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イベントレポート

【A.C.O. × Goodpatch】Designer’s Meetup デザイナーの専門性とキャリアについて考えよう

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あらゆる企業がデジタル領域への投資を求められ、デザイナーにとっては追い風が吹く現在。デザイナーの仕事はますます広がり、専門性も拡張し続けています。

2021年7月13日にDesigner’s Meetupと称して行われたウェビナーでは、A.C.O.のUIデザイナー/デザインマネージャー 石井宏樹と、株式会社Goodpatch マネージャー/リードデザイナー 山木拓実さんが登壇し、「デザイナーの専門性とキャリアについて」をテーマにお話しいただきました。その模様をウェビナーレポートとしてお届けします。

登壇者

株式会社A.C.O. UIデザイナー/デザインマネージャー 石井 宏樹
株式会社Goodpatch マネージャー/リードデザイナー 山木 拓実さま

A.C.O.で働くデザイナーのキャリア:石井さんの場合

石井:A.C.O.はUI/UXデザインやブランド開発を中心に行っているデザインコンサルティングファームです。今回は、A.C.O.で働くデザイナーのキャリアについてご紹介します。

まずは僕自身のキャリアから。大学時代は建築学科で、ウィーンの近代建築などを研究していました。大学院を卒業して建築設計事務所に入り、1年ほど住宅の設計などを行ったのち、A.C.O.に転職しました。はじめの頃はコーポレートサイトなど主にWEBデザイナーとしての業務が中心でしたが、会社全体でUIデザインの仕事が増えていく中でUIデザイナーに移行し、今年マネージャーになりました。

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未経験からの転職ですが、僕が入社前からできたのは以下のような内容です。

  • デザイン全般の基礎スキル
  • Photoshopなどのデザインツールの操作
  • ライティング・編集
  • プレゼンや提案のスキル

逆にWEBデザイン、UIデザイン、プログラミングについては独学で1カ月ほど勉強した程度で、その頃はほとんどできませんでした。よく「未経験からどうやってUIデザイナーやWEBデザイナーになったの?」と聞かれるのですが、入社後に勉強したというのが実態です。

現在の業務としては、クライアントワークが6割、マネジメント業務が2割、その他で残りの2割といった割合。

クライアントワークでは、UIデザインに関することはほぼ全てやっています。お問い合わせを頂いたらヒアリングから入っていって、デザインに関するディレクション、スケジュール管理やメンバーの分担決め、UIデザインの設計やワイヤーフレームをひいたり、表層的なスタイリング、トンマナ決めもやっています。一方、アートディレクションやロゴデザインなどのビジュアル中心のもの、ワークショップのファシリテーションやユーザーリサーチなどの本格的なUXデザイン部分はあまりやっていません。そのあたりはアートディレクターやUXデザイナーとチームを組むことが多いですね。

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マネージャーとしては8人のデザイナーを見ており、2週間に1回の1on1の実施、プロジェクトへのアサインの調整、人事評価などが主な業務になります。

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僕自身はいろいろなことをやっているタイプですが、キャリアとしてはUIデザインとマネジメントが中心です。マネジメントについてはチームを見るだけではなく、会社全体でナレッジを蓄積したり業務プロセスを改善したりと、組織デザインに近いことをやっていきたいと思っています。

A.C.O.で働くデザイナーのキャリア:川北さん、小林さん、沖山さんの場合

石井:
ではA.C.O.で働くデザイナーのキャリアについて、僕以外の3人の事例をご紹介します。

1)川北奈津さん

2008年にA.C.O.に入社し、現在は執行役員兼マネージャー / UXデザイナーとして働いています。2017年にUXデザインと情報設計を強化する専門チーム「UX / IA部」を立ち上げ、クライアントワークではUXデザインのリードとしてプロジェクトを引っ張っています。

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川北さんは学生時代にIAMAS(情報科学芸術大学院大学)で制作活動をしていて、その後広告制作会社を経てA.C.O.に入社しました。転機になったのは、2015年のエスノグラフィとの出会い。そこからUX / IA部を立ち上げ、無事成長させて今に至るといったキャリアを積んでいます。

2)小林拓也さん

僕のデザインチームの部下です。肩書はUIデザイナーですが、ブランド開発案件を手掛けたり、ワークショップのファシリテーションをしたりと、UXデザイナーとしても活躍しています。英語も得意で、A.C.O.の親会社であるモンスターラボとのグローバルプロジェクトにも参加しています。その他、社内イベントA.C.O.JAMやA.C.O. Designers Podcastなど会社のカルチャーに繋がるプロジェクトもやってくれています。

