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UXデザイナーが実践!子供へのユーザーインタビューは発達段階にあわせた設計がカギ

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大人と子供の違いを踏まえて、子供にもわかりやすいインタビューを設計しよう

こんにちは、みなさんの身近に小さなお子様はいますか?どんなことができて、どうコミュニケーションをすればいいのかイメージできるでしょうか。

子供はまだ発達の途中であるため、理解力や周囲との関係が私たちとは大きく異なります。そのためインタビューやユーザー検証で話を聞くときも大人に向けたものとは別の工夫が必要になります。

そこで、今回は私が実際に小学校低学年の子供を対象にユーザー検証を行った際の気づきと対策、そして対策の結果どのような反応が得られたかを紹介します。みなさんが子供に対してインタビューやユーザー検証を設計する際の参考にしていただけると幸いです。

子供と大人の違い

冒頭でも述べたように、子供は発達の途中にあり、大人にとって当たり前のこともまだ難しい場合があります。子供から話を聞く際はその違いを理解しておく必要があります。

今回私が子供の発達段階を理解するときに参考にしたのは、ピアジェというスイスの発達心理学者・児童心理学者が掲げる認知発達理論でした。ピアジェによると人の認知発達は大きく4つの段階に分かれます。

今回のユーザー検証で話を聞いたのは小学校低学年の子供たちだったので、ピアジェの発達段階にあてはめると前操作期に位置します。この年齢の特徴としては「抽象化ができない」、「視覚情報が強く見えないと「無い」と思う」、「具体的に言われないとわからない」などがあります。

今回のプロジェクトでは既存の資料・Webサイトなどでの調査に加え、子供への発達や教育について研究をしている専門家の方へのヒアリングも実施しました。その中でユーザー検証を設計する際に私が特に重要だと思ったことが以下です。

  • 子供は論理的思考能力が未発達な状態。「もし〜だったら」という話が理解できない
  • 視覚情報が強く目に見えていないと「ない」と思ってしまう傾向にある

普段、大人を対象にしたユーザー検証では仮想の利用状況を設定したうえでプロトタイプの操作をしてもらうのですが、「もし〜だったら」という話が理解できない子供が対象の場合は検証の設計の仕方を変える必要があります。また目に見えないと「ない」と思ってしまうのであれば、口頭のみの説明も避けた方が良さそうです。

子供の認知発達に合わせたインタビュー設計で工夫した点

そこで、今回は以下の2点に気をつけてユーザー検証の設計をしました。

1. なるべく利用シーンはリアルに再現する

「もし〜だったら」と特定のシーンを想像しながらプロトタイプを操作してもらうことは避け、小物などを用いてできるだけ実際の利用状況に近くなるように事前準備を行いました。また説明する際も、内容を分解し1つずつ子供にもわかりやすいようにしました。

2. 説明は絵や文字とセットで

子供は視覚情報が強く、見えないと「ない」と思う傾向があるということから、できるだけ絵や文字を一緒に見ながら検証を進めるようにしました。絵や文字の用意が難しい場合は子供がよく使うサービスやゲームを把握しておいて子供でも想像しやすい具体例を出せるようにしました。

シミュレーションで気づいた子供から話を聞くことの難しさと対策

ただ、いくら事前に調べターゲットに合わせて設計しても本番に近い環境で確かめないと、わかりやすいものになっているか、聞きたい内容を引き出せるかはわかりません。そこで、事前に社内でターゲットに近い条件の方を対象にシミュレーションを実施しました。

シミュレーションを通して、何点か子供から話を聞くために対策が必要だなという箇所が出てきました。

今回は専門家の方にも話を聞くことができる状態だったので、シミュレーションの結果を専門家の方にもシェアし対策を一緒に考えていただきました。以下、困った点と対策、結果を紹介します。

子供が喋ってくれないときは大人よりも長めに返事を待つ

シミュレーションをやってまず最初に困ったことは、子供が質問に対して黙ってしまうことでした。

シミュレーションのときはなぜ黙ってしまうのか、何を考えているのかがわからず焦りましたが、専門家の方からは「子供は大人よりも考えるのに時間がかかるのですぐに答えが来なくても少し長めに待ってみてはどうか」とアドバイスをいただきました。

そこでインタビュー本番では大人にインタビューするときよりも長めに待つようにしました。すると、子供が自分の考えを説明してくれたり、わからないときは「わからない」と答えてくれるようになりました。

何人かにインタビューした体感としては、大人の3倍ぐらい待ってちょうどいいぐらいかなと思います。

「考えるのに時間がかかってもいいので子供から話を聞きたい」と保護者に伝える

子供が喋らないときに困ったことの2つめは、子供が喋らないのを見て保護者が代わりに答えてしまうことでした。

専門家の方からのアドバイスもあり、本番では保護者の方に「考えるのに時間がかかってもいい、子供がどう答えるかを知りたい」と会の冒頭で伝えるようにしました。すると保護者の方も子供が答えるまで横で見守ってくれるようになりました。

最初に「待ちますよ」と伝えることは意味のある回答をさせなくてはという保護者の方の焦りを解消することにもつながると思います。

子供の反応は子供自身に説明してもらいながら表情や体の動きとセットで確かめる

3つめに困ったのが、子供が何にでも「うん」といっているように見えたことでした。

専門家の方からはそういうときは「これはどんなものだと思う?」、「自分だったらどうする?」と質問して子供本人に想像をしてもらいながら反応を見るとよいのではというアドバイスをいただきました。

やってみた結果、理解しているかどうかがわかりやすくなっただけでなく子供自身の理解も深まり、その後の内容についても聞きやすくなったように感じました。時間がかかるので全ての項目に対して同じように聞くことはできませんが、特に反応を見たい箇所については有効な方法ではないでしょうか。

集中力が切れたときに動き回ってしまわないようにおもちゃや絵本、お菓子を用意する

他に困ったことといえば、検証の中盤ぐらいから子供の集中力が切れてしまうことでした。保護者の方に話を聞いている間に子供が席から離れて部屋の中の備品を触ったり他の人に話しかけたりするため、保護者の方の集中力も切れてしまいます。

そこで対策としておもちゃや絵本、お菓子を用意することにしました。コロナの時期なのでおもちゃや絵本は保護者の方に持参していただけるよう事前にお願いし、お菓子を出す際も、会場に入る前に事前に全員の手消毒をすることと個別包装のお菓子を選ぶことを徹底しました。

これによって子供が席を立つことを防ぐことができた上に、何もない状態よりも会話が生まれ、子供たちもリラックスできるようになりました。

ただ、人によっては子供にお菓子を食べさせたくないという方もいるので、インタビューの最初に保護者の方に確認することをおすすめします。

まとめ

以上、子供向けに話を聞いてみてわかったこと、実際にした工夫を紹介しました。今回やってみて、自分の考えを人に伝えることがまだ上手にできない子供が相手でも、環境を整えて子供自身が考える時間を作ることができれば話を聞くこともできるというのは大きな発見でした。

子供は年齢ごとにどんどん成長していくので、年齢が変われば対策すべきことも変わります。そのため事前の調査とシミュレーションを行って対策すべき点を把握しておくことが重要です。

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