- 2019.11.07
後編 意外と知らないアンケート設計時のポイント
昨今のUXデザイン案件や新規サービス開発案件では、プロセスの中にユーザーインタビューを組み込む場合も多いかと思います。
そんなユーザーインタビューが思い通りにいかないときは、もしかしたら「リクルーティング」がうまくいってなかったのかもしれません。リクルーティングはユーザーインタビューにおいて非常に重要なプロセスです。にもかかわらず、リクルーティングについて書かれた記事はそれほど多くありません。
そこで今回は、意外と知られていない「リクルーティング」のコツについて、前編と後編に分けてご紹介します。
前編ではアンケート作成の前にインタビュイーの条件を具体化するリクルーティングの精度を向上する方法についてご紹介しました。
#2-前編 ユーザーインタビュー成功の鍵を握る「リクルーティング」のポイント【インタビュイー条件の整理編】
後編では、前編の内容を踏まえたうえで実際のアンケート設計時に考慮すべき基本となるポイントをご紹介します。
基本は「より多くの人から、偽りや誤りのない正しい回答をもらう」こと
アンケート設計の基本は「より多くの人から、偽りや誤りのない正しい回答をもらうこと」です。これを実現するためには大きく2つのことに留意する必要があります。
1つ目はより多くの人に回答してもらうこと。
ユーザーに負担をかけすぎてしまうと、アンケートに答え終わる前に離脱されてしまうことがしばしば起きます。回答の数が少なければ当然リクルーティングの精度が下がってしまうため、まずは回答数の分母を増やすことが大切です。
2つ目は虚偽の回答や誤回答を減らしたり見抜けるようにすること。
回答者にインセンティブが発生するアンケートでは、インセンティブを得るためにわざと回答を偽る人やあてずっぽうの回答をする人もいます。また回答者が真面目に回答をしたつもりでも質問文によって、誤った答えに誘導されてしまう人もいます。このように回答と実態が異なる人をインタビュイーに選んでしまうと、聞きたかった情報が得られなくなってしまうため、虚偽の回答や誤回答はなるべく減らしたり見抜けるようなアンケートを設計しておくことが大切です。
では、ここからは具体的に気をつけるべきポイントについてご紹介します。
より多くの人に回答してもらうためのポイント
– 質問は答えやすいものから並べていく
アンケートでは最初に答えやすい質問を並べると途中での離脱が減るといわれています。皆さんも途中まで答えた心理テストは、答えに悩んでも頑張って最後までたどり着こうとしませんか?リクルーティングのためのアンケートも同じです。最初の質問には誰でも答えやすい一般的なものを置き、そこから詳しい内容に関する質問に入っていくようにしましょう。
– 質問数は極力少なく
基本的には質問数に比例して離脱率は上がっていきます。マーケティングリサーチ企業のマクロミルの調査では、回答者が負担を感じず丁寧に回答できる質問数は18.4問ほどと言われています。そのため質問数は極力少なくしましょう。どうしても多くなってしまうときは、途中でページを切り替えるなどをして、多く感じさせない工夫をすると効果的です。
– 関連した質問はなるべくまとめる
関連した質問をまとめておけば、1つずつ前提を説明しなくても問題の意図が回答者に伝わりやすくなります。できるだけ関連した質問はまとめて、回答者の理解の手間を少なくするような配置にしましょう。
– 質問文は短く簡潔に
質問が長くてわかりにくいと読むだけでも回答者の負担になってしまいます。離脱を防ぐためにも一目で質問内容がわかる文章を意識しましょう。
虚偽の回答や誤回答を減らしたり見抜けるようにするためのポイント
– インタビュイーの条件が質問から読み取られないようにする
インタビューで謝礼が出る場合、質問やタイトルからインタビュイーの条件を読み取り、事実とは違う回答をする人がいるかもしれません。このようななりすまし回答者に条件が読み取れないように、回答の選択肢やアンケートのタイトルには注意を払う必要があります。
たとえばiPhoneユーザーを対象にしたインタビューを行う場合には、iPhoneユーザーかどうかを聞くのではなく、Galaxy、XPERIA、AQUOSなど他の機種も選択肢に含み、正解の回答がわからないようにします。
タイトルに関しても「iPhoneの利用状況についてのアンケート」のようにアンケートの意図がわかりやすいものにはせずに、「スマートフォンの利用実態に関する調査」などある程度ぼやかすと回答者が意図的にインタビュイーの条件に合わせて回答する事を防げます。
– いい加減な回答者は、質問に矛盾した質問を設けて検知する
アンケートに回答すること自体に謝礼やポイントがつく場合には、とにかく最後まで回答しようと全ての質問にYesと答えるなどあてずっぽうで回答する人が出てくる可能性もあります。そのような回答者を回避するためには、全てYesで答えると矛盾する質問をいくつか含めておくという手段が有効的です。
– 業界関係者などの詳しすぎる人は、プロフィールの除外条件ではじく
特定の業界や領域についてユーザーインタビューをするときには、その業界や詳しすぎる人はインタビュイーの条件に合致するかどうかに関係なく除外しましょう。
たとえば病院の選び方について知りたいときに医療業界の人々を対象にインタビューしてしまうと、あまりに詳しすぎてサービスのターゲットの実態とは異なってしまいます。あらかじめ除外条件を明確に設定しておきましょう。
– 質問文によるミスリードをなくす
質問をいくらわかりやすく作っても、質問の中で回答者を誘導してしまってはユーザーのありのままの事実を聞くことができなくなってしまいます。
たとえばあなたが緑茶のブランドAの好意的な側面について質問されたとします。あなたは質問されるうちに自分がいかによくブランドAを飲んでいるのかということに気付いていきます。そんな一連の質問の後に、ブランドAの満足度について聞かれたら、少しだけいつもよりも良い評価をしてしまいそうな気がしないでしょうか。しかし、一連の質問でブランドAについて聞かれ続けていなかったら、異なる回答をしていたかもしれません。
このようにブランド認知について聞く場合などは特に、他の質問の答えや答えの方向性を誘導していないかどうかの確認が必要です。質問文や質問の順番によって、回答者を誘導してしまうようなことがないように心がけましょう。
他にもアンケートの結果を歪ませるバイアスはいくつかあります。興味があるかたは合わせてこちらの記事も参考にしてみてください。
事前のインタビュイー条件の明確化がリクルーティング精度をさらに上げる
今回紹介したのは基本となるポイントの一部ですが、とにかく基本は「より多くの人から、偽りや誤りのない正しい回答をもらう」ことです。
前編でご紹介したインタビュイー条件の明確化とセットで実践することにより、リクルーティングの精度はさらに向上します。ぜひ試してみてください。
次回の「意外と知らないUXデザイン」の記事では、ワークショップの舞台裏「環境の準備」についてご紹介する予定です。お楽しみに!
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Overview
×- 社名
- 株式会社A.C.O.
- 設立
- 2000年12月
- 資本金
- 10,000,000円
- 代表者
- 代表取締役 長田 寛司
- 所在地
- 〒150-0012 東京都渋谷区広尾1-1-39恵比寿プライムスクエアタワー6F