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小林さんは学生時代は社会学を学んでいて、デザイン系の学校の出身ではありません。アメリカでインターンをした経験と、ビジュアルデザインスタジオWOWでアシスタントプロデューサーとして働いた経験からデザインに興味を持つようになり、A.C.O.に入社して現在活躍しています。

3)沖山直子さん

僕の上司にあたる方です。2008年の入社以来、取締役兼デザイン部マネージャー / アートディレクターとして会社を引っ張っている存在です。

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沖山さんは小学生の頃からデザインが大好きで、仕事にしたいと考えていたそうです。桑沢デザイン研究所でタイポグラフィを学び、グラフィックデザインの会社で修行したのちにA.C.O.に入社。グラフィックデザイン中心からWEBやデジタルに移行して活躍している方って、実は珍しいのではないでしょうか。

A.C.O.のプロジェクト事例紹介:株式会社ほぼ日 新サービス「ほぼ日の學校」

具体的な事例をひとつ紹介します。2021年の6月末にリリースされたばかりの、ほぼ日さんと一緒に作った新サービス「ほぼ日の學校」です。

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「人に会おう。話を聞こう。」をコンセプトに、いろいろな人の話を動画と文字で楽しめるサービスになっています。ほぼ日さんが企画・ディレクションを担当し、A.C.O.とモンスターラボがそれぞれデザインと開発を担当しました。

スケジュールとしては、2020年9月に私たちが参加し、11月に大枠のデザインが確定。2021年1月に予告サイトを公開し、6月にリリースしました。現在は運用改善を進めています。

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ほぼ日さんは、Figmaでプロトタイプを作ったりと、かなり具体的なところまで自分たちで考えて実際に作っていたんです。そのため、UXデザイン段階で抽象的なことを考えるよりデザインを作ってしまった方が早いだろうと考え、作っては壊し、作っては壊しを繰り返してサービスを立ち上げていきました。

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ほぼ日さんもA.C.O.も皆Figmaを見れる状態にして、とにかく大量のデザインを作りました。もちろん全体的な体験だけではなくディティールも見ており、1px単位での文字サイズの比較などを繰り返し行っています。UXデザインとUIデザインのプロセスをわけずにどんどん作っては壊してを繰り返すこの進め方は、かなり特徴的でしたね。

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Goodpatchで働くデザイナーのキャリア:山木さんの場合

山木:まずはGoodpatchについてご紹介させていただきます。Goodpatchは「デザインの力でビジネスを前進させるグローバルデザインカンパニー」です。2011年9月に設立され、現在は東京・渋谷とドイツ・ベルリン、そしてミュンヘンにオフィスがあります。従業員数は189名、うち7割がデザイナーとエンジニアで構成されています。

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Goodpatchは「ハートを揺さぶるデザインで世界を前進させる」をビジョンに、「デザインの力を証明する」をミッションに掲げています。受託ではなく、デザインパートナーとしてクライアントさんと共創するスタイルをとっており、コミット量の高さと強さも強みとしています。そのため、メンバーそれぞれがクライアントさんの文化や知識のインストールにも力を入れています。

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これまでの僕のキャリアについて、4つの時期にわけてご紹介します。

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1)2000~2009 広告代理店&フリーランス「要望に忠実に作る期」
広告代理店では広告イラストを生業とし、Flash全盛期にはWEBデザイナーという形で働いていました。この頃は、クライアントさんの求めるクオリティに近づけることに注力してデザイン業務を行っていました。

2)2009~2018 ゲーム会社時代「見たことないスゴイものを作ってくれ期」
2Dデザイナーとして入社したゲーム会社では、新規ゲームタイトルの開発・運用だけでなく、アートディレクションや採用などやれることは何でもやっていました。9年間で約7タイトルの新規開発運用に携わり、コンセプトアートやキービジュアルを通して「見たことのない新しい世界観」を作っていました。

3)2018~ DRONE前提社会プロジェクト「頭の中にある言葉だけのビジョンを形にする期」
このプロジェクトでは、ドローンを法整備して運用を実現させていく上で言葉と文字だけでは上手く説明できずに、何通りもの解釈が生まれて目指す姿がブレてしまうという課題がありました。その課題に対し、僕はビジュアルデザイナーとして「実現したい社会の姿」を説明できるビジュアルを作っています。

