- 2019.12.23
こんにちは、Design Journal編集部です。私たちA.C.O.は、デザインコンサルティングファームとしてさまざまな会社やサービスのブランディングやリブランディングをお手伝いしてきました。 ですがいざ自社のブランディングをするとなると、想像以上に難しいものです。この連載記事では私たちA.C.O.の自社ブランディングの現場を少しずつお伝えしたいと思います。第一回はバリュー(行動指針)策定編です。
背景 – なぜ会社には行動指針が必要なのか?
私たちA.C.O.は2019年、社員数が30人を超え、さらなる規模拡大を目指しています。そのなかで、いわゆる「30人の壁」と言われる課題に直面するシーンが増えてきました。具体的には採用・営業力の強化、採用・人事における評価軸の明文化、社員間の経営方針への理解度の差などが課題として挙げられます。
そういった組織課題に対処していくとき、そもそも何が課題なのか? 課題に対応する施策の妥当性をどのように評価するのか? といった判断基準が明文化されていないことがボトルネックになってきます。そのときに判断軸になるのがいわゆるミッション・ビジョン・バリュー(MVV)です。私たちは今回、「バリュー(行動指針)」をA.C.O.のブランディングプロジェクトの一環として捉え、その策定に取り掛かることにしました。
A.C.O.の自社ブランディングチームは現在デザイナーを中心とした5人のメンバーで進めています。そのなかでこのバリュー策定プロジェクトは今年2019年の5月に始まり、10月末にFIXさせました。半年の期間の中で、使えるのは毎週1時間の定例会議+クライアントワークの隙間の作業時間という、かなり限られた時間で進めてきました。
最終的に完成したバリューは11月の社内イベントで発表、国内最大規模のデザインカンファレンス「Designship」(2019/11/23, 24)で社外へもお披露目しました。
プロセス
バリューの策定プロセスはクライアントワークで培ったブランディングのフレームワークをベースにして進めました。まずは社員、ボードメンバー、クライアント、社外パートナーといったステークホルダーに対して、A.C.O.のブランドイメージのアンケート調査を行いました。アンケート内容は立場に応じて変えています。また、今回はA.C.O.のポジティブな要素を集めるアンケートのため、現状への不満や改善すべき点などのネガティブな回答ばかりが集まらないよう、質問内容も工夫して作成しました。


スタッフ向けのアンケートと回答の一部
次に社内では各部署から社員を集めてワークショップ形式でアイデア出しを行いました。定型的なアンケートだけでは拾い上げられないリアルな声を集めることで、ブランドイメージを固めていきます。

作成中のキーワード

ワークショップの様子
そのあとは、本プロジェクトメンバーで情報を整理していきました。アンケートをすべてポストイットに書き出して分類。さらにそれらを一言で表現する形に落とし込んでいきました。
完成したバリューは11月頭の社内イベントでお披露目。その後、Slackで6つのバリューを詳しく紹介していきました。

Slackでの紹介

社内イベントA.C.O. JAMの様子
ちなみに通常はこのプロセスを数回繰り返し、ステークホルダー間で認識の齟齬がないことを確認しながら最終的なアウトプットを固めるのが理想とされています。ですが今回ははじめからステークホルダー間で方向性に大きなズレはないことが認識できていたため、かなり期間とプロセスを短縮できました。
バリュー策定において苦労したところ
A.C.O.はクライアントワークを主軸とする会社のため、決まったプロダクトがありません。クライアントごとに当然カルチャーはまちまちで業務内容も変わるため、メンバーにはプロジェクトごとに考え方をあわせていく柔軟性が求められます。そのため会社として強い方向性を打ち出すメッセージが出しづらいことが課題でした。実際、クライアントワークを中心とするデザイン会社やコンサルティング会社で具体的なメッセージを強く打ち出している例は国内外ともにかなり少ない印象です。
もちろんクライアントワークの会社だからといって強いメッセージを発信できないわけではありませんが、具体性が強すぎると仕事の幅を狭めてしまいますし、逆に抽象度が高すぎると独自性がなくあまり意味のないメッセージになってしまいます。
また、A.C.O.の社風としても一つの強い方向性を打ち出すことは違うと感じていました。自由な社風で、個々人が別々の趣味嗜好を持っている、だけどチームとして一体感がある、そのイメージを大切にしたいというのがメンバー全員の共通見解でした。
また、今の会社の良さと、まだ実現できていないけど大事にしたいことのバランスも難しいポイントでした。私たちはまだまだ小さい会社で、やりたいことのほんの一部しか実現できていません。そのなかで「今の良さ」だけを形にするのではなく、さらに次のステップを目指すための基礎をつくりたいと考えていました。とはいえ「やりたいけどできていないこと」ばかりのバリューでは、社内浸透しない上辺だけのメッセージになりかねません。
完成したバリューとそのポイント
そんなこんなで悩み抜き、ついにA.C.O. のバリューが完成しました。






このバリューのいちばん重要なポイントは、社員を中心とするステークホルダーの意見をベースに、ボトムアップでつくったところにあります。これらはA.C.O.が元々大切にしていたことがベースにあり、本プロジェクトで全く新しくつくりだした考え方は一つもありません。
もう一つのポイントは、英語と日本語で伝え方を変えているところです。英語は少ない単語で明確なメッセージを打ち出すことで、覚えやすさ、わかりやすさを重視しました。一方で日本語はニュアンスまで伝わるよう、言い回しに徹底的にこだわっています。「〜せよ」「〜するな」といった言い回しはせず、「〜しよう」という提案の形を基本として、自由な雰囲気が伝わるようにしました。また「行動」というよりは「姿勢」を重視しているのもポイントです。ベースに共通の姿勢さえ持っていれば、それぞれのメンバーが自分で考え、立場やシーンに応じて自分が正しいと思う行動をとれると考えているからです。
バリューのためにやったことと、これからやりたいこと
Designshipにシルバースポンサーとして参加し、企業ブースを出展するにあたって、いくつかのグッズを制作しました。一番人気があったのはバリューを表紙にプリントした6つのノート。こちらはブースに立ち寄っていただいた方全員に無料配布しました。他にも来場者全員に配布されるチラシ、会社案内リーフレット、1分のCM動画を作成し、それら全てにバリューの要素を取り入れています。

ノート

Designshipのブースの様子

フライヤー

リーフレット
今後は社内におけるバリューの理解と認識を深めるために、社内インタビューの動画や、バリューを表現するポスターなどを作成していく予定です。また、会社の経営方針のような上位レイヤーのメッセージとの一貫性を強めることや、OKRや社内制度、採用方針にもバリューを反映させていく必要があると考えています。
さいごに
今回、デザインファームの自社ブランディングレポートとして、バリュー(行動指針)策定編をお届けしました。ですがよく言われるように、ブランディングの本質は表面的なメッセージを整えることやグッズを作ることではありません。いちばん大切なのはそれらを支える仕組みとメンバーの習慣そのもの。A.C.O.のブランディングはまだスタート地点に立ったばかりです。これからもデザインの会社としてより高い価値を提供できるよう、ブランディングに取り組んでいきたいと思います。
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by Monstarlab Design Journal
Monstarlab Design Journal 編集部です。 モンスターラボデザインチームのデザインナレッジとカルチャーを発信していきます。
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