Share

イベントレポート

【モンスターラボ×コンセント×TCS】デザインリーダーが明かす、キャリアの選択と挑戦の秘訣

1 suki 3 suki
読み込み中...

2023年8月29日に開催されたイベント「Pioneering Design Paths:デザインリーダーが明かす、キャリアの選択と挑戦の秘訣」。役員やマネージャー、シニアデザイナーとして活躍する3名のゲストが登壇し、ライトニングトークとパネルトークを通してキャリアにおける選択や葛藤についてそれぞれの視点で語っていただきました。本記事では、その模様をイベントレポートとしてお届けします。

Guest

大﨑優 氏

株式会社コンセント 取締役/デザインマネージャー/サービスデザイナー

稲葉政文 氏

日本タタ・コンサルタンシー・サービシズ株式会社 UX/UIディレクター/マネージャー

川北奈津 氏

株式会社モンスターラボ  デザインラインVice Manager

それぞれのライフチャートに見る、キャリアの変遷とターニングポイント

キャリアの浮き沈みや転機となる出来事に対して、3名はどのように向き合ってきたのでしょうか。まずはライフチャートを用いて、それぞれのキャリアの変遷について伺いました。

大﨑 :武蔵野美術大学の視覚伝達デザイン学科出身で、もともとはグラフィックデザインやビジュアルコミュニケーションデザインについて学んでいました。近年ではサービスデザインやデザイン組織のマネジメント、デザイン人材の育成などにも携わっています。

キャリアとしては、新卒からずっと現在の株式会社コンセント(当時:株式会社アレフ・ゼロ)に所属しています。パンフレットやフリーマガジンなど紙面デザインの仕事から始まったのですが、2年目にプロジェクト責任者となったことが転機となり、裁量を持って動くことにおもしろみを感じるようになりました。その後サービスデザインの事業部の立ち上げを経験し、2015年からは役員として経営に携わっています。

大﨑氏のライフチャート

川北 :大学院大学への入学が、一番初めの大きな決断だったと思います。そこで情報科学やメディアアートを学ぶ中で、欧州のメディアアートの祭典「アルス・エレクトロニカ」に衝撃を受け、3年間展示制作活動に専念しました。

その後広告制作会社を経て株式会社A.C.O.(現:株式会社モンスターラボ)に入社するのですが、クロアチアでの展示のお誘いを頂いたことをきっかけに、数年間フリーランスの時期を挟んでいます。

A.C.O.に復帰後はエスノグラフィとの出会いが大きな転機となり、UX/IA部の立ち上げや自分自身の学び直しなどにもつながりました。そうやって「新しい領域を開拓すること」が、ずっと変わらずに持ちつづけている私にとってのミッションです。

川北氏のライフチャート

稲葉 :留学中のアメリカでデザインに出会い、学びはじめました。一度は帰国して日本で就職したのですが、すぐに「デザインを突き詰めたい」と思うようになり、3年目のタイミングで会社を辞めてイギリスの大学院に入学しました。授業もそこそこに、自分で雑誌やチャリティプロジェクトを立ち上げるなどして、毎日グラフィックデザインの勉強に打ち込みました。

卒業後はロンドンでブランディング会社に入社したのを皮切りに、デジタル系の制作会社や広告制作会社を経て、2022年から現職の日本タタ・コンサルタンシー・サービシズ株式会社でデザインチームの立ち上げに携わっています。現在はジェットコースターのような毎日を送りながら、ゼロからデザインカルチャーをつくりあげるべく奮闘しているところです。

稲葉氏のライフチャート

パネルトーク1ー自分に合ったデザインとの向き合い方を見つける

受託という形でのデザインとの向き合い方や、マネージャーになることでのデザインとの距離感の変化について、3名はどのように捉えているのでしょうか。2つのテーマでお聞きしました。

なぜ現在のキャリアを選んだのでしょうか? 独立や、事業会社で働く可能性を考えたことはありますか?

大﨑 :私がデザイナーとしてキャリアを歩みはじめた頃は、数年で独立するのが当たり前という風潮があり、当然アートディレクターとして独立することも考えました。でも当時、私は引き合いのある仕事をとにかく全部やることにしていたので、単純に独立する暇がなかったんです。

ただし、マネジメントをしはじめてから独立志向はなくなりました。集団を率いることのおもしろさに気づいたことと、会社のメンバーに尊敬できる方が多く、みんながどんどん成長していく分変化が大きくておもしろかったのがその理由です。

業態として、受託は多様なフェーズにある企業や官公庁と関わることができ、いろいろなことができるのがおもしろいなと思っています。自分の性格としても、デザインを通じて働きかける対象が常に変わる方が合っているのかもしれません。

稲葉 :私はものはつくれますが、つくったものを売ることはできないので、そもそも独立は難しいだろうと思っていました。ただし、頭の片隅では常に考えていましたね。たとえば先日インドに行った際にも、「デザイン文化が発展途上のこの国で、UIデザイナーとして独立したら絶対に稼げるだろうな……」と思いました(笑)。

私も受託という仕事の仕方が好きで、毎回さまざまな知識を学んで新しい経験ができることに、大きなメリットを感じています。飽き性なところがあり、知らなかった業界や事業について学ぶこと自体を楽しんでいるので、今の形が合っているのだと思います。

川北 :私は一度フリーランスを経験したからこそ、チームで何かをつくることのおもしろさを感じています。もう一度組織に入るという選択をしたのは、やはりものづくりにはさまざまな視点が必要だと感じたからでもあります。

ただし、「起業して失敗する経験」は何度かできたら良かったなと思います。そうすることで、どういう風にサービスやプロダクト、そして組織をつくればいいのかを理解することができるからです。

仕事の仕方には最近変化も起きてきていて、受託でもクライアントと関わる時間軸がどんどん長くなってきています。企業の成長にコミットするには数年単位で関わる必要があるため、事業会社と同じような形になってきているかもしれません。

プレイヤーからマネージャーになるとき、葛藤はありましたか?