4)2018~ Goodpatch「徹底コミット。正しさとロジックのあるデザインを作る期」
Goodpatchのミッションに惹かれて約2年半前に中途で入社し、現在はリードデザイナー / マネジメントを主なミッションとして働いています。

デザイナーのキャリア:作れるデザイナーの次はコミットできるデザイナーに

山木:ここからは、今回のテーマ「デザイナーの専門性とキャリアについて考えよう」を2つのパートにわけて説明していきます。まずはじめはキャリアについて、私のチームのMさんの事例をお話しします。

Mさんの事例

Mさんは2019年12月にGoodpatchに中途入社しました。前職では制作会社でWEBサイトやアプリの制作に携わっていたのですが、入社から8年が経過して業務がコンフォートゾーンに入ったと感じるようになったそう。「もっとクライアントやユーザーに寄り添った本質的なデザインに関わりたい」と考えた末、Goodpatchへと転職されました。

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そんなMさんの働き方を前職とGoodpatchとで比較してみます。

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1)前職

  • 常に複数の案件が平行
  • アウトプット量は豊富
  • クライアントとの接点には代理店や営業窓口担当が存在
  • 契約:納品契約

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2)Goodpatch

  • 1期間に1案件のみ担当
  • アウトプット量は減少
  • クライアントとの接点には代理店や営業担当が不在
  • 契約:準委任契約

準委任契約となり、クライアントとデザイナー自身とが契約する形に変わりました。Mさんの1カ月をまるまる契約するので、基本的には1期間に1案件のみとなります。この契約形態にはひとり一人に金額がついているため、アウトプットももちろん作りますが、デザイナー自身のコミット量への期待も含めて契約しているイメージになります。

比較すると「準委任の方が楽そう」と思うかもしれませんが、一概には言えません。それぞれのメリット・デメリットを比較してみましょう。

1)納品契約

【メリット】

  • アウトプット量が多く、技術力があがる
  • 窓口と制作を分けることで担当領域が明確になり、デザインに集中できる
  • 幅広い案件に対応できる表現力が身につく

【デメリット】

  • 残業が多くなりやすい
  • 本当にユーザーのためになっているか疑問を抱きやすい
  • 制作専門になり、越境やキャリアチェンジがしにくい

1)準委任契約

【メリット】

  • 1案件に深くコミットできる
  • クライアントとダイレクトに課題解決に取り組める
  • クライアントの業種・業界を学ぶことで、ビジネスとデザインへの理解力があがる

【デメリット】

  • アウトプット量は少なくなる
  • 表現における技術的成長は緩やかに
  • できることはなんでも自分で取り組む必要がある

Mさんの前職と現職での業務内容を比較してみても、WEBサイトとアプリ制作だけをやっていた前職とは違い、現職では組織デザインや採用&育成などもあり、かなり大きな差があります。「やれることが増えた」とも、「やらないといけないことが増えた」とも捉えることが出来ますが、彼女は毎日楽しいと言ってくれています。

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私が言いたいのは、キャリアとして「アウトプットにも、人にも契約してもらえるデザイナー」を目指すべきではないかということ。制作会社などで表現のスキルを身につけた人が目指す、一つのキャリアパスなのではないでしょうか。そしてこれが、デザイナー自身でデザイナーの市場価値をあげていくためのより良い方法なのではないかと考えています。

デザイナーの専門性:ロジックとエモーション、どちらも大切にできるデザイナーは強い

続いては2つ目のテーマである専門性について。

私はデザインで2つの感情が作れると思っています。1つは、見た瞬間に湧いてくる即効性の感情。「かっこいい」、「美しい」、「可愛い」、「WOW」といったものです。もう1つは、遅効性の感情。「わかりやすい」、「便利」、「ストーリーに共感できる」、「売上が改善する」など、サービスを利用することで湧いてくる感情です。

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即効性の感情は、イラスト、映像、写真などビジュアルデザインとの相性が良いです。私もビジュアルデザインの業務経験が長く、即効性の効果は身をもって実感してきました。

反対に遅効性は、UIデザインやUXデザインとの相性が良いです。UXで導き出したユーザーストーリーの中でどう感情曲線を描くか、といったことなどと特に相性が良く、Goodpatchはこの遅効性の領域を得意としています。

