- 2015.10.15
「採用」や「教育」に関するホンネを、社長自ら語っていただきました。
Web制作会社のほとんどは、お客様からの発注=受託で成り立っているというもの。大企業とは違いクライアントと近い距離で仕事ができるため、相手の要望を深く理解できたり、成果物に対して喜びを分かち合えるなど数多くのメリットがある。しかしその一方で、常に発注があるわけでもなく、内容や金銭面でも厳しい状況を突きつけられることも……。
一見、華々しく映るWeb業界だけど、実は「ツラい!」ことが盛りだくさん。この対談企画ではA.C.O.編集部がホストとなり、自分の足で立っていながらも、その大変さを身にしみて理解する人々を招き入れ、酒を飲みながら受託会社の魅力と過酷さについて語り合う。
今回のゲストは、株式会社東京ピストル・草彅洋平さん、株式会社レターズ・野間寛貴さん、ワヴデザイン株式会社・松本龍彦さん。全3回に渡って、業務形態も世代も異なる3者が、経営者の立場からそのホンネを激白!!
——経営者が頭を抱える要素のひとつに「採用」があると思います。おそらく苦労されているであろう、採用に関する話をお聞きできればなと。
松本龍彦(以下・松本)-
採用に関してツラいと感じるのは、他の会社と人材の取り合いが起こるということ。うちに応募してきてくれたと思ったら、いつの間にか違う会社に入社していたりとか。と思ったら、何年かしてまた面接に来てくれて入社するパターンもあったりして様々な事が起こる。
草彅洋平(以下・草彅)-
人材の取り合いになるのは、主にどういう職種の人たちになるんですか?
松本-
デザイナーやエンジニアです。
野間寛貴(以下・野間)-
その辺りを改善するために、実際に手を打ったことって何かありますか?
松本-
以前までは採用サービスを利用していたんですが、それを一旦止めて自社発信の募集だけにしたんです。募集人数は減りましたが、その代わりマッチング精度が高くなりましたね。
——その中で、採用ポイントはどんな風に設定しているんでしょうか?
松本-
うちの業務だと、やはり「紙の仕事もWebの仕事も両方やりたい」という人たちがよく応募してきてくれますね。ここ最近3名が入社しましたが、まさにそういう意思を持った人たち。自社で募集したのですが、双方の意図が一致したともいえますよね。
草彅-
ワヴデザインさんくらいの規模ですと、応募者が会社のカラーや仕事内容を理解してくれているでしょうから話も早そう。
松本-
確かにマッチング精度は高いなと感じましたね。
物事を知らない人は、クリエイティブ業界では雇われない
——東京ピストルさんのように編集者をメインにしている会社は、どういう人が採用されるんですか?
草彅-
編集業に限らず、クリエイティブ全般の職種はいろいろなことを知っていないとダメだと思っていて。僕からあえて「もっと本を読もうよ」と煽るものでもないし、そもそも好きなものがあってそれを実際にやりたいとかまとめたいとか形にしたいという熱意があるはずなんです。なので、物事を知らない人に関しては、最初から雇わないです。
野間-
どうやって見極めるんですか?
草彅-
話したら分かりますね。
松本-
ちなみに今、エディターをやりたいという若い子たちはいるんですか?
草彅-
うちの会社に関しては、僕がいろいろと多方面に顔を出しているのと若い次世代のスター編集者しかいない状況なので勝手に人が集まってくるんですよ。決してそういう人材をコレクションしているわけじゃないんですが、面白い子が志願してくれます。何より編集会社で東京ピストルが一番面白いと思っているんですよ。というのも、紙媒体もWebメディアも飲食もやっている変な会社は他にはあまりないですから。だから仕事も多岐に渡ります。
松本-
デザイン会社が仕事のオファーを受ける場合は、当たり前ですがデザインに関することですからね。
草彅-
しかも、Web会社を立ち上げる時って、デザイナーやプログラマーは集めますが編集ってあまり重要視しないですよね?
松本-
それはありますね。
草彅-
今はコンテンツを作ることを求められることが多い。僕らはそれが出来るから、各企業からメディアやLINEの運用をお願いされることが増えているんです。
小・中規模の受託会社は、中途採用を求めている!?
——なるほど……。「採用」のツラい話を聞いたところで、その次に待っているのは「社員教育」だと思うんですが、その辺りはどうですか?
松本-
ちなみに今後、野間さんの会社は人を増やしていくんですか? ある程度まで増えると、クオリティコントロールが難しくなると思うんですが。
野間-
まさにそういう問題があるので、今後は増やさないつもりです。例えば、東京ピストルさんのようにスターが集まってくる会社もありますが、僕らは組織の図式がピラミッド型に近いので、基本的には新卒採用だけに絞っているんです。
草彅-
新卒採用だと、社員教育のコストが掛かりますよね?
