- 2019.10.11
私がデザイナーをしていて難しいと思うのは、どれだけ考察を広げても広げても、最終成果物となるデザインはひとつにまとめなければならないところだ。
あらゆる仕事において、視野を広げたほうがいいということは言うまでもないし、主観だけではなく客観的に、ロジカルに考えなければ、いいものは作れない。だが、デザインを作るのは人間なので、どうしても主観に頼ってしまう部分が出てくる。特に私がやっているようなアートディレクションの仕事は、とても感覚的で、ロジカルに説明することが難しい。
そこで改めて、どうやって「見えるもの」の姿を決めているかを考えてみたときに、ひとつのデザインを作る過程で生まれるデザインは、ひとつではないことに気がついた。「見えないもの」が「見えるもの」になるその間に、「目には見えるけれど、お披露目しないもの」が必ずある。私の場合、それを増やすことに注力している。そのことも、デザイナーのしている見えない仕事の一部だと思っているので、今回はその話をしてみる。
何をしているかというと、ロゴや、Webサイトのファーストビューなどの、思いつく限りの方向性をどんどん作っていく。そのなかで、あれもいい、これもいいと、もはや一人ブレインストーミングの状態で数時間作業する。その間は否定することをやめて、とにかくスピーディにパターンを増やす。バージョン違いもとっておくし、「あとで突っ込まれそうだな〜」というアイデアの端くれも、自分ではコンセプトと合っていてなかなかいい、と思ったものは、まず一旦作ってみる。
どうせ、まだお披露目しない段階だから!という自己暗示をかければ、多少変わったことをしても許される。わざとバリエーションに振り幅を持たせるのは、さまざまなストーリーを作りやすいからだ。
そうしてチームのメンバーに見せてみると、やっぱりそうだよね、と自分でも思う意見の他に、自分の思い込みとは違った意見をもらえることが多い。自分では突っ込みが入りそうだと思っていたパターンが、思いの外うんうんと頷いて目を輝かせてもらえたり、あるいは複数のアプローチが可能性を秘めていれば、パターンを増やして提案する方向性が見えたり。逆に、自分ではこれはいい、と思っていたパターンがイマイチなことだってある。
つまり、「お披露目しないもの」によって、できる提案の内容も幅も、がらっと変わってくるのだ。この工程を踏んで選択肢を増やすことができれば、「今まで気づいていなかったけど○○のサービス(ブランド)ってこんな姿もあり得るよね」というような新しい視点が生まれ、クライアントが判断しやすくなったり、納得しやすくなったりする。
一見地味にも思える、選択肢の積み重ねが、今まで目に見えなかった新しい価値を創造することもできると思っている。これからもこの工程を大事にしながら、丁寧にデザインを作っていきたい。
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by Saki Iwata
武蔵野美術大学基礎デザイン学科卒業。制作会社にてランディングサイトやコーポレートサイトなどのデザインを経て現在に至る。デザイン担当。デザイン部所属。
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Overview
×- 社名
- 株式会社A.C.O.
- 設立
- 2000年12月
- 資本金
- 10,000,000円
- 代表者
- 代表取締役 長田 寛司
- 所在地
- 〒150-0012 東京都渋谷区広尾1-1-39恵比寿プライムスクエアタワー6F