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デザインリサーチを分解してみる

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デザイン提案に向けた競合リサーチを分解して考える

こんにちは、デザイナーの小林です。最終的なデザインとしてアウトプットされるまで、皆さんはどのくらいの時間をリサーチに使っていますか?今回の記事では、グローバル企業のコーポレートサイトリニューアルのための提案という設定で、リサーチの手法を考えてみたいと思います。

私は普段から企業のコーポレートサイト制作に携わることが多く、競合リサーチに多くの時間を割いています。その中で、リサーチをする際に必要だと感じた視点がありました。

2つの視点がデザインリサーチを支える

リサーチはデザイン提案を決定づける大きな武器です。その際、見当違いなリサーチは避けたいですよね。

私自身、次の2つの視点がごっそり抜けていたためにリサーチ期間を無駄な時間にしてしまったことがあります。

それは、「クライアント企業にとって、どのように価値のある内容なのか?」、「応用を効かせて、提案の中で生かせるのか?」という2つの考え方です。

この2つを頭に入れながらデザインリサーチについて考えていきたいと思います。競合リサーチは、まずクライアント企業を徹底的にリサーチするところがスタート地点となります。

徹底的なリサーチとは、基本的なサイト構造や企業が保有する情報量に加えてその企業の特質や歴史、その後のビジョンなどを包括的に理解することが非常に重要なポイントとなります。そうすることで、どのようなリサーチが結果的にクライアント企業における価値となるのかを仮定することができるようになるからです。

時と場合によって絞られるポイントは違いますが、今回は、情報設計リサーチ・UIデザインリサーチ・コンテンツリサーチの3つに分類して考えてみました。

具体例を見ていきましょう。

1.情報設計リサーチ

企業によってコーポレートサイトに載せる情報はさまざまです。最近だと、ビジネスの透明性やブランド価値を伝えるために、サステナビリティ活動や企業のVission・Mission・Valueに関する情報を積極的に発信している企業も増えてきています。

そこでまずは、各企業が伝えたいメッセージをどのように発信しているのか?に注目して情報設計リサーチを行なっていきます。

ユニリーバのコーポレートサイトTOPページを見てみましょう。

Unilever

コピーライティングと背景画像が、より企業からのメッセージを強調させている

ユニリーバは「企業のブランド価値は、社会のためにある」というメッセージを常に発信しており、サステイナブルな社会を目指すためにさまざまな取り組みをしている企業です。

そのメッセージをサイトTOPでは《PURPOSE》という言葉に置き換え、ブランド価値を書いた《BRANDS》や採用へ繋がる《WITH》といったコンテンツの隣に配置しています。このように、3つの情報群を合わせて発信することで、企業の価値を伝えています。

2.UIリサーチ

情報設計の次は、ユーザーインターフェースのデザインリサーチです。このリサーチでは、ユーザーの使いやすさを考えたUIデザインを観察するだけでなく、情報の優先順位や内容量によってどのような表現が適しているのか?に着目することが重要です。そうすることによって実際のデザイン作業に大きく役立てることができます。

AXAのコーポレートサイトのグローバルナビゲーションを見てみましょう。

AXA

サブスクリプションへ呼び込むためのCTAも、全体のバランスを考え強調しすぎないようにデザインされている

《Spotlight》メニューでは、フォントのサイズや濃度、種類を上手く使い分け、左から右へ3つのセクションに分けることで、乱雑になりがちな情報が見やすくデザインされています。

もう一つ事例を紹介します。エネルギー事業を行うBPでは《In this section》と《Our Strategy》で、伝える情報の内容によってボタンリンクと罫線で区切ったテキストリンクとでUIを分けています。同時に、環境に関する情報を柔らかくイラストで表現している点も参考になります。

BP

Sectionが大きな塊を3つ持っていること、Our Strategyが複数の細かいコンテンツを持っていることが一目でわかる

3.コンテンツリサーチ

最後はコンテンツリサーチです。

近年、メッセージ性の高いコピーライティングやオウンドメディアに加え、VisionやMissionに沿ったテーマで特設コンテンツを制作する企業が増えてきました。

例えば、保険会社であるAXAのアメリカ地域向けマーケティングサイト上には、《YOUR GOALS》というユニークなナビゲーション項目があります。サービスを提供する企業として、顧客のニーズを分解し、ストーリーとして伝えることが重要と考えてのコンテンツでしょう。

AXA_US

このように、地域別マーケティングサイトではコンテンツがその地域によって最適化されていることが多い

この事例のように、各企業のステークホルダーに対して、どのようなコミュニケーションを取ろうとしているのか、具体的にどのようなコンテンツを作り出したいのかを見つけることが重要になってきます。

このインプットを重点的に行うことで、サイトコンセプトなどのアイデア出しが活発になり、より良い企画提案に繋がります。

デザインリサーチは、繰り返すことでデザイン力の向上にも繋がる。

ここにあげた3つの視点は、より良いデザイン提案に繋がるのはもちろんのこと、基礎デザイン力を格段にあげてくれます。

私自身、情報設計の視点が加わったことで、最適なデザインレイアウトをサイト全体のゴールと照らし合せながら考える癖がついてきました。この癖がつくと、自分の頭の中にあるUIデザインのレパートリーからよりロジカルな選択が出来るようになります。

さらに、リサーチの時点で意識したポイントを、提案前の社内ブレスト時に、情報設計やコンテンツ制作チームと共有できるようにもなりました。

このように、分野を横断的してリサーチすることはチーム・個人にとって、有益な情報を生み出します。

コーポレートサイトに限らず、さまざまな分野でのリサーチ方法が日々アップデートされています。ACOでは、これからも価値のあるリサーチ方法を探っていきますので、次回のリサーチ記事も機会があればご覧になってみてください。

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by Takuya Kobayashi

法政大学キャリアデザイン学部国際社会学エスノグラフィー専攻。東京デザインプレックス研究所卒業。デザイン担当。デザイン部所属。

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