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Monstarlab図書室

これからのデザインの役割と「土壌づくり」とは。Z世代の新卒が、名著とインタビューを通じて考えてみた。

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こんにちは、2023年に新卒入社した白壁です。 この記事の前半では、原研哉さん著の「デザインのデザイン」という書籍を参考にして、デザインの流れとその役割について、Z世代の日本人という視点から語っていきたいと思います。 後半は、「クライアントの課題を見つけ出し、解決する「デザイン」とは?」をテーマに、モンスターラボのデザイナーのインタビュー記事をお届けします。

デザインの歴史とこれからの役割について

本書では、デザイン史の振り返りから始まります。

デザインの歴史は、産業革命に端を発した大量生産による、伝統的な産業の衰退に対するイギリスでの保護運動がデザインの発端とされます。その後、「キュビズム」や「ダダイズム」など、ヨーロッパ各地で過去の貴族的な造形や美術と決別する解体作業のような運動が起こりました。そして二十世紀後半には、大量生産・大量消費経済に突入し、資本主義の中にデザインも組み込まれ、アメリカとヨーロッパでそれぞれ発展していきました。現在、テクノロジーの発展と資本主義の広がりによって一層デザインは「資源化」し、「新奇性」を提供するものとしての性質をさらに強めることになりました。

この流れの中で、著者はこれからのデザインについて、「デザインとは多様な選択肢を、いずれにも偏るのではなく、本質を探りあてていくことである」と考察されています。また、その中で「新」と同様に「旧」も重要な要素になってくるであろうとも記されています。なぜなら、「旧」の中から未知なるものを発見すること、未知なるものとして再定義することは、「新」を創ることと同様に創造的であるからです。このテクノロジーが発展した時代においても、「新」を崇拝し、すがるのではなく、「旧」に並列する選択肢として受け入れることが必要ではないか、そしてデザインはその本質を整理して探りあてる感性であると考察されています。

そして、テクノロジーの発展により、これからのデザインの重要な役割となるのが「欲望のエデュケーション」であると著者は述べています。「欲望のエデュケーション」とは、市場の欲望の質、つまり「センスのよさ」を向上させることを意味します。テクノロジーの発展により、高コストの国でマーケティングとデザインを行い、低コストの国で生産を行う国際分業が進んでいます。その結果、「センスの良い」商品は「センスの悪い」商品に勝つという仮説が生まれました。例えば、日本のフィッシュ&チップスはイギリスのそれに勝てず、逆にイギリスの寿司は日本の寿司に勝てません。これはシェフに要因があるのではなく、求める客の多さや知見、歴史の有無に関係しています。これは、プロダクトの質が作成者の技術だけでなく、プロダクトを求めるニーズの高さや質によって決まることを示しています。

Z世代として考えたこと

本書を読んで私が危機感を抱いたのは、日本のデジタルサービスについてです。 2023年の日本銀行が発表した国際サービス収支のデータによると、約4兆7000億が「デジタル赤字」として計上されていました。これは現在インバウンドの需要が再度増大している旅行サービスの約2兆3000億の黒字の約2倍です。デジタルサービスによる赤字によって、サービス全体としては赤字になってしまいました。

原因は一つではないと思いますが、私はその一つにこの「欲望のエデュケーション不足」があると考えています。つまり、日本のユーザーはアプリに対するニーズへの要求レベルが低いのではないか、ということです。

Z世代として幼い頃からデジタルに触れてきた私としては、特にエデュケーションすべき項目の一つとして、「UI・UX」があるのではないかと思っています。個人的な考えですが、日本にはまだまだ使いやすいUI・UXのサービスは少ないと感じています。私は幼い頃からデジタルに触れてきたZ世代です。小学校から携帯を持ち、中学時代にはスマホがあり、海外のサービスにたくさん触れてきました。このような経緯を踏まえて、個人的な考えではありますが、日本のガラパゴス的特徴はそのうちなくなるのではないかと考えています。なぜなら小さい頃からインターネットがあり、海外のサービスに触れるのが当たり前で、抵抗がないからです。日本人夫婦から生まれても、育った場所がアメリカであれば英語を自然と話せるようになるのと同じことです。そのため、これから世代交代が進むに連れて日本ではますます海外からやってくる「センスのいい」サービスが普及していくでしょう。

そこで必要になるのが「欲望のエデュケーション」です。つまり、顧客に合わせるのではなく、顧客を育てるということです。企業や個人がどんなにいいUI・UXを実現できるスキルを保有していたとしても、それが求められなければお金に変えることはできません。そのため、提供側がサービスのレベルを向上させるのと同様かそれ以上に、「センスがいい」顧客を増やすこと、その一つとして「UI・UX」の重要性を訴えたいと思っています。

サービスにおける、「センスがいい」の絶対的な正解はないと思います。しかし、顧客自身がそのサービスについて理解し、考え、疑問を持つことが「センスがいい」サービスを作る土壌になるのではないでしょうか。なぜなら豊かな土壌からしか良い花は咲かないからです。

私はこのモンスターラボで、そうした土壌づくりにも関わってみたいと思っています。良い土壌、つまり将来的に「センスがいい」サービスを作るための「センスがいい」顧客を増やしたいのです。
幸いモンスターラボには著名なデザイナーをはじめとした優秀なデザイナーたちが揃っています。その綺麗な花を生かすも殺すも土次第なのです。だから私は良いサービスを作るため、ターゲットとなる顧客のマインドや思考を変える、そんな機会を作りたいです。

筆者が特に使いやすいと感じるUI(Airbnb)

