は何かが足りていないんだと考えるようにしています。

IGPI木村様 実は最初のデザイン案は、コンセプトはいいなと思ったものの、ぱっと見て「何か違う」と感じていたんです。ですが、このIGPI Galaxyは直感的に「いい!」と感じました。あとで日本をルーツに感じるようなグラフィックという狙いをお聞きしたのですが、初見で「西洋的すぎなくてIGPIらしいな」と感じていたこともあり、直感的な印象も大切だと実感しました。

モンスターラボ藤川 初案に対してIGPI様から率直なフィードバックをいただけたからこそ、頭を切り替えて、ちゃんと自信を持って「好き」と思えるデザインになっているかどうかに立ち返ることができたように思います。

IGPI Galaxyを提案した際の提案資料の一部

ーフィードバックの際、IGPI様ではどのように意思決定や判断をしていたのでしょうか。

IGPI木村様 常に意識していたのは「IGPIを本気で好きになってくれる100人をつくる」ということです。万人を意識した無難なものではなく、IGPIらしさを強く感じるような、多少良い意味でひっかかりのあるものを選ぶことを大切にしました。IGPIのビジュアル・アイデンティティを小学生が見てもピンとこないかもしれませんが、会社のメンバーやIGPIと実際に関わっている方は「IGPIらしい」「私は好き」と言えるものになっているのではないかと思います。

決定する過程では、創業メンバーがもともとのロゴについて議論している当時の資料なども掘り返して確認しました。ロゴに込められた意味や制作の裏話も知ることができ、このプロジェクトが16年間埋もれていたIGPI創業以来の想いを再認識する機会にもなりました。

モンスターラボ藤川 後でもともとのロゴの成り立ちや意味をお聞きしたら、今回定めたブランド・コアとぴったり合っていたのには驚きましたね。会社として最も大切な部分は16年間変わっていなかったことがわかり、非常に印象的な瞬間でした。

(左)以前の縦型ロゴ(右)新しい縦型ロゴ

ビジュアル・アイデンティティは、企業活動を支える軸となる

ー新しいビジュアル・アイデンティティやWebサイトのデザインに切り替わって3か月ほどが経ちました。どのような変化がありましたか。

IGPI木村様 特に強く感じているのは、IGPI社内の変化です。新しいデザインの名刺やスライドフォーマット等を手にした社員から「いいね」という声をたくさん頂きました。好きだと思える組織の中にいるという実感を持てることで、自己肯定感が高まったという声も聞いています。広く展開されることでデザインが繰り返し作用し、そこに込めた意図が伝わっていることを実感しますし、組織としての一体感も生まれやすくなりました。

モンスターラボ藤川 会社の未来について熱く語り合える機会って、実はあまり多くはありません。ですが、デザインされたものに対して感想を言いあうことから、「うちってこういう会社なのかも」と会話が生まれたりします。「どういう会社になっていきたいか」など本質に迫る会話のきっかけをつくることも、デザインにできることなのかもしれません。

実際にVIが活用されているツール

ーありがとうございます。最後に、プロジェクトを経ての気づきや発見、そして今後の展望について教えてください。

IGPI木村様 今回のプロジェクトを進める中で、「IGPIらしさ」や「IGPIはどういう存在でありたいか」について社内で何度も議論しました。今後はそれらを体現していくために、このデザインを通じてコミュニケーションを重ね、数年後に改めて見直したときに「この通りIGPI Galaxyは広がり続けているね」と言えるような組織にしていきたいです。

また今後はより一層対外的な発信も強化していきたいと考えています。パラダイムシフトを起こすには、自分たちの活動を通じて社会に発信していくことが必要です。発信力を持ちながらさまざまな活動を通じて社会に貢献することで、「時代が変わる分岐点にはいつもIGPIがいる」と言われるような存在を目指したいです。

そういった企業活動を行うにあたり、軸になるのがビジュアル・アイデンティティです。常に変化する社会への対応を求められる中で、社員ひとり一人がその企業らしい意思決定を重ねていかなければ、社会との約束を果たすことはできません。そのためには軸となるものが必要であり、ビジュアル・アイデンティティをつくるプロセスは非常に重要な経営活動だと感じました。長く企業活動を続けていきたいと願うならば、やるべきことだと思います。

モンスターラボ藤川 IGPI様に良い形でコーポレート・ブランディングの過程を体験いただけたことは、とても嬉しく思います。企業変革においては、成し遂げたいゴールや組織文化について全員が共通認識を持てるまで浸透させ、ブレない軸をつくることが重要です。今後IGPI様が企業の変革のご支援をされる際にもその価値を理解した上で取り組んでいただけるでしょうし、今回のプロジェクトを通じて、その重要度をさらに感じていただけたのではないかと思います。

IGPI様のサイトでも今回のビジュアル・アイデンティティの刷新についての記事を公開しております。あわせてご覧ください。

IGPI様での対談記事

デザインの力で組織を変革する ~IGPIグループのブランディングプロジェクト~

制作したIGPI様のWebサイト

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