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改善の手がかりを掴むエキスパートレビュー

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こんにちは、UIデザイナーの齊藤です。

ここ数年、業務でエキスパートレビューを行う機会が増えてきました。
実際にレビューして認識した特徴、それによってどのような課題が見つかるか…など、明確になってきたので今回まとめてみました。

エキスパートレビューの実施で悩んでいる方は、ぜひ参考にしてみてください!

そもそもエキスパートレビューとは

操作しづらい箇所 や わかりづらい箇所がないか、ユーザビリティの専門家(エキスパート)がUIデザインを評価すること。
評価指標は、UIの一般的な原則だけでなく、専門的な知識・経験も応用して行う。

ちなみに、似ているもので「ヒューリスティック評価」があります。こちらは、UIの一般的な原則である「ニールセンの10原則」を元に評価する方法で、この原則を理解していれば専門家でなくとも実行できる手法です。

エキスパートレビューの特徴は大きく下記の2つです。

1. 他の調査に比べると短期間でローコスト

エキスパートレビューは専門家であるUIデザイナー(もしくはUXデザイナー)のレビューのみで完結できるため、少ない人員で短期間ででき、コストを抑えることができます。

弊社では、デザイナー2〜3名が約1ヶ月の間でレビューしてレポートにまとめるケースが多いです。

※対象の画面数やレビュー範囲に応じて最適な期間は変わります。

2. サービス全体を見渡して、さまざまな角度から課題を捉えられる

前述のエキスパートレビューの説明にある「評価指標は、UIの一般的な原則だけでなく、専門的な知識・経験も応用して行う。」という一文から推測できる通り、UIのビジュアル的な視点だけで課題を見つけるのではありません。

視点をわかりやすくするために「UXの5段階モデル」で示すなら、「表層」だけでなく他の階層も含めることができます。

もちろん「表層」に近い課題の方が見つけやすいですが、出た課題を紐解いていくと「要件」「戦略」に繋がることがあります。こちらに関しては次のセクションである「どんな課題が見つかるか」で詳しく説明していきます!


       

画像出典:The Elements of User Experience – 5段階モデルで考えるUXデザイン から簡略化

このように広く探索できますが、深さや網羅性は低くなります。
なぜなら、レビュアーは実際のユーザーではないため、レビュアーが想定しづらい操作の中にある課題は漏れやすくなるからです。

課題の漏れを防ぐには「ユーザビリティテスト」で実際にユーザーに評価してもらうことが有効だと思います。

例えば、レストランの予約サービスであれば「Aというお店を予約してください」とゴールを伝えた上で操作してもらい、それを観察するというようなものです。ヒアリングも加えて行うと、どのような思考で操作しようとした時につまずくのか明確にできます。

ただし、エキスパートレビューよりも時間とコストがかかってしまうため、状況に応じて適した方を選んでみてください!

どんな課題が見つかるか

前述の通り、「UXの5段階モデル」のうち「表層」に近いものが見つかりやすいですが、その他の階層に該当する課題も見つけることができます。

1. 表層に該当する課題

カラーのルールなどのUIの一貫性が担保されていないこと、読みづらい文字や色によって操作を阻害するビジュアル的要素などが挙げられます。


画像出典(左の図):The Elements of User Experience – 5段階モデルで考えるUXデザイン から簡略化

2. 骨格、構造に該当する課題

目的を達成するために行う操作に対して、判断を迷わせる情報設計やフローが挙げられます。

「ファストフード店の注文アプリ」を例にすると、目的は「注文すること」になります。注文するにあたって、商品を探しづらかったり、注文のルールがわかりづらかったりする箇所は課題と言えます。


画像出典(左の図):The Elements of User Experience – 5段階モデルで考えるUXデザイン から簡略化

3. 要件、戦略に該当する課題

「表層、骨格、構造に該当する課題」の原因を紐解いていくことで明らかになる場合があるものです。そのため、エキスパートレビューの範囲ではありませんが、副産物的に得られることがあります。

例えば、「構造」に該当する課題で「画面上の情報の優先度がついておらず、全てが目立つ形になっていて操作に迷う」が出たとします。これを改善するには「操作する上でユーザーが求める情報」の優先度を明確にする必要があります。
これには、ユースケース、サービスの目的、具体的なユーザー像…などを元にしますが、そもそもこれらが「考えられるだけの粒度」で作成できていなければなりません。


画像出典(左の図):The Elements of User Experience – 5段階モデルで考えるUXデザイン から簡略化

上記の定義が明確でないことが原因で各所に課題が出てきているケースが、今まで行ったエキスパートレビューの中でも多かったので、このタイミングで振り返ってみると良いかもしれません。

レビュー結果はどう活かす? → 今後の改善計画立てに!

出てきた課題は「UXの5段階モデル」に振り分けておくと、改善の計画が立てやすくなります。


画像出典(左の図):The Elements of User Experience – 5段階モデルで考えるUXデザイン から簡略化

「表層」に近い = 具体的な課題

→ 改善案が明確で、すぐ改善できる課題。

改善の例
  • 「カラーのルールなどのUIの一貫性が担保されていない」
    →デザインガイドラインを作成して、ルールを明確にする
  • 「読みづらい文字や色などの、操作を阻害するビジュアル的要素」
    →ユーザビリティの原則を参考に、問題のある箇所を修正する

「戦略」に近い = 抽象的な課題

→ 改善案の検討が必要な課題。

エキスパートレビューだけで判断せず、他の調査へ進むのも良いかもしれません。下記のような調査を行うことで、課題の本質を捉えやすくなります。

調査の例
  • 課題の解像度を高めたい → ユーザビリティテスト
      実際にユーザーにサービスを操作してもらうと、「どのような思考で操作しようとした時につまずくのか」が明確になります。
  • 必要な要件がわからない → ユーザー調査(インタビュー)
      インタビューで定性的な情報を集めると、ユーザー像やニーズを捉え直すことができます。

「なんとなく使いづらい…」と思ったらエキスパートレビューがおすすめ!

エキスパートレビューはさまざまな角度から課題を捉えられ、短期間でコストを抑えて実施しやすい調査です。
今後の改善の計画立てがしやすくなるため、「なんとなく使いづらい…」と感じるのであれば、一度エキスパートレビューを実施してみてはいかがでしょうか?

ちなみに、エキスパートレビューは対象のデザイン作成に関わっていない第三者が行うのが良いとされています。理由は、先入観がなくデザインに思い入れもないため、課題をはっきりと判別できるからです。

もちろん、当社でもエキスパートレビューを実施してウェブサイトやアプリケーションの課題を探索することが可能です!

ご希望がありましたら、お気軽にご相談ください。

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by Yusa Saito

大学ではプロダクトデザイン専攻するが、福祉(ユニバーサルデザイン)・建築も学び、デザインの考え方自体が好きになる。卒業後モンスターラボに入社し、主にUIデザイナーとして情報設計、UI作成、デザインシステムの構築を担当。UIデザインを軸にしつつUXデザインも勉強中。

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