- 2016.09.29
一見、華々しく映るWeb業界だけど、実は「ツラい!」ことが盛りだくさん。この対談企画ではA.C.O.Journal編集部がホストとなり、自分の足で立っていながらも、その大変さを身にしみて理解する人々を招き入れ、酒を飲みながらその魅力と過酷さについて語り合う。
今回のゲストは、BITAデジマラボ編集長の株式会社ビットエー・飯野希さん、ジモコロ編集長の株式会社バーグハンバーグバーグ・徳谷柿次郎さん、DiFaパブリッシャーの株式会社スパイスボックス・水谷博明さんの3人。編集長という立場ならではのツラさが語られた前編につづき、後編ではメディアならではの苦労から、PV/UUといったリアルな数字の話まで..。その苦労を語り尽くす。
ネタ切れ、スケジュール、クオリティ…運用の苦労
ー メディアを日々運用しているなかでのツラさはありますか?
飯野希(以下・飯野) 記事にならなくて苦労することはありますね。インターンの子も記事を書いてくれるんですが、書いた後でもボツにすることもあったり。
水谷博明(以下・水谷) できた後にですか?
飯野 そうなんです。書いたはいいものの、記事として終わりがみえないものが多くて…。特に最先端の技術を追っていると、構成の段階では面白いけれど、実は中身があんまりなかったり、そこまで情報開示してなかったりというのもあって。
徳谷柿次郎(以下・柿次郎) あー、難しいですね。
飯野 最近だと、依頼を受けて取材に行ってみたら表に出せる情報があまりにも少なくて、その場で断ったこともありました。取材や記事のために色々やってくれた人がいるので、心は傷みますけどね。でもここで出してもメディアのためにならない!と思って…。
柿次郎 その判断は、編集長としては心強いですね。僕はライターさんとのネタ出しで苦労することはありますね。そもそも、「ローカル」を題材にしていると既存情報に頼りがちになってしまうというか。行かないと分からないことがあまりにも多い。そんな中でライターさんとのネタ出しで、ジモコロらしさにハマるかハマらないかの葛藤があって。ハマらないからといって、断りすぎるとネタ切れになりかねないですし。
水谷 ネタ切れはツラいですよね。
柿次郎 ネタ切れしないために、僕は運用面で意識しているのが2軸で記事を作ることです。例えば月に10本つくる必要がある場合、10本分は運営スケジュールの範囲で制作。それとは別に、もう2、3本スケジュールから外した軸で記事を作るんです。その2、3本はじっくり作る利点もある。余力があれば、誰かが締め切りを過ぎても「あるから大丈夫だよ」って強く言えるのが結構大事だなと。この考え方はコルクの佐渡島さんに教えてもらいました。
水谷 なるほどー。
柿次郎 あとは、あまり期待しないこと。スケジュール通りにあがってこなかったらムカつくこともあるじゃないですか(笑)。でも余力をちゃんと作っておけば別にいいかなって思えますよね。
地方取材の準備がツラい!そして体力…
柿次郎 僕、今回どうしても言いたかったのが、地方取材の準備の大変さ。宿、新幹線、飛行機の予約と工程組みに結構時間取られるんですよ。
僕はほんと声を大にして言いたい。好きだからやってるけど、地方取材の準備はツラい!
飯野 面倒くさいですよね。
柿次郎 本当に大変です。経費も無尽蔵に使えるわけないので、出来るだけ抑えるために、予約サイトを見比べて、安いところを探すとか。運転も撮影も全部やることがあります。一人何役なんだろう…って(笑)。例えば1週間で長野→東京→福島→東京→沖縄みたいなスケジュール。移動方法とか宿の質もちゃんと考えないと、疲れ方もかなり変わるんです。
早朝から一日中取材で走り回って、奥深い世界の情報をパンクするぐらい頭に詰め込む。ようやく落ち着いたタイミングで夜は地元の人たちと宴会をしたりとか。気がつけば深夜1時〜2時。翌日は朝7時に起きてまた次の取材へ…みたいなことも珍しくありません。どうしても、泥臭いやり方になりますね(笑)。
飯野 死んじゃいますね、それ…。
柿次郎 できるだけ体力を残すために、スケジュールに温泉を無理やり組み込んだり色々頑張ってます。
飯野 全然違うところで闘ってるわけですね。
柿次郎 宿も初日はゲストハウスでもいいけど、2日目はホテルにするとか。最初はライターと2人部屋だったんですけど、ヨッピーさんやカメントツくんとか、面白いものをつくれる人って…なぜか大体いびきかくんですよ。めちゃめちゃ偏見ですけど(笑)。一方、僕は神経質なスヤスヤボーイ。隣でガーガーといびきをかかれると眠りが浅くなって、翌日ツラいです。だから1人部屋の割合を増やしてます。
飯野 結構、検討項目がわけわからない。
柿次郎 とにかく地方取材は、体力が求められる。地方取材に行くと通常業務ができないので、3日間出張行ったら3日分のツケが回ってきて、それが土日に回って土日が潰れるのもツラい…。
飯野 あるある。
PVは悪者か!? PVクソ論勃発
ー PVやUUのような数字がメディアでは注目を浴びますが、皆さんは数字をどう考えていらっしゃいますか?
水谷 PVは重要な指標の一つであることに間違いはないのですが、相対的に見るとクソだと思っています。
柿次郎 PVが?