即効性と遅効性はどちらが優れているというわけではなく、どちらもデザインにとって重要な要素です。即効性で感情を引き出してサービスを使うきっかけを作ったうえで、遅効性の感情にパスを運ぶことができないと、いくら優れたサービスやプロダクトであっても使ってもらえずに機会損失がおきてしまいます。

「スゴイ」と「正しい」、どちらの大切さも理解して、感情と効果を引き出すということ。「狙った感情を引き出す」というスキルは、デザイナーが持てる専門性であり、特殊能力だと思っています。

これらは私がGoodpatchでデザイナーとして働く上で必要だと感じていることです。細かなことは変わっていっても、こうした本質的に大切な部分はそう変わらないでしょう。

Q&Aセッション

Q1 UIデザイナーがUXデザイナーの仕事をすることはありますか?

石井:A.C.O.ではあまり厳密に肩書は決めず本人に任せていますが、こういったことは全然ありえます。ただし、UIデザイナーがUXのプロセスに入っていくのは想像しやすいと思いますが、UXならではの専門性もありますよね。たとえばワークショップの設計や、ユーザーリサーチで本音を引き出すスキルなどは、デザイナーなら誰でもできるというものではなく、UXデザイナーが専門とするスキル。それぞれの専門性として分けている部分ですね。

山木:石井さんのおっしゃるようにUIもUXもそれぞれ専門性が高いので、完全に代用するのは難しいですね。ただ、「私はUIデザイナーだからUXデザインに関わりません」と言ってしまうと、UIデザイナーはUXデザイナーが決めた通りに作らないといけない、という状況が出来てしまいます。

UIデザイナーとして準委任契約をする以上、UXをしっかり理解してUIデザインを作っていきたいと考えるメンバーも多く、納得感あるデザインを作るうえでもUXのプロセスを手伝うことは多々ありますね。専門性は軸として持ったうえで、そこからちょっとだけ横に広げていくというイメージです。

Q2 WEBデザイナーからUIデザイナーやUXデザイナーとして転職する際、どのようなことを転職希望者に求めますか?

石井:まずWEBデザインとUI/UXデザインは近いので、採用のときはWEBデザイナーとしてのポートフォリオのレベルやデザインのレベルを見ています。その上で、UI/UXデザインは現在かなり教科書も増えて勉強できる環境は整っているので、実際に自分で勉強しているかどうかも見ています。会社に入ってもずっと勉強していかないといけないので、それができるかどうかですね。あとはクライアントとコミュニケーションをとっていかないといけないので、コミュニケーション能力などはみています。

山木:僕もUIデザインに仕事として関わるようになったのは、Goodpatchに入ってからなんです。わかったのは、UI/UXデザインは「正解」「プロセス」のあるデザインだということ。そのため、UI/UXデザイナーになりたい人に求めるとしたら、UIの正解とUXのプロセスを知っているかどうかというところでしょうか。納得感のあるデザインが作れるかを大切にしていますね。

Q3 納品契約から準委任契約に変わることによっておきる変化に対して、どのように折り合いをつけましたか?

山木:さきほど納品契約と準委任契約との違いとして、アウトプット量やそれによる技術力の成長といった点をあげました。そのとき例に挙げたMさんは、前職で8年間ひたすらデザインを作り続けてきた中で、この先同じように続けていったときの成長曲線が見えてしまったと言っていました。このまま作り続けていって見えた通りに成長曲線を伸ばしていくことよりも、アウトプット量が減ってもいいのでデザインに対する関わり方を変えたい、と折り合いをつけたと聞いています。

Mさん以外だと、新卒1-2年目のメンバーはやっぱりまだまだデザインを作りたいという感じですね。そのため半期に1回の全社総会に向けたクリエイティブ制作に力を使ったり、案件以外の取り組みなどでアウトプットの機会を作って発散させています。作る場、発散する場、自分の技術的な成長曲線を伸ばしていく場は、それぞれが探して取り組んでいます。

Q4 準委任契約のメンバーの評価やマネジメントはどのようにしていますか?

