- 2016.11.17
SFのような時代が訪れるとき、デザイナーはAI(人工知能)とどう共存していくのか
こんにちは、A.C.O.編集部です。 このところ「AI」「人工知能」ということばをよく耳にします。A.C.O.社内でも同様に、先日A.C.O. Journalでも、クリエイティブディレクターのJamesがUX TALK TOKYOで話したり(AI(人工知能)の時代にデザイナーはどんなスキルが求められるのか)、「テクノロジーについて話そう」といった趣向の社内イベント「Tech Room」でも「知能と構造」をテーマに開催。GMO Brights Consulting Inc. の技術顧問・山下寿也さんをお呼びしてお話を伺いました。
今回は、山下さんの話を機に考えた、「AIがデザイナーの仕事にどう影響してくるのだろうか?」というテーマについて、記事にしたいと思います。
デザイナーよ さようなら
AIを語るときに必ず語られることの一つが、「人間の仕事がなくなる」というもの。個人的には特に危機感があるわけではなかったのですが、簡単にかっこいいサイトが自分でつくれるのだったら、デザイナーは必要なのでしょうか? もうサービス使ってみんな自分で作ればいいじゃん、勝手にして!という投げやりな気分にもなりそう。
そうではなく、「AIはデザイナーの創造力を発展させる可能性があるよ!AIと共存してこうぜ!」というのが、この記事のテーマです。ちょっと先の未来を想像した話をしてみましょう。
未来は物語の中に
さて、「未来のことを考えるにはSFを参照すべし」、というのが僕の持論です。iPadらしき端末が『2001年宇宙の旅』(1968)に出ていた!?なんて話もありますし、現実のくびきを越えた人間の想像力を見る場として最高なんじゃないかと考えています。(単にSF好きというのもありますが)
最近読んだ本や観た映画の中で、AIをテーマにしたものや、言及しているものをざっと思い返すとこのくらいありました。
- 映画:『チャッピー』、『トランセンデンス』、『アベンジャーズ エイジ オブ ウルトロン』
- マンガ:『AIの遺伝子』
- 小説:『ザ・ブリーチ』『ドローンランド』
SFだと空気のように全知全能のAIが登場するので、特に主要なモチーフとして取り扱われているものを挙げました。
「ブリスキーズとの関係は?」わたしは質問した。
「手短にたのむよ」
「パッツィのブリスキーズ、すなわちイギリス=ロシア犯罪シンジケートとの関係は、九十一パーセントの確率で排除されます」
「(中略)…危険性の高まりを暗示するようなできごとは?」
「いずれもノーです、警部」
その中で『ドローンランド』というSFテクノスリラー小説が気になりました。『ドローンランド』は、大小様々なドローンが計測した情報をもとに、AI「テリー」が構築した仮想現実世界で捜査官がとある事件を追う物語です。
再現された仮想の現場空間で捜査官がAIに問いかけをすると、膨大な情報の中から「解」あるいは「可能性の確率」が提示されます。 「AIとデザイン」のテーマを考えたときに、頭をよぎったのがこの描写でした。
AIに最適な問いを投げるデザイナー
デザインという行為は「仮説 → 検証」の繰り返しです。重要なのは問い(仮説)を立てることで、問いの立て方によって結果(検証結果)が変わります。
問いを立て検証する。このサイクルが「AIに質問→回答」の形で素早く行えれば、繰り返しも容易になり、デザインの精度もどんどん上がっていく。一見、いいことづくめのようにも思えます。Googleにキーワードをいれれば最適な情報が簡単に得られる。その発展系のように考えるとわかりやすいかもしれません。
“通常モードでは人間がマシンを抑え、アレックスが決断する、だが戦闘モードに入るとバイザーが降りて、ソフトウェアがすべてを決断し、それに従ってマシンが行動する。その間、アレックスはただの乗客だ(中略) 主役は自分だと思っている、だがそれは自由意志という名の幻覚だ”
映画『ロボコップ』 2014 デネット・ノートン博士がマーフィの模擬戦闘を見ながら
AIは正しすぎるウソをつく? 正解は人間が決める。
ただし、問いを立てることが重要となる場合、注意が必要なのが、AIの回答にバイアスがかかっている可能性です。AIの親(学習させた人)は誰なのかということは意識しておく必要はありそうです。
また、精度が高く限りなく要望に近いデザインができあがっても、それが「正解」ではない場合もあるのが、クリエイティブの難しいところ。明らかに間違いであっても受け入れられれば正解になってしまうなど、正しい答えがない世界で、どのようにAIと付き合っていけばよいでしょうか。
この答えは、情報を統合するのはあくまでデザイナーの役割という意識を持つことだと考えてます。ネットとリアルを問わず、異なる情報ソースを組み合わせると、答えが異なってくる場合が必ずでてきます。
その理由を仮説検証し、情報の手綱を意識して握る。一見答えらしいものをあえて外れてみる。あまのじゃくのようですが、自分以外の知能を使い、正しさを担保しつつも、自在にクリエイティブを提案できる。これが、AI時代のデザイナーの価値になるのではないかと思っています。
AIが自然なものとして溶け込む時代のデザイナー
また、AIとデザイナーとの関係性を考えるとき、「AIに人間が負けることは必ずしも悪なのか」についても考える必要があるでしょう。
僕は必ずしもそうではないと考えています。たとえば人間vs人工知能の戦いとして、チェスの戦いがあります。1997年にIBMワトソンの前身ディープブルーによって、当時の世界チャンピオンだったガルリ・カスパロフを破りました。しかしその後、単純に人間側が負け続けるということはなく、AIの助言に従いつつたまに人間が判断する、協働型のチェスプレイヤーチームが出てきて、2014年のフリースタイルバトル選手権でAIのみのチームより高い勝率をあげるといったことがあったようです。
デザイナーにも同じ現象が起きるかもしれません。一時的にはAIバンザイ!デザイナーいらないよ!なんてことになったとしても、後にはAIを活用した上手いデザイナーが現れるかもしれません。それが人間のクリエイティブの拡張になっていく。チェスの例を見ると、そういう未来もあるのかなと思います。
時が経てばデジタル・ネイティブならぬ、AI・ネイティブのデザイナーがでてくるでしょう。はるか過去のアーカイブも、いまこの瞬間の情報も、すべて集約して活用してデザインする世代が出てくると考えると、まさに恐るべき時代です。
ですが、AIが人間の知能の延長として自然になったとしても、情報を受け取り、行動にうつすのは人間という構図自体は変わりません。必ずどこかに人間がいる。このことを頭に入れておけば、数年後、僕はなんのデザインをしているのかわかりませんが、社会に価値あるものごとを提供していけるのではないかと思っています。
References
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by Monstarlab Design Journal
Monstarlab Design Journal 編集部です。 モンスターラボデザインチームのデザインナレッジとカルチャーを発信していきます。
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Overview
×- 社名
- 株式会社A.C.O.
- 設立
- 2000年12月
- 資本金
- 10,000,000円
- 代表者
- 代表取締役 長田 寛司
- 所在地
- 〒150-0012 東京都渋谷区広尾1-1-39恵比寿プライムスクエアタワー6F