水谷 PVが。
柿次郎 なるほどなぁ。PVって結構ずるい稼ぎ方する人が多いですよね。
水谷 多いですね。
柿次郎 僕、個人的にはPV自体は悪いやつじゃないと思ってるんですよ。ちゃんとやればちゃんと出る良いやつ。でもずるい稼ぎ方をして、PVを悪く使う人がいるから、PVが悪者になってしまう。ページ分割したり、続きを読むって入れたり、いくらでも表面上で稼ぐことはできるんですよ。でもそれをやると、PVが悪い子になる。
飯野 あーそれは確かに。
水谷 そうなんですよね。広告代理事業で、自社外も含めさまざま々なメディア提案もやらせていただいていて思うのは、多くのクライアントが見てるのは(悪い子もいい子ごちゃ混ぜにしてしまっているPV)なんですよね…。
飯野 PVしかないんですよ。UUも見てないし、世の中的に見てるのはほぼPV。
水谷 だからPVをあげるために様々な手を打つ。トライ&エラーを繰り返す。そのうちPVをあげることがゴールになってしまい、本来設定していたゴールから離れてしまう危険性もある。そこはツラいところですよね。
柿次郎 難しい。上げないといけないのは間違いないんですけどね…。
水谷 ですね。ある程度の数字がないと評価されないのも事実ですからね。なかなか。
柿次郎 ライターを提案する時にも数字って結構揉めるんですよね。このライター使いたいっていう時に「フォロワー何人なんですか」「1000何人です」「少ないですね」「お前は何様だ!」みたいな。育てようと思って提案してるのに、フォロワーいないからだめって論外だと思いますね。
飯野 フォロワー数もそうですよね。数字を気にするのって、結局広告でのマネタイズを考えてるからだと思うんですよ。そうじゃないマネタイズを考えれば、PV、UUなんて指標気にせずにいけるはずです。
柿次郎 数字問題、ツラいねぇ。
オウンドメディアの未来はどこにある?
ー オウンドメディアに携わる人として、皆さん将来はどう考えていらっしゃいますか?
飯野 僕自身はずっとメディアをやるとは思ってないです。編集長というのもポッといただいた肩書きなので、このメディアをどう使っていくかって視点でモノゴトを考えています。例えばメディア単独で1億円売り上げられるって日本でも数社しかないんですよね。でも、メディアをきっかけに開発事業やプロデュースなどをに繋げられれば、それぐらいの売上って一発で入ってきます。会社としても、きっかけづくりのためにオウンドメディアを作っているので、極端な話、他の方法があれば5年後このメディアはなくても全然いいとは思っています。
水谷 僕は「デジタル×ファッション」がクロスすることで生まれる”新しいスタイル”を多くの人に届けて、選択肢を広げていきたいです。ただ、日本は知識も市場も環境もアイテムも海外に比べて少ないです。なので、まず最初に啓蒙活動が必要だと思いDiFaというメディアをスタートしました。次のフェーズはメディアをハブにしながら、アイテム開発、イベント運営、ストア出店など、体験・体感できるモノや場所をつくりたいです。もちろんビジネス的にマネタイズは重要なので、きちんと基盤を整えたうえですけどね(笑)
柿次郎 僕はみなさんとは真逆で。ジモコロは、より新しいものがより速い速度で増えていくなかで、真逆に進みたいと思っているんです。何十年、何百年前の話をコンテンツにするのは、他でやる人があまりいないんじゃないかな、と思っていて。その役割を担いたいですね。
飯野 テレビ番組みたいなんですよね。
柿次郎 大阪のテレビ文化で育ったのか「探偵ナイトスクープ」のような、長寿番組で愛され続ける価値に興味がありますね。同じようなことをウェブメディアでもできるんじゃないかなと思っているんです。なのでジモコロは10年続けないと意味がないと思ってるんですよ。例えば、長野に御柱祭っていう7年に1度開催する奇祭があります。それを事後に記事化しても、参考になるのは7年後じゃないですか(笑)。これは極端な例ですけど、ローカルの歴史や文化はインターネット上に情報が少ないからこそ、長く続けて資料的な価値を見出す意味はあるんじゃないかなと思っています。
Guest
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EnglishName
Nozonu Iino
新卒でキヤノン株式会社に入社。ユーザビリティエンジニアとしてハードウェア内のコンテンツ企画設計・導線設計を担当する。2016年に株式会社ビットエーに入社し、「発想と実装の間をつなぐWebメディア」をコンセプトとするBITAデジマラボの編集長に就任。一方でデータサイエンティストとしても活動。
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EnglishName
Hiroaki Mizutani
「デジタル×ファッション」に特化したWebメディア DiFa の発行人・責任者。株式会社スパイスボックスで様々な企業のコミュニケーションプランニング&クリエイティブディレクションを担当し、DiFaを立上げ。ソーシャル運用、イベント企画、サイト制作、オウンドメディア戦略、撮影、プロジェクトマネジメントなど、何でもやっています。
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Kakijiro Tokutani
徳谷 柿次郎
1982年生まれ。大阪府出身。株式会社バーグハンバーグバーグ メディア事業部長。ライター編集者→WEBディレクターという謎のクッションを経て、現在は「どこでも地元メディア ジモコロ」の編集長として全国47都道府県を飛び回っている。趣味は「日本語ラップ」「コーヒー」「民俗学」など。
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Overview
×- 社名
- 株式会社A.C.O.
- 設立
- 2000年12月
- 資本金
- 10,000,000円
- 代表者
- 代表取締役 長田 寛司
- 所在地
- 〒150-0012 東京都渋谷区広尾1-1-39恵比寿プライムスクエアタワー6F