インタビュー:クライアントの課題を見つけ出し、解決する「デザイン」とは?松原さんに聞く、UIデザインの役割と価値

前段でUI・UXの「欲望のエデュケーション」が必要、と述べましたが、具体的にUIデザインやマネタイズにはどのような考え方が必要なのでしょうか。今回は、モンスターラボでUIデザイナーとして活躍する松原さんにインタビューしました。

Guest

Daiki Matsubara

高校卒業後、電気電子工学科へ進学。3年次に、アプリ開発のインターンを経験。アプリ制作をゼロから学ぶ。卒業後、2017年にWeb系の事業会社へ就職。多くのサービスに携わるも「もっと幅広い業務に関わりたい」と転職を決意。2019年、モンスターラボに入社。デザインラインに所属し、さまざまな業界のプロジェクトにUIデザイナーとして携わる。

Q. 松原さんにとっての「デザイン」の定義について教えてください。

私にとっての「デザイン」とは、クライアントの課題を解決することです。 課題については様々ありますが、 クライアントの要望をそのままプロダクトにするのではなく、それが使われるかどうかも重要だと考えていて、ユーザーのニーズや感情にも配慮したデザインをすることが大切だと思います。その考え方は、就活のときにIT業界に興味を持ったときから持っていました。そこで、デザインが重要な役割を果たすと気づいたのです。 クライアントが気づいていない課題を見つけ出し、解決することが、私にとっての「デザイン」です。

Q. 理想的なUIデザインについて教えてください。 また、それを実現しているプロダクトやサービスはありますか?

「酔っ払いでも使える」UIが理想の一つだと思います。 つまり、誰でも、どんな状態でも使えるUIです。また、UIデザインには大きく、表層的なものと設計的なものの2つの側面があり、どちらも優れているUIが理想的だと思います。 表層的なものとは、スタイリングや世界観などの見た目の部分です。 設計的なものとは、画面構成など情報設計の部分です。 その点では、Appleが提供しているサービスは体験が設計されていて素晴らしいと思います。 例えば、iPhoneやiPadは、画面のサイズや向きに関係なく、操作性が高く、誰でも直感的に使えることが特徴です。 一方で、偶発性を誘発しているサービスもあります。例えばSpotifyはリコメンド機能にも優れていますが、「mix」や「今週のスポットライト」、ジャケットを前面に出したUIなど新しい楽曲の発見にも役立ちます。

Q. UIデザインは売上に直結しているのでしょうか? もし直結しているなら、どういった点にあると思いますか?

UIデザインが売上に直結することはあると思いますが、大きいインパクトはあまり無いと感じています。UIはユーザーにとって使いやすくあるべきですが、それだけではビジネスとして成り立たない場合もあるからです。そもそもビジネスモデルやユーザー体験の設計が不十分だと、優れたUIデザインでもユーザーに届かないか、使ってもらえない可能性があります。 そのため、UIはビジネスモデルに合わせたものであるべきです。 ビジネスモデルに応じて、UIの設計や機能も変わります。 例えば、広告収入を得るためには広告を表示するスペースやタイミングを考え、有料会員制を採用する場合には無料会員と有料会員の差別化や付加価値を考えたりもします。 また、UIの売上に与えられる影響の大きさは、ユーザーの体験や感想、承認者の視点、市場や文化の違いによっても変化してきます。例えば、ユニクロやZARAのようなファッションブランドのアプリを比較してみると、それぞれのUIには、情報や機能、スタイルやトレンドなどの違いがあります。 このようにマネタイズには様々な要因、原因があるので一概には言えないというのが正直なところです。

Q. UIデザインの重要性をクライアントに理解してもらうには、何を伝えたら良いと思いますか?

時代の流れと共にデザインの必要性が高まっているということをクライアントに理解してもらう必要があると思っています。昨今、デザインに理解のあるクライアントが増えてきていますが、一方でまだまだ見た目を作るだけと考えている方も多くいます。 サービス、プロダクトが溢れている今、何か作ればすぐに売れる時代は終わり、ターゲットを決めて体験を考えてモノづくりをしなければ売れない時代になってきています。 どんなユーザーにどのようなニーズがありどのようなコンテキストでサービスを使うのかを知り、体験を考えていくことが大切だと思っています。

サービスのユーザーの体験を担う一つの要素がUIデザインです。ユーザーが多く触れるインターフェースの向上は顧客体験の向上に繋がりますので、そのことをお伝えすることが多いです。 またUIデザインは一度作って終わりではなく、プロダクトのフェーズ、ユーザーのニーズに合わせて変え続けていくものということも伝えていくべきだと思っています。2018年に経済産業省・特許庁が「デザイン経営宣言」を発表したことで、「デザインを企業価値向上のための重要な経営資源として活用する経営」が注目を集めています。デザインという言葉もより身近になってきていると思います。

まとめ

今回は原研哉さん著の「デザインのデザイン」、モンスターラボの松原さんへのインタビューを通してデザインのこれまでとこれからについて、Z世代の視点も交えながら考察してみました。
モンスターラボにはデザインに関して熱い考えを持った方々が多く在籍しています。もし少しでもモンスターラボに興味をお持ちになったら下記の応募フォームから応募してみてくださいね。

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モンスターラボでは、これからも様々な記事をリリースしていきますので、機会があればぜひご覧になってみてください。 ここまで読んで頂きありがとうございました。またお会いしましょう。

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by Kazuki Shirakabe

コンサルタント。法政大学 経営学部 経営戦略学科卒業後、株式会社モンスターラボに新卒入社。在学中は、人材会社とIT会社にて営業のインターンシップを行う。写真にサイクリング、コーヒーが好き。

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