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Monstarlab図書室

UIデザイナーが「13歳からのアート思考」を読んでみて思ったこと

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こんにちは、デザイナーの手塚です。「13歳からのアート思考」という本を読みながら自分用にメモしていたものを元に記事を書きました。

なぜ取り上げたのか

去年受講していた講義の中で「アート思考」という言葉を知りました。その時はなんとなく、あとで調べる宿題としておいたのですが、同僚から「 『自分だけの答え』が見つかる 13歳からのアート思考」(末永 幸歩 著)という本をオススメされたので、読みながら考えた自分なりの考えをまとめました。

読んだ感想

「13歳からのアート思考」は、ビジネスに活かせるアート思考の本というより、アートの歴史や代表的な作品を題材に、その作品の何がすごいのか、当時どう革新的だったのか、というのを解説する本でした。アート作品の見方、読み方、歴史から、アートとはつまり何なのかを解説する一冊です。私は美大を卒業していますが、いままで有名な作品の何がすごいのか全然分かりませんでした。この本を読んで、あの作品がなぜ有名なのか、どこがすごかったのかがいまさらながら理解できた気がします。美大を卒業して20年くらい経ったいま、ようやく美術・アートの読み方、楽しみ方がわかったかな、と。

本を読みながらアート思考について考えたこと

アート思考とデザイン思考の違い

「13歳からのアート思考」の冒頭でアート思考についての説明がありました。「アート思考」とは「アート的なものの考え方」これを「アート思考」と呼んでいるそうです。

「『アーティストのように考える』とは、
①『自分だけのものの見方』で世界を見つめ、
②『自分なりの答え』を生み出し、
③それによって『新たな問い』を生み出す。」

「アート思考」とは、こうした思考プロセスであり、自分なりの視点で物事を捉え、自分なりの答えを提示し、世の中に問うことだと理解しました。
これはデザインと似ている気もしますが、明らかに違うものだと思います。母親や親戚と話すとデザインとアートをごっちゃにしていることがありますが、「デザインは問題解決で、アートは問題提起だ」と、ジョン・マエダが言っていました。
解決できることや課題化できることはデザインの分野で、問題はあるけど、答えが出せないことはアートの分野だと捉えています。
つまり、工業製品やアプリ、サービスのような答えの出せる課題にはデザイン思考。SDGsとか戦争問題、LGBTQ+のような答えの出せない問題にはアート思考がマッチすると考えます。
デザイン思考は客観的に、アート思考は主観的に考えるものだと理解しました。

スペキュラティブデザインとアート思考との違い

スペキュラティブデザインというものがあります。ロイヤル・カレッジ・オブ・アートのアンソニー・ダン教授が提唱した、問題解決ではなく「問題を提起するデザイン」というものです。随分前にスプツニ子!の作品で知りました。アート思考と似ていて、これまで違いがよく分からなかったのですが、アート思考はその考え方や手法自体を指していて、スペキュラティブデザインはより実装寄りな意味なのではないかと思っています。問題についてアート思考で捉えるのは同じですが、スペキュラティブデザインは問いを世に提示する手法の一つだと思います。商業ベースから離れ、人間の未来について思考するきっかけが設計されているものをスペキュラティブデザインと定義していると理解しています。

アート思考の必要性

①VUCA時代におけるアート思考の必要性

VUCAとはめまぐるしく変化して世の中の先が読めなくなってきている状況のことをいいます。COVID-19や震災、AIの急速な進化など、変化が早くて先が読めない世の中でアート思考のように主観で始まるデザインもあるのではないか、と本を読んでいて思いました。真のイノベーションは主観から始まる気がします。
なぜなら既存の価値観とは異なりユーザーに聞いても答えがわからないので、信念や思い込み、ひらめきのような仮説からスタートするのではないかと考えたからです。
ロベルト・ベルガンディが提唱する「意味のイノベーション」の「外からではなく自分自身から始める」「批判精神」といった考え方に通じるものがあると感じました。Googleに買収された、学習するサーモスタット「Google Nest」が生み出されたきっかけも、トニー・ファデルが自身の家のサーモスタットに対する不満や欲求から始まっています。サーモスタットのターゲットユーザーにインタビューをして分析した結果から生み出したわけではないのです。

②パーパス戦略におけるアート思考でのアプローチ

パーパスの戦略を考えるときもアート思考が有効だと思います。
企業の目的や意図であっても、やはり一人称でないと考えにくい気がします。
私たちは、何を信じるのか、どうしてそれをやるのか、というのは会社だけど個人的なことのような気がします。会社のことを法人と言ったりしますが、会社には人格を感じます。企業のパーパスを考えるときに、一人の人として考えるものなのかもしれません。

主観からはじまるデザインプロセス

これまでは「産業」と「資本」のためのデザインが求められてきていました。しかし、これからは「社会」のためのデザインが求められていると感じています。デザインは客観的であることが良しとされていますが、アート思考は主観が前提となっています。体験は基本的に一人称。二人称の体験というものは普通はありません。(あるとすれば幽体離脱でしょうか?)
産業としての製品やサービスが出尽くして、突出した特徴や価値が無くなり、全部同じようなサービスになってしまったとき、イノベーティブなプロダクトを生み出すために、一人称で物事を見ることが重要になってきているのかもしれないと感じました。

以上です。考えごとをそのまま書き出したようなとりとめのない記事ですが、ここまで読んでいただきありがとうございました。

References

  • 「自分だけの答え」が見つかる 13歳からのアート思考(末永 幸歩 著)

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by Takaaki Tezuka

多摩美術大学 情報デザイン学科卒業。デザイン制作会社のIT部門にてデザイナー/ディレクター、広告代理店のアートディレクター業務を経てモンスターラボ入社。ディレクターとして要件定義、アプリ設計を担当したのち、デザイナーとして活動中。

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