山木:Goodpatchでは、かなりしっかり評価軸を作っています。準委任契約でメンバーごとにつく金額のレンジに合わせてグレード(等級)が設定されているのですが、その等級毎に要件があります。「この等級の人であれば、こういうことが出来ている状態が望ましい」という内容がまとめられているんです。半年に1回その要項に沿って判断するのはもちろん、リードデザイナーとしてメンバーのアウトプットを評価したり、クライアントさんから満足度を聴取したりしています。

マネジメントとしては、1週間に1回メンバーと1on1をして、メンバーの悩みを聞いたり、今後取り組んでいきたいことに対する後押しをしています。関係性が浅いうちは、お互いを知るためのマネジメントスタイルをとっていました。時間を経てお互いを理解できた段階からは、ビジョンを示していくマネジメントスタイルに切り替えていきましたね。

石井:A.C.O.では、上司だけでなく社員同士がお互いに評価しあう「360度評価」を取り入れていたり、半年に1回自己評価として、自分がやったこと、出来たことを報告してもらっています。これらによって、仕事ができる/できないを、マネージャーだけで判断しないようにしているんです。同じプロジェクトに入っていない人のことはどうしてもわからない部分もあるので、なるべく公平に聞くようにしています。

Q5 どのようにしてデザイナーからチームリーダーにステップアップされましたか?

石井:経験があったから任されたというより、興味があってずっと「やりたい」と言っていたからだと思います。実際、正式にマネージャーになったのは今年ですが、去年1年間はマネージャーの補佐をしていました。

なぜマネージャーを目指したのかというと、もともと自社事業にも興味があって、会社に直接関わっていきたいと思っていたことがあります。また、A.C.O.も準委任契約で1つ1つのプロジェクトが長いため、1年間に関わることのできるプロジェクト数が少ないんですね。そうなると、自分1人がどれだけデザインができても、社会に与えられるインパクトは限られてしまいます。そのため、自分だけでなく会社全体で大きなインパクトを作っていきたいと思ったことも、マネージャーを目指す大きな理由になりました。

Q6 「こういうデザイナーが必要」「伸びしろがありそう」と思う素養や共通点は?

山木:痛い思いも恥ずかしい思いも成長のために厭わない人、恐れない人は、伸びるイメージがありますね。自分のことを振り返っても、仕事を覚えてきたタイミングって痛い思いをしたときや、恥をかいたときだったなと思っています。鈍感な人とも言えるかもしれません。あとは素直さも大切ですね。

石井:山木さんのおっしゃる通りで、他にあげるとすると、プロジェクトをビジネスとしてひっぱっていける人は強いなと思っています。言われたものを作るのではなく、自分でどんどん提案していって、あたらしい機能を作ったりできる人ですね。

素養としては、山木さんと同じく素直さが一番大切だと思っています。もう1つあげるとしたら、空気を読まないスキルかな。クライアントが求めているのは、「本当にいいものを作ってほしい」ということ。空気を読んで「これはどうせ出来ないから、言わなくていいや」と考えずに「私はこれがいいと思います」「こうした方がいいと思います」と言える人の方が、最終的にはプロジェクトもうまくいくはずです。

Q7 お二人は「デザイン」をどう定義していますか?

石井:僕の個人的な定義は、デザインの語源に近いのですが、「説明しなくてもいい状態に持っていくこと」。「このボタンを押してください」と言わないと押せないボタンはボタンではないと思っています。僕が一番理想的だと感じるデザインは、階段なんです。階段って「ここを登ってください」と言われなくても登れるじゃないですか。そういう状態を目指して、誰でも使えるものや、道具として機能を果たすものを作るのがデザインなのではないかなと。その考えを拡張すると、会社の仕組みや社内のルールなど「言われなくても誰でも自然にできるもの」はデザインと言えるのかもしれません。

山木:「Design」は「De(否定)」と「Sign(記号)」から出来ているので、「記号を否定する」という意味があるのかなと思っています。デザインの基本は、既存のものを否定すること。既存の常識や目の前にあるものを、そのデザイナーが持てるバックボーンやスキルでどう否定し、形にしていけるか、というのがデザインの一つの解釈かなと考えています。

おわりに

「デザイナーの専門性とキャリアについて」をテーマにお話し頂いた今回のウェビナー。ビジネスにおけるデザインの重要性が高まっているからこそ、技術力や表現力はもちろん、キャリアを積み重ねていく中では自ら専門性を広げる姿勢が求められています。ともにUIデザイナーとしては未経験ながら、自ら学んで活躍の場を広げてきた石井さんと山木さんのお話の中には、さまざまなヒントがあったのではないでしょうか。是非、デザイナーとしての今後のキャリアを考える際の参考にしてみてください。

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by Monstarlab Design Journal

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