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デザイナーが見えるもののためにしている、見えないこと

#5 ストーリーを読み解く

1 suki suki
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デザイナーが作るものは最終的なアウトプットが全てじゃない。クライアントの要望やプロジェクトの背景から、デザインの基礎になるストーリーを読み解くことも、デザイナーが行うべき大切な仕事だ。

クライアントから渡された情報を受け取って取捨選択し、優先順位をつけるだけではよいデザインは生み出せない。クライアントから渡されたバラバラの情報から意味を読み解き、付け加え、ユーザーに伝わりやすくするためのストーリーをデザイン制作段階から作り出すことが重要だ。

そのために、僕はこんなことを大切にしている。

一つは、ストーリーを再発見すること。

たとえばコーポレートサイトのリニューアル案件の場合、企業が持っている価値から1つのストーリーを見つけ出す。そのなかには、企業が抱えているビジョンやミッション、歴史や背景、文化などのさまざまな要素が織り交ざる。

今まで伝わっていなかった内容を再発見することで、ブランドをよりよく伝えるデザインは生まれる。

もう一つは、未来を見据えたストーリーを作り出すこと。

再発見ではなく、一から作り出すストーリーもある。新規サービスのように全く新しいものを作り出す場合、過去や現状によって語れることは少ない。ここで必要なのは、未来を起点とした話だ。

未来の話はプロダクトが向かうべき方向を示してくれると同時に、ブランドという見えないものの価値を身近に感じさせてくれる。

この場合のストーリーは、定量的な事実よりも作り手やプロジェクトのメンバーの持つ思いを中心にすることが多い。

そのほうが話が膨らみやすく、具体的な要素が集まってくるのも面白い。それはいずれブランドの中心となり、プロダクトが進むべき方向性にもなり得るため、とても大切な軸となっていく。

このようにストーリーには、いくつもの伝え方がある。そしてストーリーの重要性は昨今、より強くなっている。

多様化するデザイナーの職種の中に、コミュニケーションデザイナーというものがある。あまり一般的な定義ではないが、世界的に有名なドイツのデザイン会社Frogの求人ページにも記載されている言葉だ。Frogのコミュニケーションデザイナーの募集要項には、ストーリーテリングのできる人材と書かれていた。この記載を見て、ストーリーを作り出すことが重要なデザインワークの一つだと改めて確信することができた。

これからもアウトプットを作るために必要なストーリーを、探し、作ることを続けていきたい。そして、そのストーリーがユーザーに届く瞬間を作り出していきたい。

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by Takuya Kobayashi

法政大学キャリアデザイン学部国際社会学エスノグラフィー専攻。東京デザインプレックス研究所卒業。デザイン担当。デザイン部所属。

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