大﨑 :特にありませんでした。マネージャーになる前にリーダーとして数名のチームを見ていたこともあり、その延長として捉えていたからかもしれません。また、もともとアートディレクターとしてプロジェクトに関わることも多かったのですが、何かの達成を目指すという意味ではアートディレクターとマネージャーはあまり変わらないと感じています。

稲葉 :実は、入社時に「マネジメントだけすることはやりません!」と宣言した経緯があります。やはり自分で手を動かしてデザインの仕事をしたいし、そもそも今でも自分自身がマネージャーとして適しているとはあまり思ってないです。私のミッションは、現在の会社にデザインのカルチャーを根付かせ、日本の有名デザイン会社を追い越すほどのチームをつくること。その達成にはチームが必要なのでマネジメントもやってはいますが、自分自身としては「一生デザイナー」だと考えています。

川北 :そもそも私の考えでは、マネージャーとして考えるべきことは「経営にどう関わっていくか」。私の場合「新しい領域を開拓して、みんなに機会を創出すること」が、マネージャーとして貢献できる役割のひとつだと捉えています。動き方としてはプレイングマネージャーのような形になりますが、プレイヤーとマネージャーどちらが良いということではなく、会社にとって成果を出せる方を選んでいけば良いと思います。

パネルトーク2ーこれからのデザイナーに求められるスキルとは

採用に関わる場面も多い3名は、デザイナーがキャリアを広げるために持つべきスキルに関してどう考えているのでしょうか。ご自身の今後のキャリア設計についても、合わせてお聞きしました。

今後、デザイナーに求められるスキルとは何でしょうか? どのようなキャリアが考えられるでしょうか?

大﨑 :採用にも関わっていますが、やはり経営やビジネスに対してデザインできる人材は、圧倒的に足りていないのが現状です。そもそも母数が少ないため、たとえばデザインマネージャーを募集したとしてもなかなか応募が来なかったり、来てもミスマッチだったりというケースがほとんどです。

また同様に、プロジェクトを主導して推進できるプロジェクトマネジメント人材も市場価値があがっています。特に受託会社では、プロジェクトマネジメントができる人の数がそのまま受託できるプロジェクトの数となるので、このスキルを持つ人材を増やさなければデザインビジネスとしての成長は描けません。さまざまな企業で求められていますし、プロジェクトマネジメントのスキルは横展開もできるので、キャリアチェンジの機会も十分にあるといえますね。

稲葉 :端的に言えば、求められているのは「課題解決できるデザイナー」です。その上で、他の業界と同様にAIとどう向き合っていくかが重要なポイントだと考えています。AIは無数のサンプルの中からベストアンサーを出すことはできますが、全く無の状態から何かをつくることはまだできません。それを考えて表現できるデザイナーは、しばらく生き残れるはずです。

あとは、やはり英語ができると世界は広がります。私自身も、海外のデザイナーとの交流の中でさまざまな知見や考え方を吸収することができて、世界が広がったと感じています。

川北 :キャリアの描き方としては2軸あって、ひとつはUIやUXなどの領域にとらわれずに、横断的に動けるスキルを身に付けていくという方向性。もうひとつは、専門性を高く持つことで差別化し、指名されるようなキャリアを築いていくという方向性です。数字への強さやAIを活用するスキルは、クオリティを判断する際の武器になると思います。

最後に、みなさん自身のキャリア設計についてもお聞かせください。

大﨑 :例えば、さまざまな企業で社外取締役をつとめながら、デザインの価値をあげていくような動き方をできないかと考えていたりします。ただ一方で、デザイン以外のこともやりたいなと思っています。デザイナーであることはひとつのアイデンティティではありますが、それが壁になることもあるので、そこから抜け出したいなと。

稲葉 :実は、私はそこまで計画的にキャリア設計を考えているわけではなく、常に「そのとき自分がつくりたいものをつくる」という基準で道を選んできました。今は「チーム作り」と「デジタルxブランディングをかけ合わせたプロダクト開発」をやりたいのでこの業界にいますが、数十年後には業界自体が変わっていると思うので、そのときはそのときでまたつくりたいものをつくっているのではないかと思います。

川北 :他者との接点が広がってきているので、デザイナーやエンジニアなどものづくりに関わる人たちの中に、グローバルの観点や文化人類学者のネットワークなどを組みこんで、イノベーションを生みだす仕組みづくりをしていきたいですね。それこそが、自分にとっての次なる「新しい領域の開拓」につながるのではないかと思います。

おわりに

デザイナーのキャリアをテーマにお話しいただいた今回のセミナー。デザインの力が求められる場面が広がっているからこそ、自身のやりたいことや将来像を描きながら、自らキャリアを選択する姿勢が必要になりつつあります。是非3名のお話から得たヒントを、今後のキャリアを考える際の参考にしてみてください。

※今回ご登壇頂いたゲストが所属する3社では、デザイナー採用を実施中です。詳細は下記採用情報をご確認ください。

Monstarlabで一緒に働きませんか。

採用情報を見る

UI/UXデザインに関するご相談や、
案件のご依頼はこちら

お問い合わせ

by Monstarlab Design Journal

Monstarlab Design Journal 編集部です。 モンスターラボデザインチームのデザインナレッジとカルチャーを発信していきます。

View articles

  • Share this article:

How can we help?

お悩みのことがあれば、お気軽にお問い合わせください。

お問い合わせ