野間-
そうなんですけど、中途採用が苦手なんですよね。
松本-
それは、すでに別会社のカラーがついている人も多いから?
野間-
そうですね。以前在籍していた社風を背負ってくる人もいますよね。例えば、9時きっかりに出社して19時まで働いたらすぐ帰る。その代わりに、時間内でハイパフォーマンスを発揮する人がいるとします。そういう人たちはもちろん優秀ではあるんですが、やっぱりチームとして機能してほしい。なので、技術だけじゃなくレターズらしさも教えられるように新卒に注力しているんです。
松本-
野間さん自身は、プロジェクトによって作業することもあるんですか?
野間-
基本的にはディレクションだけです。でも、僕も他のメンバーも新入社員に対してちゃんと教えたいという気持ちはありますね。
草彅-
一方で、離職率も下げなきゃいけないですよね。入社して4年くらいで辞めちゃう人が多いでしょ?
松本-
4年でも長い方ですからね。
野間-
年齢が上がっていくので、給料も上げていかなきゃならないですよね。
草彅-
そうですよね。やっぱり教育コストを考えたら新卒は大変なので、うちも中途ばっかりになっちゃいます。
松本-
インターンも新卒採用もひと通りやってみましたが、その目的というのが既存メンバーに対する刺激や緊張感だったりするんですよね。新しい人が入ることで、メンバーそれぞれが人に教えるということを憶えますから。それは会社によってスタイルが違うんですけど。
採用も大変だけど、教育するのはもっとツラい
草彅-
僕らは基本的に紙メディアをやっているので、社員が書いた文章そのもの見て指導することが多い。例えば、ナタリーを運営している株式会社ナターシャの唐木元さんは別格だけど、Webメディアに関しては文章での指導がほとんど無いんです。だから、クオリティも上がっていかない。Webメディア中心で働いている若い子たちは、何年か経ったらに困るだろうなと思いますよ。料理人のように、目で見て覚えるだけでない、しっかりとした教育はやっぱり必要というか。
松本-
Webメディアに携わっている人で、エディターとかライターという自覚が薄い人も多いのかもしれないですね。
草彅-
だから、企画でも記事でもパクっちゃうんですよ。
——仕事を教えることって、一人でも相当大変ですよね。
松本-
出来ることなら、全員まとめて教えたい。でも、せっかく教えたのに辞めたいと言われたら、それはそれで悲しいというか。
野間-
そうですよね。とはいえ、僕としてはいずれは独立してもらいたいんですよ。さっきも話ましたが、やっぱり会社以外の場所でヒーローになってもらいたいですから。レターズでの経験を経て、その後に他の世界も知った時に「やっぱりレターズは居心地が良かった」と思ってくれたら良いと思っていますね。。
Vol.3へ続く。
Guest
-
Tokyo Pistol Co., Ltd. / Yohei Kusanagi
株式会社東京ピストル 草彅 洋平
株式会社東京ピストル代表取締役、編集者 兼 AD。1976年、東京都生まれ。あらゆるネタに対応、きわめて高い打率で人の会話に出塁することからついたあだ名は「トークのイチロー」。2006年にクリエイティブカンパニー、株式会社東京ピストルを設立。ブランディングからプロモーション、プロデュース、広告から紙、ウェブ媒体の制作まで幅広い仕事を手がけている。 -
Letters, Inc. / Hiroki Noma
株式会社レターズ 野間 寛貴
2011年に利倉健太、大工原実里とWEBデザイン会社レターズを設立。同社代表。 twitter:@hirokinoma / @Letters_Inc -
Wab Design INC. / Tatsuhiko Matsumoto
ワヴデザイン株式会社 松本 龍彦
Wab Design INC./ワヴデザイン株式会社は、プロモーション・ブランディングを中心に、ウェブ、アプリ、プリンティング、ムービーの制作を手掛けるデザインスタジオです。様々なプロジェクトを立ち上げ、新たな価値観の創造に挑戦しています。主な仕事に1LDK、CA4LA、shu uemura、渋谷VISIONなど。アジア太平洋広告祭、ニューヨークフェスティバル、釜山広告祭、コードアワード、広告電通賞グランプリなど受賞。最近、3つ目の事務所を借りました。事務所はすべて代々木公園近く。 -
SUU BAR
(店舗提供)
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by Monstarlab Design Journal
Monstarlab Design Journal 編集部です。 モンスターラボデザインチームのデザインナレッジとカルチャーを発信していきます。
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Overview
×- 社名
- 株式会社A.C.O.
- 設立
- 2000年12月
- 資本金
- 10,000,000円
- 代表者
- 代表取締役 長田 寛司
- 所在地
- 〒150-0012 東京都渋谷区広尾1-1-39恵比寿プライムスクエアタワー6F